45年間、夫婦二人三脚で「ねずみくんの絵本」を制作!「生きてるときに『がんばったね』と褒めてあげたかった」【なかえよしをさんインタビュー】

文芸・カルチャー

更新日:2021/6/2

ねずみくんのピッピッピクニック (ねずみくんの絵本 37)

著:
イラスト:
出版社:
ポプラ社
発売日:
ねずみくん
『ねずみくんのピッピッピクニック』
(なかえよしを:作、上野紀子:絵/ポプラ社)

 このほど累計400万部を超える人気絵本シリーズ「ねずみくんの絵本」シリーズの最新作『ねずみくんのピッピッピクニック』(なかえよしを:作、上野紀子:絵/ポプラ社)が刊行された。第1作『ねずみくんのチョッキ』が誕生した1974年から45年を記念して、初めての大規模展覧会「ねずみくんのチョッキ展 なかえよしを・上野紀子の世界」が全国を巡回中。6月2日より東京展が始まるのに先立ち、作者のなかえよしを先生のオンライン会見が行われた。

(取材・文=荒井理恵)

なかえよしを

――新作『ねずみくんのピッピッピクニック』は、ピクニックで遠出しようとしたねずみくんたちが結局いつもの公園にもどってきます。「大切なものは遠くにでかけなくても身近にあるよ」というテーマなわけですが、どのような経緯で制作されたのでしょうか?

なかえよしを氏(以下、なかえ):今回たまたまコロナで(世の中が)「遠くにいかなくても近くで」となりましたが、実はこのお話のラフはコロナの前に決まっていたんですね。これまでの作品を振り返ると、春夏秋冬で「春」のねずみくんがないというので春にして、春なら「遠足」などにしようと思って「ピクニック」。「パピプペポ」の感じがいいぞと思って「ピ」を多くして…。たまたまコロナのタイミングに合ったのかな、という感じです。

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――長年シリーズを続けるために、何か秘訣はありますか?

ねずみくん
シリーズ1作目『ねずみくんのチョッキ』
(なかえよしを:作、上野紀子:絵/ポプラ社)

なかえ:ねずみくんのシリーズについては「なるべくシンプルに、なるべく同じ繰り返しをやろう」と思っています。実際に僕らの生活というのは毎日繰り返しですよね。その中に楽しいできごとがあったり、ちょっとしたことに感動したりすることがあるわけです。だから新刊も「旅行しなきゃつまんない」というのではなく、「身の回りにも面白いことがたくさんある」というストーリーになりました。僕はいつも「ねずみくん」の視点そのもので世の中を見ていますが、なんでもないようなことのよさに気がつくことができて楽しいですよ。そんなふうに目線を変えるというのはお話を考える上でとても大切なことです。

――登場するどの動物たちも魅力的です。キャラクターはどのように決めていますか?

ねずみくん
Ⓒなかえよしを・上野紀子/ポプラ社

なかえ:ねずみくんが「小さい」のに対して、まず「大きい」ぞうさんがいて、その間を見た目も変化があってわかりやすいようにと決めています。見た目でわかる大きさの違いも「個性」なわけで、こんなふうに世の中にはいろんな個性の人がいるということを出しているので、違った友だちとがんばっているねずみくんをみてもらえたらいいなと思います。

ねずみくん

――先生は、どのような子ども時代を過ごされたでしょう。それが絵本の世界につながることはありますか?

なかえ:僕の子どもの頃は戦時中と戦後で、田舎の野山をかけまわって遊んでばかりいて勉強はしていませんでした。高校受験で周りが勉強し始めたことにも気がつかずに「勉強ってするのかぁ」って思ってたくらいで。覚えるというのが苦手でしたし、まあ、あんまり頭もよくなかったんです。それでも僕も周りと同じように都立や公立の高校を受けようとしたら、中学校の先生から「なかえくんは受けなくていい」と言われたんですね。それが人生のターニングポイントになって「僕はみんなと違うんだ」と気がついたんです。

 自分が得意だったのは図工と体操だけだったので、小さいながら考えて「自分にできることは絵の世界だ」と、美術学校附属の高校から日大芸術学部に行きました。当時は美術学校に行くといえば、「お前、どうやって食べていくんだよ」と思われたものですが、何が幸いするか、その大学で上野と出会って、2人で絵を描いて楽しんだりしているうちに、絵本をやるようになって、結局、一生絵の世界で暮らせちゃったという。ですから勉強ができなくてよかったな、と今は思っています。絵の世界は自分が好きなことをやるわけですから、どんなにつらくてもそんなにつらくないですし、「お話を新しく考えろ」と言われて全然(アイディアが)出てこなくても「ああ、勉強するよりはいいや」って考えてます。

 最近でも、みんなと合わせるのが苦手だったり、じっと授業を聞くのが難しい子もいると聞いて、調べてみたら、まったく自分のことを言ってるんじゃないかと思ったんです。あの頃は今のように注目されることもありませんでしたが、今思えばそれは、「みんなについていけないだけで、ひとつのことに夢中になれる」わけですから。だからもし周りにそういう子がいたら、その子には必ず得意なことがあるはずで、それを活かしてあげるような親御さんや周りの人がいたら伸びていくんじゃないかとつくづく思いますね。

――「ねずみくんの絵本」シリーズは上野紀子先生と二人三脚で描かれてきました。だからこその大変さ、喜びはありましたか?

なかえ:最初は僕も絵描きになろうと思ってたんですけど、上野のほうが断然絵がうまいので、絵本では絵を上野にまかせて、僕はお話を考えるようになりました。お話を考えるのも意外と絵の世界と同じで、絵を描くようにお話を書けばいいわけです。ですから「2人だからできた」というよりも、「2人じゃないとできなかった」。絵の得意な上野とお話を考えるのが得意な僕で、絵本は偶然、不思議なくらい向いていたんだと思います。ですから大変なことは一度もないんですよ。好きだからお互いにやってたわけですから、大変なことでも楽しいし、大変なことがうれしい世界ですね。

ねずみくんのピッピッピクニック

――現在、お一人で作られていますが(※)、創作の中で上野先生の存在をどのように感じていらっしゃいますか?

(※)上野紀子先生は2019年に逝去され、現在、なかえ先生は上野先生の絵にパソコンで手を加え、新たな作品を生み出している。

なかえ:上野と絵本を作っていたときは、とにかく仕上げて入稿することで頭がいっぱいで、お話を考えると上野がせっせせっせと絵を描いて、絵ができたら「できたー」とそれを台紙にはって、トレペをはって編集の人に渡して、「あー終わった」という感じだったんですね。当時は「絵ができた」って喜んではいるけれど、一枚ずつの絵をあんまりじっくり見たことがなかったんです。今はパソコンで絵をいじっているので、そうすると絵をじっくり見ることになって、一枚ずつ拡大しながら見ていると、「よくもまあ上野はこんなに細かくせっせと描いていたんだ」と感心します。生きてるときに「細かくがんばったね」と褒めてあげたかったんですけど、今ごろになって感心しております。

――そうした原画が見られるのも巡回展の魅力ですね。展覧会に向けてのメッセージをお願いします。

なかえ:原画と絵本の絵を見比べてもらえたら面白いかと思います。原画と印刷はあまり変わりがないと思うのか、やっぱり原画らしい味があると思うのか。原画というのはやっぱり絵描きが直にさわったものですから生々しいですし、「こうやって描いてるんだ」とかもわかります。ねずみくんは鉛筆画ですが、1本の鉛筆で描いたわけじゃなくて、上野は10本以上の鉛筆を使いわけて描いていましたからね。ねずみくんの原画はほとんど原寸で、上野も歳とって目が悪くなってくると、大きな虫眼鏡を使いながら、細かいヒゲの一本一本だとかを一生懸命描いていました。そういうのも見ていただけるといいと思います。

 東京展は6月2日より銀座・松屋デパート(誕生45周年記念 ねずみくんのチョッキ展 なかえよしを・上野紀子の世界)でスタート。新刊『ねずみくんのピッピッピクニック』のラフの展示も始まるほか、フォトスポットも増設。大人向けのグッズも充実とさらにパワーアップするとのことで、世代を超えて楽しめそうだ。

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この記事で紹介した書籍ほか

ねずみくんのピッピッピクニック (ねずみくんの絵本 37)

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ポプラ社
発売日:
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9784591169865