支えてくれる人に、届けたい。自信作の1stアルバムを語る――中島由貴『Chapter Ⅰ』インタビュー(後編)

アニメ

公開日:2020/12/23

中島由貴

『アイドルマスター シンデレラガールズ』『BanG Dream!』などで活躍中の声優・中島由貴が、自身名義の音楽活動をスタートする。12月23日リリースの1stアルバムのタイトルは、『Chapter Ⅰ』。おそらく彼女を知る人がイメージする通り、爽やかさを基調とする多彩な楽曲が詰まった、楽しくて聴き応えのある1枚だ。ひとりの表現者として大きな一歩を記した中島由貴へのインタビューを、2日連続でお届けしたい。後編は、アルバムの中でも特に象徴的と思われる楽曲をピックアップし。待っていてくれる人のために――本人も自信作だという『Chapter Ⅰ』の制作を振り返ってもらった。

何かをするときに、やっぱりファンの方を一番に考えている

――『Chapter Ⅰ』の12曲をひと通り聴かせてもらったんですけど、アルバムを聴き終えたときに残った感情を一言で表すなら、「楽しかったな」だったんですけども。

中島:よかったです、嬉しいです。歌詞の中で葛藤が描かれている楽曲も、少し楽しく聞こえるって言っていただいたりします。個人的に、レコーディングとかで壁にぶつかったりすると、はじめは「コノヤロー! 見返してやる!」みたいな気持ちになるんですけど――(笑)。

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――(笑)コノヤロー! ってなる瞬間?

中島:あるんです(笑)。自分に腹が立つというか。でも、そういうとき、だんだんそれが楽しくなってくるんです。少しずつ成長していく、一歩一歩前に進んでいる感じが楽しいって思えるタイプなのかなって思います。落ち込んだりしても、すぐに気持ちが戻ってくるので、そういう部分がアルバムの曲に乗っているのかなって感じたりしますね。

――中島さんは歌を歌うことが好きだし、ステージに立って何かを見てもらうことも好きな人なんだな、ということがここまでの話で伝わってくるんですけど、今はそれが自由にできる状況ではなかったりするじゃないですか。それについては、どう感じてますか。

中島:もどかしいです。自分にとっては、忙しかった時期もあったので、休暇にもしつつ、自分がやりたいことをこの期間にやろうって思ってました。でもやっぱり、もどかしい気持ちは強かったですね。みんなとすごく離れてしまったように感じて、寂しかったですね。ちょっと期間が空くと、その間にファンの皆さんがどこかに行っちゃうんじゃないか、みたいな心配もありました。

――ライブでのコミュニケーションが大事なものである、ということに改めて気づいた、と。

中島:確かにそうですね。何かをするときに、やっぱりファンの方を一番に考えているので、自粛期間に入って、直接お話をしたりする機会が減ってしまったことで、みんなに寂しい思いさせてるなって思いつつ、自分も寂しいんだなって気づきました。

――ファンの皆さんの言葉や存在から、何を受け取っていますか。

中島:やっぱり、元気はもらえています。皆さんから直接いただく声や言葉、お手紙もそうですけど、自分にとっては心が許せるというか、近い存在に感じられていました。人見知りがちょっとなくなって、自分もリラックスして話せたりするので、ファンの皆さんとはすごくいい関係だと思っています。元気をもらえるし、モチベーションも上がるので、自分の中では大切にしていきたい存在です。

――『Chapter Ⅰ』の中で、特に印象的だった曲がふたつあります。ひとつ目は、“Happy Signal”。歌詞にある《君がいるだけで世界がきらめき出して》《君が一緒ならいつでも笑っていられて》あたりを聴いていて、とても実感がこもった歌になっているな、と思いました。いろいろな活動で、ステージと客席でコミュニケーションをしてきた経験を踏まえて。ストレートにリスナーをイメージして歌った曲なんじゃないかな、と。

中島:もう、おっしゃるとおりです。わたしの中でもファンの皆さんへ、という気持ちが強かったです。この楽曲に出てくる女の子はアイドルだなってイメージをして、ステージに立っている女の子がみんなに向けて歌う、一緒に頑張っていこうねっていうメッセージを届ける曲だな、と思って歌いました。キャラクターを通して歌うことが、今までの慣れている部分でもあったので、そういうイメージを立てたほうがやりやすいのかもしれないなって思いつつ、挑戦した楽曲です。

――自分100パーセントで出すよりも、物語の主人公を演じるような感じにしてみた、ということですか。

中島:そうですね。もちろん、自分のアルバムだから全部が自分の曲ではあるんですけど、「自分にはここの部分が足りないな」って思ったときは、物語の主人公のイメージを借りる、みたいな感じです。

――そのアプローチって、なにげに圧倒的に正しいような気がしますね。

中島:えっ、ほんとですか。

――だって、声優さんの音楽を聴くときって、聴き手のモチベーションはまず「〇〇役で知ってる」ことじゃないですか。もちろん、本人100パーセントが出てきて嬉しく感じる人もいるのかもしれないけど、その人が構築してきた何かが一緒になってると、より面白い表現になるわけで。本人100でもないし、キャラクター100でもない。どちらも入っている。

中島:はい。もちろん、自分100だと不安な部分もあって借りている感じもあります。

―― “Happy Signal”は、中島さんが自分自身を重ねた部分で言うと、これから始まる音楽活動の未来をとても楽しみにしている気持ちがだいぶ乗せられたんじゃないですか。

中島:そうですね。アルバムの1曲目でもあるし、皆さんが中島由貴にイメージされているものにも近いと思いますし、自分からファンの皆さんへの思いも乗せられるし、そういう意味では入りやすかったです。

中島由貴

自信がありますし、いろんな方に手に取ってもらいたい作品

――もう1曲は、“Chapter I”です。シンプルに、《主人公は私》というフレーズが印象的でした。

中島:“Chapter I”に関しては、ほぼほぼ自分です。「わたしもそういう気持ちで~す!」という感じで歌わせていただきました。「次のステージ、行きますよ!」っていう。自分も、そういう存在であり続けたい気持ちがあるので――この楽曲は、あまり借りてないです(笑)。

――本心から「主人公は私」と表明してるわけですね。

中島:はい! 主人公は私です(笑)。中島由貴名義なので、「言っとかないと!」って思いました。この楽曲にはMVもあるんですけど、ほんとに素の自分でやらせてもらったので、すごく楽しかったし、MVを観ていただければわたしのことがわかってもらえるんじゃないかな、と思います。

――和歌山の魅力全開の映像でしたね(笑)。

中島:そうです(笑)。まず自分の出身地が和歌山県で、その場所で撮っているし、上京をする前の最後の和歌山の旅、みたいなイメージです。表情も作っていなくて、ほんとに自然体なものばかりになっています。素だし、少年っぽさもありつつ、踊ってるシーンは、爽やか(笑)。

――ここで自他共に認める爽やかさが出ている、と(笑)。

中島:はい、爽やかさが出ているんじゃないでしょうか(笑)。“Chapter I”はアルバムのタイトルでもあるし、わたしのアーティストの活動が今から始まりますよっていう意味も込められているので、「頑張らなきゃ」って改めて決心ができた曲ですね。

――今後音楽活動を続けていく中で、スタートした時期を振り返ったときに、原点として残っていく曲になるんじゃないですか。

中島:そうですね。「さあ、やっていくぞ」という気持ちと、ファンの皆さんも歌って踊る姿が好きだって言ってくださったりもするので、それにも応えつつ。ソロ活動は、自分が以前から考えていた「自由に表現することってどういうことなのか」「どういうパフォーマンスが自分に合っているのか」を見つけられる場だなって感じているので、いろんなアイディアをいただきながらやっていきたいなって思います。

――アルバム全体としては、中島さんにとってどんな1枚になったと感じていますか。

中島:自分にとっては挑戦の楽曲もあるし、今まで歌ってきたような楽曲もありますけど、いろんなわたしが見られるアルバムになったなあって感じています。1枚目にふさわしい、楽曲たちもすごくキラキラしているし、撮影もすごく楽しかったし、でき上がった写真も「楽しそうだなあ、自分」って思えるものになりました。それくらい自信がありますし、いろんな方に手に取ってもらいたい作品になっていると思います。

――自信作?

中島:はい。言っておかないと!(笑)。自信作だと言いつつ、自分の中で「大丈夫かな?」っていう気持ちもあるので、自分を落ち着かせるために言っておきます(笑)。

――今回のアルバムを待っていてくれる人は、中島さんにとってどういう存在ですか。

中島:ほんとに、心の支えですよね。自分としては、歌うことは好きなんですけど、歌にものすごく自信があるかと言われたら、そんなに自信はないんです。やっぱり、自分よりも上手い人はいっぱいいるので。でも、皆さんから「歌ってください」「ソロライブはしないんですか」という声をたくさんいただいてきたので、それに応えたいし、支えてくれている皆さんにプレゼントするような感じで、お届けできたらいいなって思います。

――表現者として、成長したり進歩していくために、今後どんな自分でありたいと思いますか。

中島:ずっとポジティブでいたいですね。やっぱり、落ち込むときもあるんですけど、そういうときに戻ってこられるのは、自分の中に少しポジティブな部分があって、それが最終的に大きくなって戻ってこられてるんだと思います。そこは自分のいいところなのかなって感じているので、これからも壁にぶつかってもポジティブさは残しつつ、解決できることは自分で解決していけるようになりたいなって思います。

中島由貴『Chapter Ⅰ』インタビュー 前編はこちら

取材・文=清水大輔  写真=藤原江理奈
ヘアメイク:イム・ミニ