乃木坂46・山崎怜奈「アイドルとして劣等感ばかりだったわたしが、歴史の偉人から学んだことは……」

あの人と本の話 and more

公開日:2021/4/8

山崎怜奈さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回は、乃木坂46の“才女”として知られる山崎怜奈さんが登場してくれた。本誌では、寺地はるなさんの小説『彼女が天使でなくなる日』の魅力を熱く語ってくれた山崎さん。ここでは、初の著書『歴史のじかん』をフックに、「歴史の楽しみ方」について深く教えてもらおう。

 小5のときに観た大河ドラマ『篤姫』にハマり、以降、山崎さんはすっかり歴史の虜になってしまった。

「篤姫って、教科書には出てこない人なんですよね。それが主役になるなんて、と驚いたことを覚えています。当時のわたしは、ちょっと暗い子だったんです。でも、『篤姫』を観ていたら、どんな人でも主人公になれるのかもしれない、と感じて。だったら、わたしの人生はわたしのものだし、好きに生きようと思えたんです。それから歴史にどっぷりハマっていきました。」

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 けれど、歴史の教科書や授業にはあまり面白さを感じていなかったという。それでも勉強はしなければいけない。そこで山崎さんは独自の勉強法を編み出した。

「教科書に載っていることは、ただのデータだと思うんです。事実を凝縮させて、簡潔にまとめている。でも、それだけだとつまらないし、頭に入ってこない。なので、歴史を楽しむために、脳内で勝手にキャスティングを始めたんです。偉人たちに俳優さんを当てはめて、セリフを考え、台本を作る。そうすることで歴史の授業もグッと面白くなりました。教科書の余白には、先生が教えてくれたこぼれ話もひたすら書き込んでいました。『この偉人は、胃がんで亡くなった』とか。受験では絶対に使わないけれど、覚えておくと面白い豆知識をよくメモしていました。」

 成績をどんどん伸ばしていった山崎さんは、乃木坂46のメンバーになっても勉学を疎かにしなかった。2016年には周囲の心配をよそに慶應義塾大学に進学。アイドル活動と勉強を両立させ、2020年には同大学を無事に卒業した。

 いまではグループきっての才女として知られ、歴史にまつわる仕事の他にもクイズ番組やラジオのパーソナリティなどでも存在感を増し続けている。ただし、いまのようにキャラを確立するまでには相当な葛藤もあったそうだ。

「勉強って、やればやるだけ結果につながるんです。でも、アイドル活動はそうじゃなくて。可愛い子たちのなかに飛び込んで、なにを頑張れば上にいけるのかわからない。そもそも“上”がなにを意味するのかもわからない。そんな状況で、ただただ劣等感ばかりが募って、どうすればいいのか見えない時期が続きました。」

 まるで出口のない迷路のような毎日。そんなとき、光を見せてくれたのが、歴史上の偉人たちだった。

「実は、彼らは批判もされていたんです。それでも自分を貫いたから、歴史に名を残している。だから、『わたしも好きなことをしよう。他の子たちとは違う土俵で戦ってみよう』と思いました。そう決心して、歴史好きを公言するようになったら徐々に面白がられるようになっていったんです。他のメンバーたちがコスメが好きと言っているなか、わたしだけが『日本史が好きです』と言っていました(笑)。」

 歴史から学び取ったことを実践し、着実にステップアップしてきた。だからこそ山崎さんは、歴史の面白さをもっともっと広めたいと願っているのだ。

「すべては“結果オーライ”なんだってことを、偉人たちが証明していると思います。どんなに無理だと批判されたとしても、やってしまえばカタチになる。真田幸村の父親も、散々周りを裏切っていたから、当時は裏切り者だと言われていましたが、結果的には真田家を守っていますし、いまでは讃えられています。結果オーライなんです。だとしたら、自分の直感を信じたほうがいい。わたしも変な子扱いをされることもありましたが、ようやく認められるようになってきました。仮に変なことをしていたとしても、それをずっと続けていれば自分自身が新しいジャンルになると思うんです。そんなことを学べる歴史というものに、ぜひ触れていただきたい。『勉強しよう』なんて思わなくて大丈夫。歴史は“アクの強い人図鑑”なんです。とにかくアクの強い人たちがどんどん出てきて、たくさん失敗をする。その“やらかし”具合を見ているだけでもきっと楽しいはず。そう考えると、いろいろな経験をして大人になった人こそ、歴史をより楽しめるんじゃないかと思います。」

取材・文:五十嵐 大 写真:山口宏之

やまざき・れな●1997年5月21日、東京都生まれ。2013年、乃木坂46第2期生オーディションに合格し、グループ入りする。16年には慶應義塾大学に進学、2020年に卒業。クイズ番組や歴史番組などで活躍し、ラジオ「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。」ではパーソナリティを務める。

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『歴史のじかん』

『歴史のじかん』書影

山崎怜奈 幻冬舎 1500円(税別)
2019年5月から約1年間放送された歴史番組『乃木坂46山崎怜奈 歴史のじかん』をついに書籍化。全50回の放送から、山崎さん自身が選んだ14回のエピソードを掲載している。11年も続いた応仁の乱や、徳川家康が最も恐れた男、意外と知らない忠臣蔵についてなど、歴史のアレコレが専門家との対談形式で解説される。また、山崎さんのプライベートな一面が明かされている書き下ろしのコラムも必読!