夫婦でカウンセリング! 妻への愛情は年金と同じ?『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』刊行対談。犬山紙子×土屋礼央 2人の私生活とは……?

文芸・カルチャー

更新日:2021/3/15

 3月3日に発売された土屋礼央さんの新刊『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった』。本書の刊行を記念して、昨年『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』を刊行された犬山紙子さんに対談を依頼! 雑誌『ダ・ヴィンチ』4月号にて対談と相成りました。この記事では、本誌には掲載しきれなかったエピソードを含めご紹介します!

――お二人に夫婦生活が上手くいくコツをお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。

土屋 僕は、夫婦間で解決することを人にゆだねていないんですよね。自分でやれることがあるということに、気づくことが大事。

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犬山 それはすごく大事ですよね。だいたい、しんどいと逃げちゃうじゃないですか。でも逃げても何も解決しないですよね。

土屋 よく、国会の議論先送りって叩かれるじゃないですか。でも夫婦喧嘩の先送りほどよくないものはないと思うんですよ。僕、妻への愛情は年金だと思っているんです。子育てが終わった後に支払われるものだから、納めていなかったら大変なことになりますよ。いわゆる、納税だと思っています(笑)。

犬山 大事。納税は義務ですからね(笑)。うちは夫婦喧嘩があまり成立しないんです。私は夫に言いたいことを言えるけれど、夫は何かを言われると自分のことを責めてしまうんですよね。私としては反論してくれた方が健康的なんですが、こればかりは性格なので仕方なくて……。そのたびに夫はものすごくヘコんでしまうので、ふたりでカウンセリングに行くことにしたんです。

土屋 カウンセリングですか。

犬山 はい。そこで私がイライラする理由をちゃんと解明して、夫も自分を肯定できるように。お互い冷静に話し合うことが出来るようになりました。やっぱり、私は喋らない人の気持ちを知らなくちゃいけないなって。なんでも“察してだとダメなんだよ”とか、言える側の私の目線で言ったとしても、言えない人にも理由があるんです。その根本をちゃんと見ないと、彼の本心もわからないし、話せないし、いい関係も作れないことに気づきました。そこを踏まえて、彼の気持ちをヒアリングしていかないと、という感じに落ち着きました。

土屋 僕はカウンセリングを受けたことがないのですが、受けることでいろいろ変わってきましたか?

犬山 はい。そこで私たち夫婦の対処法がわかりました。あとは、“察して”と思うタイプの人に取材するタイミングがあったのですが、その方は「自分が何かを発言して揉めるぐらいだったら私が我慢すればいいと思って黙ってしまう」と言っていて。それを聞いてハッとしたんです。その人のように、すべてに理由があるのであれば、その理由を理解しないといけないなと。

土屋 相手のことを理解するというのは、本当に大事ですよね。

――土屋さんは、著書『ボクは食器洗いをやっていただけで、家事をやっていなかった。』では、結婚する前を前世と呼んでいますが、それくらい結婚して変化されたんですね。

土屋 そうなんです。妻は過去の僕の過ちも知っていますし、そのうえで結婚したんですよ。ただ、そのままでいいから結婚したというわけではなく、ちゃんと僕に「間違っている」と言ってくれたんです。それに、妻自身は、“いつ死んでもいいように生きている”と言っていて。それがすごく素敵だなと思って、僕もそう思うようにしたら、考え方がガラッと変わりました。

犬山 よく女性同士で話すときに、“男は変わらないから”とか“結婚しても遊ぶ人は遊ぶ”って話題になるんですよ。でも礼央さんみたいに、本当に変わったケースがあると勇気になりますよね。

土屋 変われますよ。ただ大変ですけど(笑)。あと相手からどう思われているかを知ることができるといいですよね。たとえば、最初は僕の皿洗いのやり方が気に入らなくてイライラしていた妻が、最近は放っておいてくれるようになりました。理由を聞いたら「20年先も皿を洗ってもらうために、怒るより放っておいたほうが自分が得」と言っていて(笑)。

犬山 長期スパンで見られているんですね(笑)。

――ちなみにお二人とも、結婚して10年弱くらいになりますが、ご自身はどう変化してきたと思いますか?

土屋 僕は子どもが生まれたことが大きかったので、夫婦としてというよりも、家族で変化してきた感じがありますね。

犬山 私もそうですね。理不尽に怒っている姿を子どもに見せるのはよくないと焦った記憶もありますし……。私、独身時代はかなりちゃらんぽらんだったんです。でも、本当に長く仲よくしたいと思える人とせっかく一緒になれたのなら、相手を大事にすることが私を大事にすることに繋がると思ったんです。

土屋 僕は今まで仕事一本だったこともあって、若い頃は家庭を優先する人を「何考えているんだ」って思っていたんです。でも子どもが生まれて、仕事と育児の両立が非常に大変だとわかってからは考え方をあらため、「家庭のために仕事をしている」と言い聞かせるようになりました。言ってしまえば、最初は自己暗示でしたね。

犬山 その暗示が効いたんですね。

土屋 はい。驚くほど効きました(笑)。

――子育てが終わってからは、二人の時間が必ず来ますしね。

犬山 そうなんです。旦那との関係が崩壊したら、この後は全然楽しくないから、関係性はちゃんと作っておこうって話し合いました(笑)。

土屋 そこまで話すんですね。でも、すごく大事ですよね。

犬山 あとは、子どものことも、旦那のことも、褒めることは大事にしています。上からではなく、その過程を「嬉しい」という気持ちなど織り交ぜて伝えて、あなたのこと気にかけてますって。

土屋 わかります。僕も妻が幸せなのが一番幸せなんです。それは自分のためでもあるんですよね。それをずっと伝えているからこそ、妻は「あなたは私以上に私の幸せをねがってくれている」って言ってくれるんですよ。

犬山 それって『大長編ドラえもん』に出てきそうな最高の台詞!

土屋 土日も、家族とどこか出かける時に、「パパは私が行きたい所に行きたいんでしょ」って言うんですよ。すごい自信! 否定はしませんけど(笑)。食事も、妻が2つのメニューで迷っていたら、選ばなかった方を頼むようにしています。

犬山 それ、めちゃくちゃうれしい! うちの旦那もそうなんですよ。それをされると「好き」ってなるんです(笑)。

土屋 あはは。僕は食事にこだわりがないし、何を食べてもおいしいから、妻の喜ぶものが一番なんです。

犬山 すごいなぁ。きっとお互い浮気の疑いなど、心配はまったくないんじゃないですか?

土屋 ないですね(笑)。妻は過去の恋愛遍歴を全て知っているので、不安な部分はあったと思います。そこで不要な心配はかけるべきではないと、結婚を期に携帯電話の番号から何から全て新しくして僕の人生ゼロスタートです。やましい情報は全て消しました!

一同 (笑)

土屋 いまはスマホのFace IDも、僕と妻、両方でロックが外せるようになっていますからね(笑)。でも、そうやって妻の不安を取り除いていくのもすごく大事だと思うんです。

犬山 すごい。でも家族ができると、幸せのベクトルがガラッと変わりますからね。

土屋 そうですね。僕はもう、家族のために生きているので、欲望を捨てました。ガンジーです。まぁ、この本は売れて欲しいとは思うんですけどね(笑)。

取材・文:吉田可奈 写真:川口宗道

つちや・れお●2001年にRAG FAIRのメンバーとしてデビュー。現在は音楽活動だけでなく、バラエティ番組や多くのラジオ番組のパーソナリティなどを務める。これまでも多くの本を出版。

いぬやま・かみこ●イラストエッセイスト。コラムニスト。2011年『負け美女 ルックスが仇になる』でデビュー。ユーモアあふれる独自の視点が高く評価され、雑誌、テレビなどで幅広く活躍中。

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