藤井フミヤ「村上春樹さんの奥行きのある描写や昭和を感じさせる松本清張の本。あの世界観がたまらなく好きです」

あの人と本の話 and more

更新日:2013/12/19

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、7月11日にアルバム『Life is Beautiful』をリリースする藤井フミヤさん。こだわりなく小説を読むというフミヤさんにとって読書の醍醐味は、「空気感が感じること」だという。

「小説は海外作品よりも、
日本人作家のものを読むことが多いです。
やっぱり海外の習慣や宗教観って
日本人の僕らには分からないところがあって。
例えば逆に海外の方が、
“障子の穴からそっと寝入る母を見た…”
なんていう文章を読んでも、
きっと深いところまで伝わらないと思うんですよ。
それと同じですね」

ただ、一方で翻訳家が好きで買う海外小説もあるという。
その一人が村上春樹

advertisement

「村上さんの翻訳は、
たんたんとした文章の中にも、
奥行きや細かな描写があって。
すごく惹きこまれる。
あの空気感がすごく好きなんです」

また、ほかにも昔からよく読む日本人作家を挙げてもらったところ、松本清張の名も。

「昭和にどっぷり浸かれる、
あの感覚がたまらないんですよね。
描かれている時代のせいもあるかもしれませんが、
黒電話がすごく似合う感じがするでしょ(笑)。
でも、これはよく言われていることですけど、
松本清張さんが書かれたミステリーって、
きっと今みたいにパソコンとケータイがあったら、
翌日には簡単に犯人が
逮捕されてしまいそうなんですよね。
そういう意味では、
黒電話が出てきそうというイメージは、
松本作品には不可欠な要素なのかなって思います。
あとは、ちょっとしたエロチシズムがあるのも好き(笑)。
肌を出さない昭和の女性ならでの魅力も絶対にあって。
う〜ん、やっぱりいいですよね、あの世界観」

(取材・文=倉田モトキ 写真=山口宏之)
 

藤井フミヤ

ふじい・ふみや●1962年、福岡県出身。83年に「チェッカーズ」としてデビュー。解散後にソロ名義で発表したシングル『TRUE LOVE』は240万枚を超える大ヒットに。以降、ソロアーティストとして活躍している。今年9月から全国ツアーも開催。
ヘアメイク:阿部孝介(traffic) スタイリスト:馬場圭介 衣装協力/ジャケット3万4650円、シャツ1万4175円、パンツ2万0790円(いずれもACTS/ACTS ☎03-5457-5066)、ネクタイ1万5750円(Fumagalli/International Gallery BEAMS ☎03-3470-3948)

 

紙『乾隆帝の幻玉』

劉一達/著 多田麻美/訳 中央公論新社 3360円

骨董を又売りする玉器商の宗が、清国の皇帝・乾隆帝が所持していた幻の名器を手に入れたところから物語は始まる。骨董仲買人の金や、玉磨きに関しては随一の腕を誇る杜など、幻玉に魅了された男たちのかけひきがスピーディに展開されていく。知られざる北京の文化や当時の暮らしぶりを記した細かな描写にも注目。

※藤井フミヤさんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ8月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

『Life is Beautiful』

SMAR 通常盤3059円、期間生産限定盤3300円、初回生産限定盤3950円
●50歳のバースデーにリリースされるメモリアルなアルバム。人生の節目を迎え、「半生を見つめなおした」という藤井フミヤの想いが、そのまま楽曲に反映されている。全13曲中6曲を自身が作曲するなど、メロディメーカーとしての才能をあらためて感じられる一枚。初回生産限定盤には約40ページにもおよぶこだわりのブックレットも同封。