仕事中に地震が起きたらどうする? エレベーターが止まったらどうする? ビジネスマンが知っておきたい防災の心得

暮らし

公開日:2021/2/2

 もし仕事中に地震が起きたら…。自宅の防災は万全でも、オフィスにいる時や通勤中に被災した場合を想定できていますか? 通勤中や出張中の地震に対して、何を備えてどう行動すべきか。国際災害レスキューナースの辻直美さんに教えていただきました。

Q.通勤中・帰宅中に地震が起きたら?
A.無理に移動しようとせず、「3つの可能性」を考えてベストな行動を選択しましょう。

「無理にでも帰宅しようとしたり、オフィスに向かおうと頑張ったり、すぐさま移動しようとする人もいます。でも、危険を冒してまで移動する必要はありません。被災時は何でも判断が早い方がいいと焦ってしまいがち。しかし、状況がわからないまま移動すると体力が削られ、お腹が空き、二次被害に遭う可能性もあります。その場に居続けることがむしろベストな選択になる場合もあります。まずは落ち着いて体力を温存し、状況・情報の整理をしましょう。その中で『どんな行動をとると、一番リスクが低いか』を考えることも防災の一環です。

 常に『3つの可能性』を考えておく、という方法があります。例えば、出張で東京から大阪への移動中、新幹線の車中で被災したとしましょう。運行の復旧目途が立たず、当日中に大阪に着けない可能性もありそうなので、どこで一晩を過ごすかを決めなければなりません。そのとき、最新の運行情報を確認しつつ『3つの可能性』を考えておくと、もし状況が変わったとしても落ち着いて行動に移すことができます。このケースでは、
①車中で1泊する
②次の停車駅である名古屋のホテルを取っておき、少しでも新幹線が動けばそこで1泊する
③完全に復旧するのを待って自力で大阪まで行き、予定のホテルを利用する
などの選択肢が考えられます。災害時は刻々と状況が変わるため慌ててしまいがちですが、『3つの可能性』を考えておけば、落ち着いてベストな行動を選択できますよ」

advertisement

Q.オフィスで被災したら、会社が助けてくれるのでは?
A.会社が助けてくれるとは限りません! プチ備蓄で最低限の備えをしておきましょう。

「会社ではそれぞれに『災害対応マニュアル』を作っているはずです。しかし、その制作担当者は被災経験がない場合もあり、現実的にはほとんど機能しないこともあります。自分の身を自分で守れるように備えておきましょう。もしものときはオフィスを避難所代わりにして数日を過ごすことになります。その間生きられるように、ロッカーやデスクにプチ備蓄をしておくと安心。災害用の食品を備蓄するスペースがないのであれば、ふだんコンビニで買っているような間食用のお菓子や水を、切らさないようにするだけでもOK。水は最低でも1日2L分、お菓子はなるべく複数種類を多めに。ひとつ食べたらひとつ足す方法でストックしておきましょう。また、日ごろから同僚とコミュニケーションを取り、食料を分け合える関係性でいることも大切です」

Q.オフィスに私物を置けず、備蓄が難しい場合は?
A.アイデア次第でオフィス用品も災害時に役立ちます。

「災害時に利用できそうなものがないか、会社の備品をチェックしておくとより安心です。寒い時期には、ゴミ袋や新聞、コピー用紙などが暖を取るために使えます。45リットルゴミ袋は穴を開けてかぶるだけで防寒着代わりになりますし、ゴミ袋にちぎって丸めた新聞やコピー用紙を入れ、そこに足を入れて足湯のようにして使うなど、オフィスの備品もアイデア次第では災害備蓄に。会社に何があるか把握しておけば、自分で用意した方がいいものも把握できます」

Q.地震で自社ビルのエレベーターが止まってしまった!
A.体力の温存が最優先。まずは座って救助を待ちましょう。

レスキューナースが教える プチプラ防災
レスキューナースが教える プチプラ防災

「地震が起きたときにエレベーターに乗っていたら、すぐにすべての階のボタンを押せば、近くの階に停止して脱出できることがあります。間に合わずに閉じ込められても、エレベーターが落ちることはまずありません。非常ボタンで外部に連絡を取り、落ち着いて救助を待ちましょう。大きな地震で周囲の被害が大きい場合は救助に時間がかかる可能性もあります。まずは、座って体力を温存することだけを考えてください。バッグをクッション代わりにしてその上に座り、エレベーターの角に背中を預けるようにして座ると疲れにくいですよ。また、通勤バッグには防災笛をつけておけば、万が一外部と連絡が取れなくても、外に助けを求められるかもしれません。チョコレートやペットボトルの水を常に携帯したり、軽くて薄いレスキューシートを忍ばせたりしておけば、エレベーターで長時間過ごすことになったときに役立ちます」

取材・文=箕浦 梢 画像提供=『レスキューナースが教える プチプラ防災』(扶桑社)