『ガルガンティア』に始まり、物語に没入していった「虚淵玄の沼」の魅力とは?――足立梨花インタビュー

アニメ

更新日:2021/2/1

足立梨花

「気が付いたらどっぷりとハマっていました」――女優の足立梨花さんが好きなアニメとして挙げる作品が『翠星のガルガンティア』だ。

『翠星のガルガンティア』は2013年にオンエアされたTVアニメ。はるか彼方の宇宙で戦争に参加していた主人公が、水没した未来の地球にロボットとともに訪れるというストーリーが話題となり、多くのファンから愛される作品となった。

 足立さんは、TVシリーズを観るだけでなく、続編にあたるOVA版『翠星のガルガンティア~めぐる航路、遥か~』の劇場イベント上映にも足を運び、その作品世界を存分に味わったという。

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『翠星のガルガンティア』のコンプリートブルーレイボックスの発売にあわせ、彼女にインタビューを実施、『ガルガンティア』に対する熱い想いと、『翠星のガルガンティア』の原作・シリーズ構成・脚本を手掛けた虚淵玄(ニトロプラス)の最新作『OBSOLETE』の印象について語ってもらった。彼女のアニメ愛をとくとご覧いただきたい。

翠星のガルガンティア
『翠星のガルガンティア』 Ⓒ オケアノス/「翠星のガルガンティア」製作委員会

主人公のレドがカッコよくて。「なんだ、このイケメンは?」と

――足立さんが『翠星のガルガンティア』のファンだと伺って、お話を聞きにきました! 『翠星のガルガンティア』と出会ったきっかけは何だったのですか?

足立:最初はSNSで知ったんです。私が声優で出演させていただいた劇場版『名探偵コナン 11人目のストライカー』でお世話になった北田(修一)プロデューサーがSNSをやられていて。そこで「『翠星のガルガンティア』という作品が今度放送になる」という情報を上げられていたんです。それで「なるほど、観てみよう」と思って、第1話をオンエアで観たのがきっかけです。かわいい女の子たちも登場していたんですけど……主人公のレドがカッコよくて。「なんだ、このイケメンは?」と。

――じゃあ、最初は主人公のレドに惹かれたわけですね。

足立:最初はレドが気になっていたんですけど、途中でマシンキャリバーのチェインバーのことが好きになりました。「何、このかわいいロボット!」と。続けてオンエアを観ているうちに、だんだんストーリーの展開に引き込まれていき……「え、クジライカの正体は……!?」と。気が付いたらどっぷりとハマっていましたね。

――キャラクターからストーリーにはハマッたんですね。

足立:レドとチェインバーのバディが、頭が固い同士でかわいらしいんです。「キャラクターがかわいいな、絵が綺麗だな」というところから、いつの間にかストーリーにのめり込んでいて。いつの間にかキャラクターたちのことをさらに愛している。そんな流れがありました。

――主人公のレドは宇宙から地球に来て、知らなかったことを学んでいきます。彼の変化や成長をご覧になっていましたか?

足立:地球の人々とうまく意思疎通ができなかったレドが、相手のことを理解しようとする。彼なりに地球に適応しようとしているんですよね。でも「理解しよう」とするだけでも、実は成長しているわけじゃないですか。この子なりに地球で頑張っているんだなと思えて、感動しちゃいました。そんな頑張っているレドをさりげなく手助けするチェインバーも素敵だなと。ロボットと人間の信頼関係がとても魅力的だと思いました。

――アニメのジャンルとして、ロボットアニメ作品はお好きなんですか?

足立:もともとロボットアニメはあまり観たことがなかったんです。これまで私が観てきたいくつかのロボットアニメって「ロボットが意思を持ってしゃべる」というシーンがあまりなかったんですよ。だから、私にとってチェインバーがしゃべる『ガルガンティア』は、すごく新鮮でした。

足立梨花

物語のどんでん返しが次々と起きて、私はこの作品から抜けられなくなっちゃいました

――『ガルガンティア』はキャラクターがたくさん登場しますが、印象に残っている人はいますか?

足立:やっぱり、第3話から登場する大海賊ラケージですね。最初はイヤな奴だなと思っていたんですよ。でも、最後に活躍しちゃう。悪いヤツでも、最後は「頑張れ!」と思ってしまって、嫌いになれない。女性の目線から見てもラケージはカッコよかったし、思いきりも良くて、素敵でしたね。きっとラケージのそばにいたら、絶対に守ってくれるだろうし、毎日飽きないだろうと感じますね。

――先ほど「ストーリー展開に引き込まれた」とおっしゃっていましたが、『ガルガンティア』は中盤にかなり衝撃の展開が訪れますよね。

足立:シリーズ構成・脚本の虚淵玄さんらしさ、というと、ご本人は否定されるかもしれないですけど、ファンにとっては「虚淵作品らしい」と思わせる展開でした。衝撃の事実が分かったあと、レドがちゃんと受け止めて、悩むところが良かったんですよね。いままでの自分は何だったのか、と考えるところがまた人間らしくて。その正体を知ったところから、お話の空気感が変わるというか。おかげで最後まで楽しく観ることができました。ここからどんでん返しが次々と起きて。私はこの作品から抜けられなくなっちゃいましたね(笑)。『ガルガンティア』沼にどんどん沈み込んでいきました。

――そんな足立さんがお好きな『ガルガンティア』のセリフは?

足立:チェインバーの最後のセリフですね。あのセリフがあるから、チェインバーは好きだなと再確認できました。

――足立さんが、もしあの水没している地球に降り立ったら、生きていく自信はありますか?

足立:生きる自信はあります(笑)。私はけっこう、人と友達になるのが得意なんですよ。あのガルガンティア船団では、人との関わりが重要じゃないですか。資源も限られたものしかないのであれば、仲間が多いほうが良いですよね。なぜかいろいろな人と仲が良いから生き残っている……そんな女の子になると思います。

――足立さんは劇場公開されたOVA『翠星のガルガンティア ~めぐる航路、遥か~』もご覧になっているそうですね。

足立:そうなんです。私が推している声優の鳥海浩輔さん(フライス役)が出演していると知って、劇場に行きました。あと、連続テレビ小説『あまちゃん』で一緒だった水瀬いのりちゃん(リーマ役)も出ていたので。

――水瀬いのりさんとは『あまちゃん』で共演されていたんですね。

足立:水瀬いのりちゃん(『あまちゃん』では成田りな役)は、私と同じアメ横女学園芸能コース(アメ女)のメンバーだったんです(足立は『あまちゃん』で有馬めぐ役を演じた)。そのときに、いのりちゃんから「私、声優をやっていて。まだメインは少ないんだけど……」と聞いていて。「あの、いのりちゃんが! こんなにも活躍するなんて!!」と。『~めぐる航路、遥か~』を観て、すごく嬉しかったのを覚えています。そういうつながりもあったので、『ガルガンティア』のOVA版は私の中ですごく特別な作品なんですよ。新宿の映画館へ深夜に行ったことを今でも覚えています。

――『翠星のガルガンティア ~めぐる航路、遥か~』のご感想はいかがでしたか。

足立:感想としては、「もっとこの日常が続いていってほしいな」という気持ちになりました。きっと続いていくんでしょうね。終わらないでほしいと思いながら観ていた記憶があります。

――こうしてオンエアから7年が過ぎても、『ガルガンティア』のお話を聞かせていただく機会をいただけて良かったです。

足立:本当に嬉しいです。どれくらいの『ガルガンティア』ファンがいまだにこの作品を好きでいてくれているのかが、すごく気になります。

――先ほど「虚淵作品らしさ」のお話がありましたが、虚淵作品で足立さんの印象に残っている作品は?

足立:やはり『魔法少女まどか☆マギカ』の衝撃は大きかったですね。私はリアルタイムでオンエアを見てはいなかったんですけど、あとからいろいろな人に「絶対に観るべき」とお勧めされて、観たんです。最初はかわいい作品だなと思っていたら、第3話あたりから雲行きが怪しくなって。ただのかわいい女の子が戦うだけの作品じゃないんだなと。女の子たちが辛い目に合うシーンでは言葉にできない感情が湧いてきて。人間の闇が描かれている作品だなと思いました。ほかにも『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズなども拝見していて、虚淵さんの奥深い世界を楽しんでいます。

OBSOLETE

OBSOLETE

OBSOLETE
『OBSOLETE』 Ⓒ PROJECT OBSOLETE

『OBSOLETE』は「現実にこういう事件が起きたらどうなるだろう?」と想像ができる作品

――今回、虚淵さんの最新作『OBSOLETE』をご覧になったそうですが、最新作の印象はいかがでしたか。

足立: EP1からEP12まで拝見して、正直な感想は「なんだこれ?」だったんですよ(笑)。虚淵作品は「展開のどんでん返し」や「ひとつの物語として美しくまとまっている」という印象だったんですけど、『OBSOLETE』は断片がたくさんあるような感じで、全体はもやに包まれているような感覚があったんです。

――ひとつひとつのエピソードはわかりやすいですよね?

足立:ひとつひとつのエピソードの内容はよくわかるんです。でも、異星人と人類がエグゾフレームを交易するようになったのはなぜなのか。異星人とは一体何者なのか。異星人の目的は何なのか。エグゾフレームとは何なのか?と。とにかく謎がどんどん広がっていくんです。そうやって考えていくうちに、EP12は異色回で……。一瞬、私は別作品を観ているのかな?と思うくらいでした(笑)。『OBSOLETE』は誰かと話し合いたい、語り合いたい作品だと思いました。どこかで考察しているウェブサイトがあるんじゃないかと思って、いろいろ調べたんですが、みんなまだ考えていて……それも面白かったですね。

――異星人は石灰岩1000キログラムと引き換えにエグゾフレームを人類へ提供し始めます。安価な鉱物で人類の技術を超えたロボットを入手できるわけですね。

足立:そうですね。「現実にこういう事件が起きたらどうなるだろう?」と想像ができる作品ですよね。農作業でエグゾフレームを使ったりしている風景もあって、それが独特な風景でした。

――エグゾフレームも各国でさまざまな人々が改造をしていますね。

足立:そうなんですよ。その改造も、実際に現在の技術でも実現できそうなかたちになっていて、とてもおもしろいと思いました。現実と地続き感があるというか。

――地続き感はたしかに強いですね。

足立:『OBSOLETE』はYouTube Originalsでの配信だし、海外の方も観るわけで、海外の反響がどうなっているのか、すごく気になりますね。最近、虚淵さんは人形劇の『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』を手掛けられたり、かなり意欲的な作品を次々と発表されていますよね。……たしか、私が推している鳥海さんもご出演されている……。

――『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』で鳥海浩輔さんは凜雪鴉という強烈なキャラクターを担当されています。諏訪部順一さん演じる殤不患と並ぶ、ダブル主人公のひとりですね。

足立:そうですよね。虚淵さんがそうやって意欲的な作品を作る中の、新たなひとつが『OBSOLETE』だと思います。たくさんの試みがある作品ですし、虚淵さんの作品としては、とても新しいアプローチをされていると思うので、それが世の中にどのように受け止められているのか。すごく興味深いです。

取材・文=志田英邦  写真=小野啓
スタイリスト=山本真里江 ヘアメイク=杉村理恵子
衣装=ワンピース¥27,000、ジレ¥36,000 以上ランバン オン ブルー(レリアン TEL03-5491-8862)
ブーツ¥24,000 ダイアナ(ダイアナ銀座本店 TEL03-3573-4005)

OBSOLETE

2014年、突如、月周回軌道上に現れた異星人・ペドラーは、人類に対して「交易」を呼びかけた。それは石灰岩1000キログラムと引き換えに意識制御型汎用作業ロボット「エグゾフレーム」を提供するという者だった。銃よりも安価で、誰でも操作できる「エグゾフレーム」はまたたくまに拡散していく。

【配信情報】
『OBSOLETE』 YouTube Originalsとして、バンダイナムコアーツチャンネルでEP1~EP12まで無料配信中。
YouTube Premiumメンバーは全エピソードを広告なしで視聴出来ます。
YouTube Premiumメンバー以外の方も、各エピソードの無料配信日以降に、広告つきで視聴いただけます。

OBSOLETE Blu-ray 上巻/下巻 (特装限定版) (全2巻)
OBSOLETE Blu-rayコレクターズエディション (初回限定版)
3月26日発売予定 https://a-onstore.jp/shop/obsolete/

足立梨花(あだち・りか)

タレント・女優。ホリプロ所属。第32回『ホリプロタレントスカウトキャラバン』でグランプリを受賞。数々のテレビドラマやバラエティ番組に出演。声優としても『ポケットモンスター』や『名探偵コナン 11人目のストライカー』などに出演。