「たった数日の関係でも子どもが心を開く一瞬を逃したくない」――『漫画家しながらツアーナースしています。』著者・明さんに聞く、ツアーナースという仕事

マンガ

公開日:2021/6/8

漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション
『漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション』(明/集英社)

 学校や民間団体の宿泊行事に同行し、子どもたちの病気やケガのケアをするツアーナースという仕事。『漫画家しながらツアーナースしています。』(集英社)は、ツアーナースと漫画家を兼業する著者の明さんが、Webサイト『よみタイ』で連載していたハートフル・コミックエッセイです。

 2021年6月4日には、現役ナース・先生・ママのセレクション全16話を掲載した最新作が発売されました。日々成長していく子どもたちの凄さや、それを見守る明さんの想いの強さを、より深く感じられるエピソードばかり。涙なしでは読めない1冊に仕上がっています。

 たった数日間の宿泊行事のなかで、著者が見つめた子どもたちの姿とは? 本書に込められた想いを明さんに聞きました。

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(取材・構成・文=吉田あき)

漫画のイメージと現実のギャップが本当に怖い!

――この漫画は、子どもを持つ親や医療従事者、学校の先生、子どもなど幅広い層に読まれているそうですね。どんな反響が多いですか?

明さん(以下、明):いろんな方に読んでもらえるのは、とても嬉しいです。漫画として楽しくおかしく読んでもらえれば、それで十分なんですが、そこにさらに「勉強になった」や「癒された」などの感想をいただけると、飛び上がって喜んでいます。

漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション p.182

 親御さんからは「漫画を読んでいたので、子どもがケガをした時に落ち着いて対応できました」、先生からは「学校の保健室に置いて、子どもたちと一緒に勉強しています」などのコメントを。看護師さんからは「こんな働き方もあるのか」「自分の看護の在り方を考えるきっかけになった」などのコメントをいただきました。

 中には「ケガは必ずしも消毒しなくていいと初めて知った」「オストメイトトイレが何のためにあるのか、初めて知った」「〇〇という病気を初めて知った」といった内容もあり、知られてないことって意外とたくさんあるんだなと、私自身も教えられています。

――目の前にいるのが著者なのに、関係者の方から「ツアーナースの漫画読んだことあります?」と聞かれた……というエピソードが興味深かったです(笑)。

:保健室の本棚に実物があるのを見たこともあり、そのたびに冷汗です(笑)。漫画では描けないことのほうが多いために、読んだ方にはどうしても「偏ったツアーナース像」が出来上がってしまいますから。それがキラキラしているほど、現実の私がイメージダウンしていくわけで、このギャップが怖い! 本当に怖い!

 私の行動がツアーナース全体の印象にも影響します。無責任な行動をすれば「ツアーナースは無駄だった」「看護師は役に立たない」となり、「あの漫画は嘘つきだ」といわれるかもしれず、責任は重大です(汗)。なので、こんなふうに聞かれた瞬間には背筋が伸びます。そして、服装や髪型は大丈夫か、言葉遣いは大丈夫か、笑顔はひきつってないか、やさしい声かけができているか、安心感を与えられているか、そんな風に自分を省みます。大変です。でも、省みるきっかけは嫌いではありません!

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