新妻聖子「『王家の紋章』がミュージカル化された奇跡を、原作ファンの方には一緒に喜んでほしい」《インタビュー》

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公開日:2021/3/15

本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』4月号からの転載です

新妻聖子さん

 ミュージカルで魅力的なのはヒーローだけじゃない! ヒロインから超有名犬の役まで、2021年東宝注目作品に出演するキャストにお話をうかがいました。

「初演・再演と演じたキャロル役からもう4年経つんですね。その間に私も歳を重ねて、大きな転機もあったので、再々演でメンフィスの姉・アイシスを、というのは今の私にぴったりな役をいただけたと思います。『王家の紋章』はもともと原作が大好きですし、初演から再演まで、スタッフ・キャストが一丸となって原作をリスペクトしながら改良を重ねた作品です。お客様にも喜んでいただけて、DVDにもなって、再演の千秋楽のときは大きな達成感がありました」

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 新妻さんは再演後、結婚し子どもを持ち、2年前には、喉を壊してしまう大きな試練を経験した。

「それまでは厳しく自己管理をしていましたが、子育て中はどうしても子どもから風邪をもらってしまうこともあります。人生で初めて不可抗力で声のベストコンディションを維持することができなくなって、パニックになってしまい、思いつめてさらに喉を痛めて、声質が少しハスキーに変わりました。でも徹底的にドツボにはまったせいで、心配してもしなくても同じなら心配しないほうが人生はうまくいくし、一人でどうにかしようとしないのも大事だと気がついて。今の声は自分の年齢にとても合うと思えるようになったし、アイシスのキャラにもハマるのではないかと(笑)」

 現在2歳半になる息子の存在は、アイシスへの理解を深めるきっかけにもなったという。

「前はなぜアイシスがメンフィスにあれほど執着するのかわからなかったんです。でも息子が生まれて、アイシスにとってのメンフィスもそういう存在なのではと思えるようになって。なぜそこまで愛しいのか聞かれても理由は答えられないけれど、息子はなににも代えられない存在。この感情は4年前の私にはありませんでした。アイシスがメンフィスに向けている“命と同じくらい重い愛”を今なら表現できる気がしています」

 ヒロインのキャロルを演じているときから、アイシスの歌にも強く惹かれていた。

「キャロルという光が輝けば輝くほど、闇も深まる。それがアイシスや、メンフィスのライバルであるイズミルで、ミュージカルではそういう影のあるキャラクターに名曲が生まれるんです。アイシスの『想い儚き』はむくわれない立場だから歌えるナンバー。今回それに挑戦できるのはすごくうれしいです。キラキラのキャロルメイクだけでなく、エジプトのきれいなお姉さんのアイシスメイクの両方を制覇できるのも、少女時代からの夢が叶いますね(笑)」

 自身が生粋の王族(『王家の紋章』ファンのこと)である新妻さんだからこそ、ミュージカル『王家の紋章』への思いは特別なものがある。

「『王家の紋章』というマスターピースがミュージカル化された奇跡を、特に原作ファンの方には一緒に喜んでほしいし、楽しんでほしいです。読み込んだセリフを実際に耳で聞けるのはすごい感動なんですよ。お話もわかりやすいし、メインキャストのみならず、アンサンブルキャストも日本のミュージカル界を代表する実力派がそろっています。特に後半、戦いのシーンの群舞の表現はすばらしいし、コーラスの歌のレベルもとても高いです。しかも生演奏! 感染対策を万全にして、一番いい状態をお届けできるようがんばりますので、ぜひ観に来ていただきたいです」

新妻聖子
にいづま・せいこ●1980年、愛知県生まれ。2002年、TBS『王様のブランチ』でデビュー。03年ミュージカル『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役で初舞台。以降『ミス・サイゴン』キム役などミュージカル界屈指の歌姫として活躍中。

取材・文:波多野公美 写真:山口宏之
ヘアメイク:酒井夢美 スタイリスト:小堂真里(ポストファウンデーション)
衣装協力:ブラウス3万4000円(FLICKA/FLICKA TEL03-6712-6280)、イヤリング3万円(グロッセ/グロッセ・ジャパン TEL03-5413-6039)(すべて税別)

原作は伝説の少女マンガ ミュージカル『王家の紋章』再々上演決定!

『王家の紋章』原作イラスト
(c)細川智栄子 あんど芙~みん(月刊プリンセス)

 ミュージカル『王家の紋章』が、この夏4年ぶりの再々演で帰ってくる。音楽のシルヴェスター・リーヴァイ、演出の荻田浩一を筆頭に、キャストからスタッフまでミュージカル界のトップを走る才能が結集し、初演から大成功を収め、異例の速さで再演を果たした伝説のミュージカルである。

 長い連載期間を通して、アニメ化・実写化がほぼないことでも知られる原作を、一流のキャスト・スタッフが総力を挙げてミュージカル化した舞台は、音楽、演出、美術、照明、衣裳、ヘアメイク、キャストの演技と歌唱、そのどれが欠けても成り立たない総合芸術だ。ナイルの水をどう表現するのか、美しい衣装が立体になると生地がどう動くのか、原作を裏切らず、役者も芝居も引き立つヘアメイクをどう作るのか。各分野のプロフェッショナルたちが創り上げた『王家の紋章』の古代エジプトの世界に、席に座った観客も、キャロルとともに一瞬で運ばれてしまうだろう。

 メインキャストは、メンフィス役に初演・再演から続投の浦井健治と、初出演の海宝直人、キャロル役はどちらも初出演となる神田沙也加と木下晴香。前回に引き続き出演するのは、イズミル役の平方元基、イムホテップ役の山口祐一郎。初演・再演ではキャロル役だった新妻聖子がアイシス役を演じるのも話題だ。もうひとりのアイシス役は朝夏まなと。ほかキャストには、大貫勇輔(イズミル役)、植原卓也(ライアン役)、綺咲愛里、出雲綾、前山剛久、岡宮来夢、大隅勇太など、人気と実力を兼ね備えた豪華な布陣が発表されている。この夏は、劇場から古代エジプトへ旅立ってみては?

原作者コメント

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原作コミック

ミュージカル『王家の紋章』

ミュージカル『王家の紋章』

原作:細川智栄子 あんど芙~みん「王家の紋章」(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
脚本・作詞・演出:荻田浩一 
作曲・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ

出演:浦井健治、海宝直人、
神田沙也加、木下晴香、朝夏まなと、
新妻聖子、平方元基、大貫勇輔、
植原卓也、山口祐一郎 ほか
東京公演:8月帝国劇場 福岡公演:9月博多座 
製作:東宝

*キャストスケジュールは作品公式サイトをご確認ください。
*新型コロナウイルス感染症の影響にともない、公演スケジュールが急遽変更となる場合がございます。事前に公式サイトをご確認ください。

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