年末の大掃除で自宅の防災を見直そう! 少しの工夫で地震に備える片付けテクニック

暮らし

公開日:2020/12/26

 地震が起こったとき、家族の命を守るために自宅の備えは必須。国際災害レスキューナース・辻直美さんによると、自宅の防災のポイントは「片付け」にあるそう。防災グッズにお金をかけなくても、ちょっとしたコツを押さえて片付けるだけで被害を抑えられるといいます。年末の大掃除と一緒に、自宅の防災を見直してみませんか?

「まずお見せしたい写真があります。これは震度6を記録した2018年大阪府北部地震で被災した直後のキッチンです」

防災

防災

「写真上が我が家、下がお隣の家。同じ間取りなのに、対策あり、なしでこんなにも変わります。地震で室内に物が落下・散乱すると怪我や命に関わる危険が高まります。運よく命が助かってもまた住めるようになるまでに時間がかかり、長い避難所生活を余儀なくされる場合も。まずは部屋を片付けて、物の定位置・定量を決め、必要以上に持たない暮らしを目指すことが大切。キッチンや玄関、趣味の部屋など、場所別に具体例をご紹介します」

キッチン防災のコツは「引き出しの中で物を泳がせない」

「安売りで買い込みがちな食材も、必要以上に増やさないようにしましょう」
※ローリングストックは別。ローリングストックについてはこちらの記事を参照。

advertisement

「たとえば、私は調味料は買ってきたパッケージのままでは保管していません。お揃いの容器に詰め替えて、隙間ができないように引き出しに並べて入れています。理由は2つあって、1つ目は引き出しの飛び出しを防ぐためです。パッケージのまま保管しようとすると、それぞれのパッケージの大きさが違うために引き出しに無駄な空間ができます。地震が起こったときに中で物がガタガタと動いてしまうのです。その拍子に引き出しが飛び出て中身が散乱する原因になります。同じ大きさの容器に入れて、隙間を作らないようにします。

 2つ目の理由は、本当に必要な量を把握し、管理しやすくするためです。なるべく物を増やさないといっても、必要なときに足りない事態は避けたいですよね。『瓶の中身が3分の1になったら買い足す』とルールを決めれば、管理も簡単。透明な容器であれば残量が一目瞭然なので、家族が気づいて買ってきてくれるなどのうれしいメリットも!

 また、キッチンは食器に包丁、フライパンや鍋など落下してきたら凶器になるものが多い場所です。必ず棚板には100円均一で購入した滑り止めシートを敷いて、その上に物を置くようにしています」

玄関には1足だけを置いて逃げ道を確保

「我が家では玄関のたたきに置く靴は1人1足だけ。それ以外は何も置かないと決めています。たたきに靴を置きっぱなしにしていると、地震が起きたときに避難の邪魔になります。また『どれを履いて逃げるか』と考えてしまって逃げ遅れる可能性があるからです。他の靴はすべて同じ大きさのシューズケースにしまい、滑り止めシートを敷いた靴箱に収納します。ここでも隙間を作らず、棚の中で靴を泳がせないようにするのがコツ。棚から靴が飛び出してくることを防ぎます。引き戸タイプの棚なら、取っ手にS字フックをひっかけておくと扉が開きにくくなりますよ。靴ベラや傘も凶器になるので、必ず棚にしまいましょう。『手持ちの靴は靴箱に入るだけ』と決め、1足買ったら1足捨てるようにするのも物を増やさないポイント」

防災
S字フックがストッパー代わりに。

趣味のコレクションやグッズはどうする?

「なるべく物を増やさないといっても、趣味のものはなかなか減らせませんよね。私も本が大好きで1000冊ほど持っています。その代わり、対策はしっかりと。まず、本棚は壁から3cm離す。下に耐震板をかますと壁にもたれかかります。棚が天井よりも低いので、棚の上に段ボールの箱を隙間なく並べています。格子状の仕切りを入れて物を詰めている箱と、天井と本棚を固定する地震用の突っ張り棒が入っている箱を組み合わせて設置。耐震用グッズは2つ以上を合わせて使うのがポイントです。棚板には滑り止めシートを敷いて、本をきっちり詰めて入れています」

防災
箱が空だとつぶれてしまうので、中に物や突っ張り棒を入れています。物を入れる場合は万が一落ちてきても危なくないものを。

「できる限りの対策は施しますが、それでも地震が起きたときに本棚のある部屋にいるのは危険。たくさん物を置くのは趣味の部屋だけにして、地震が起きたらすぐに別の部屋に避難するように心がけるなど、家の中で最も危険な場所、最も安全な場所を把握し、行動できるようにしておくことも大切です」

家族にも片付けに協力してもらうには?

「家族の安全を守るために、子どものぬいぐるみ、夫のフィギュアなど、家族の持ち物を減らしてもらう協力も必要です。とはいえ、一人ひとりが持つ物への思い入れやこだわりはさまざま。私も、趣味でコレクションが増えることがありますが、収納をしています。家族のものを収納する際のポイントですが、まずは話を聞いた上で「残すものを自分で選ぶ」過程を大切にするのがおすすめです。

 子どものおもちゃが増えてきたら、それをすべてテーブルの上に出し、「飾っておきたいものはどれ? スタメンはどの子?」と話を聞きながら、子どもが自ら選んだものだけを部屋に残し、「控えの子は箱の中に入れておこうか?」と提案しましょう。お母さんに言われたから、妻がうるさいからではなく、「自分で選び、自分で決めた」という経験が防災意識を育むきっかけになると考えています」

取材・文=箕浦 梢 写真提供=『レスキューナースが教える プチプラ防災』(辻直美/扶桑社)