LiSAと振り返る、10年間の「最高の日々、最高の道のり」――LiSA10周年インタビュー③

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更新日:2021/5/20

LiSA

 2011年4月20日。1stミニアルバム『Letters to U』で、LiSAがソロデビューを果たしてから、10周年を迎えた。『紅蓮華』や『炎』の驚異的な大ヒット、2020年末にはTBS「第62回輝く!日本レコード大賞」にて「日本レコード大賞」を受賞、NHK紅白歌合戦に2年連続出場――いまやLiSAを説明し、紹介するためのフレーズはそれこそ無数にあるけれど、10年前に歩みを始めたひとりのシンガー・LiSAが、最初から自信たっぷりで、すべてを成功させてきた完全無欠のスーパースターだったかと言えば、決してそうではない。傷つき、悩み、それでも楽曲を受け取ってくれる・ライブを一緒に楽しむ仲間たち、彼らがLiSAに託した夢が、彼女を奮い立たせ、その足を前に運ばせる力となってきた。LiSAがオンリーワンの存在であり続けている理由、それは聴き手に近づきたいと願う想いの強さであると思う。初めて話を聞かせてもらった2012年から、その印象はまったく変わらない。ブレることなく過ごした日々、進んできた道のりが、今のLiSAの楽曲やメッセージを形成しているのだ。

 今回は、10周年のミニアルバム『LADYBUG』(5月19日発売)にあわせて、10年間の軌跡をLiSAとともに振り返らせてもらった。『紅蓮華』や『炎』をきっかけにLiSAを認知し、彼女の歌にのめり込んだ方は、たくさんいることだろう。だからこそ、LiSAの原点・根幹を成す考え方をお伝えするために、10年間の前半について厚めに語ってもらうロング・インタビューとなった。5日にわたって、お届けしていきたい。第3回は、初の日本武道館公演を行った2014年、ロックフェスなど新たなフィールドに足を踏み出した2015年までを振り返る。

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わたし、自分の気持ちとか自分の夢だけでは頑張れないんだと思う

――2014年1月3日、初めての武道館。

LiSA:これもやっぱり、自分で自分にプレッシャーをかき立てた武道館でしたね。

――自分で自分を追い詰めてしまった、同時にフィジカルに問題も生じた。

LiSA:うん、そうですね。

――その後がすごく大事で、武道館でみんなに支えてもらったことで「この人たちを裏切れない」とより強く思ったこと、“Rising Hope”という最強のアンセムとしてアウトプットされたことは、ひとつの転換だったというか。そして、絆が強くなるきっかけでもあって。

LiSA:そうですね。やっぱり1回目の武道館は、わたしが初めて「自分がバレた」と思った場だったけど、実はもうすっかりバレていて、それに気づいていなかったのはわたしだけだったんですね。そういう意味では、わたしよりもまわりのほうが切り替え早かったような気がします。化けの皮を全部剥がされたような気持ちでした。手品の種明かしを、全部先にされていくような。

――最初の武道館を観たことがない人のためにフォローしておくと、そんなひどいものではなかったんですけどね。実際、あの日のライブに感動した人間がこうしてしゃべっているわけで(笑)。

LiSA:(笑)でも、みんながそのときに支えてくれたパワーが、わたしに次の夢をちゃんと見させてくれたし、次に進むための力になってくれたなって思います。

――次の夢とは?

LiSA:もう1回ちゃんと、武道館でやることですね。

――2014年は、初めてロックフェスに出た年でもありますよね。『TREASURE(05X 2014 SECOND SEASON GET STARTED!)』を現地で観させてもらって、正直なところ最初は少しアウェー感を感じていたんじゃないかな、と思うんだけども。

LiSA:そうですね。たぶんわたし、自分の気持ちとか自分の夢だけでは頑張れないんだと思います。ロックフェスもそうで、自分はそこに行きたい、ロックフェスには好きなものがいっぱいあって、出たい気持ちはあったけど、自分ひとりだけが頑張って、それを信じて進んでいくような力はなくて。だけど、ずっとわたしを見てくれている人たち、一緒に夢を重ねてくれる人たちがどんどん増えていって、そこに力を貸してくれる人たちが開いてくれた扉だったと思います。

――自分自身の夢というよりは、その人たちの夢も一緒に背負っている感覚、というか。それは、叶えてあげよう、とかではなく。

LiSA:はい。

――気持ちを乗せてくれるから、踏み出せる。

LiSA:それを理由にして、頑張る力をもらっていたような気がします。そうやって、一緒に夢を重ねてくれる人たちもいましたし、田淵先輩とかTOTALFATとか、ずっと前から見ていてくれた人たちが、ちゃんと仲間として受け入れてくれたことも、すごく力になりました。

――前回の話を踏まえて、ほんとに面白いなと思うんだけど、中村繪里子さんと共演しつつ、TOTALFATとも仲良くやってる人って、この世界でひとりとして他にいないでしょう(笑)。

LiSA:そうですかね(笑)。

――2014年にリリースした楽曲としては、“シルシ”も大きかったんじゃないかと。

LiSA:はい。バラードは、ソロデビュー後は“シルシ”がシングルタイトル曲としては初めてだったんじゃないですかね。

――シンガーとしての表現が広がっていったきっかけとして、“シルシ”以前/以降で分けられる部分もあるのかな、と思うんですけども。

LiSA:武道館のあとに“Rising Hope”があって、そのあとにノンタイアップの『BRiGHT FLiGHT / L.Miranic』を出して。“Rising Hope”を作ったときに、アニメと関わる上で、自分自身を注ぐことの新しい形をちゃんと作れたような気がしたんです。アニメ軸で作ってきたLiSAが、LiSA自身にも近づいたのが“Rising Hope”だったと思います。LiSAを色濃く出しながら、アニメにおける役割も担うことができた、というか。で、『BRiGHT FLiGHT / L.Miranic』で、自分自身が表現したかったポップな部分とロックな部分をちゃんとサウンドとして表現できたときに、やっぱり自分が向き合わないといけないのは、言葉をちゃんと届けること、歌をちゃんと歌うことなんだなって――自分のことを歌手と言っていいなら、それがすごく必要だな、と思いました。

――わりと原点、基本的なことなのかもしれないけど、そこにしっかり向き合って立ち返ったわけですね。

LiSA:うん、そうですね。当時を思い返すと、“シルシ”ってちょうど『アナ雪』にハマっていた時期なんですよ。で、“Let It Go”をカラオケで歌っていて、気持ちよく歌えるバラードがすごく好きだなって――なんていうんでしょう、“träumerei”を歌ったときに全力を出せてない気がしたのは、“träumerei”を歌うことで、全部は発散できなかったんですよ。やっぱり、ロックをやっていた身からすると、発散する音楽が好きで、カラオケに行くイコール、難しくて高い曲を歌うことでストレス発散になる、みたいなところがあったんですね。「難しいけどカッコよく歌えたら最高に楽しい曲を作りたい」と思っていて、カヨコさんにお願いして作ってもらったんです(笑)。

――そんな背景もあったとは(笑)。

LiSA:高くて、気持ちよくて、歌える曲、挑戦したくなる曲、ですね。それに、『ソードアート・オンライン』の中で、わたしは《マザーズ・ロザリオ》編が一番好きだし、エピソードに重ねて、エンディングの曲でもあったので、しっかり言葉を届けるのが重要な歌だなって思っていました。

自分にしかできないことを、見つけたような気がした

――さっき、最初の武道館を経て「次の夢」はもう一度武道館でやること、と話してくれたけど、2015年の1月にそれをしっかり成し遂げましたね。

LiSA:二度目の武道館に挑むときに、リベンジみたいな気持ちは正直あまりなくて。1回目の武道館はライブをやるつもりで挑んだんですけど、2回目の武道館は、それこそ「みんなと一緒にこの武道館を楽しむ!」という方向を向けたときに、すごく楽しかったんですね。それを経たことで、自分の新しいライブのスタイル、大きな会場での楽しみ方を勉強したし、考えられるようになりました。

――実は、インタビューで話す言葉がちょっと変わってきたのかも、と感じたのは、この年なんですね。どうしても、縛られてるというか、がんじがらめになってる部分がずっとあった気がするけど、この頃には精神的に解放されている、自由になってきている雰囲気がありました。

LiSA:やっぱり、武道館は最初に設定した夢だったからこそ、すごく大きかったんですけど、2回目の武道館をやったときに、「夢を乗り越えた!」という感覚よりも、今にちょっと近い感じがありました。その先に思い描いているものがまたあったし、その先の夢、その先にできそうなこと、楽しそうなことを、すでに見つけていたような気がします。ゴールだと思って走っているときは、たぶん「やっと、やっとゴールに着きます!」みたいな気持ちだったんですけど、ゴールだと思っていた場所をスッと乗り越えたときに、新しい景色が広がっていた気がします。

――アニサマのトリを初めて務めたのも、この年でしたね。自分自身で「アニメ音楽のシーンを牽引する存在だ」と思っているわけではないと思うんだけど、イベントのトリを務めるということは、その場における代表的な存在ではあるじゃないですか。そのことについてはどう思ってたんでしょうか。

LiSA:正直に言うと、あまり気が進みませんでした。というのは、アニメ音楽を牽引する・代表的な存在になるのがイヤだ、ということではなくて――なんだろう、誰かを蹴落として代表として立っているつもりは全然なかったし、たとえばわたしがトリをやることで誰かが悔しい思いをすること、いろんな方たちがいる中でその責任を自覚することがイヤだったんだと思います。

――なるほど。でも、この頃になると「LiSAが好き」と表明する人は確実に増えているだろうし、見られ方が変わってきた実感はあったのでは?

LiSA:そうですね。責任を背負わないといけないような気はしていました。

――こうして時系列で話を聞いていくと興味深いというか、2012年、13年頃のモードやメンタルはわりと自分自身に向いている感じがあるけど、徐々に外に開けていってる感じがありますよね。もともとLiSAッ子のみんなにはしっかり向き合っていたけど、さらに外側のフィールドに対しても開いていってるのがこの頃なのかな、という。

LiSA:自分にしかできないことを、見つけたような気がしたんだと思います。ロックフェスに出たり、自分の足で違う道を歩いていることを証明していって――2015年って、(3rdアルバムの)『Launcher』を出して、『Mステ』に初めて出た年なんですよね。ちゃんと、「わたし、自分にしかできない道を開拓してるんです」というところを見てもらえたような気がしてきた時期なんですかね。

 やっぱり、最初から『Fate/Zero』の主題歌を担当させてもらったり、ソロデビューして3年もしないうちに武道館でライブをやったり、表面上だけ見ると、すべてがうまくいってるように見えただろうし。だけど、自分で軸足をつけるところまでやってきたときに、「違うんだ」って言える、自分にしかできないことを見つけたような気がしていました。

第4回へ続く(第4回は5月20日配信予定です)

取材・文=清水大輔  写真=藤原江理奈
スタイリング=久芳俊夫(BEAMS) ヘアメイク=氏家恵子

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