アイドルマスター 15周年の「今までとこれから」⑩(双海真美編):下田麻美インタビュー

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公開日:2021/6/15

『アイドルマスター』のアーケードゲームがスタートしたのが、2005年7月26日。以来、765プロダクション(以下765プロ)の物語から始まった『アイドルマスター』は、『アイドルマスター シンデレラガールズ』『アイドルマスター ミリオンライブ!』など複数のブランドに広がりながら、数多くの「プロデューサー」(=ファン)と出会い、彼らのさまざまな想いを乗せて成長を続け、昨年7月に15周年を迎えた。今回は、765プロのアイドルたちをタイトルに掲げた『MASTER ARTIST 4』シリーズの発売を機に、『アイドルマスター』の15年の歩みを振り返り、未来への期待がさらに高まるような特集をお届けしたいと考え、765プロのアイドルを演じるキャスト12人全員に、ロング・インタビューをさせてもらった。彼女たちの言葉から、『アイドルマスター』の「今までとこれから」を感じてほしい。

 第10回は、双海亜美&真美役の下田麻美に、昨年11月の「『MASTER ARTIST 4』双海亜美」のリリースタイミングに続いて、再び登場してもらった。彼女は、真美の『MASTER ARTIST 4』のレコーディングに、どのような想いで臨んだのだろうか。

(C)窪岡俊之 (C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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亜美は、無邪気なエンターテイナー。真美は小悪魔なエンターテイナー

――前回のインタビューの中で、「わたしにとって亜美/真美はすごい存在で。芸達者で、ザ・エンターテイナーだなって思ってる」という下田さんのお話が印象的でした。さらに詳しくお聞きしたいのですが、亜美と真美に○○なエンターテイナー、とキャッチフレーズをつけるとしたら、どんな言葉になりますか?

下田:亜美と真美を演じ始めた当初は、役作りのリクエストとして「ひとりがふたりに分裂したイメージ」とのことだったので、ほとんど演じ分けはしておらず、「おんなじのがふたりいるぞー!! なんたるやかましさ! でも、そんなふたりに振り回されて幸せ……!」と感じてもらえることを重視していました。それは今も変わらないのですが、たくさんのプロデューサーさんと月日を過ごしていく中で、こちらから発信した意図的な個性とは違う、各々の個性が成長していったように思います。特に今はミリシタ(アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ)もあるので、より深く個性が強調されたお話に触れることが多くなりましたよね。あえて言うなら何だろう……。亜美は、無邪気なエンターテイナー。真美は小悪魔なエンターテイナー、かな?? ふたりとも、ベースの性格は共通する部分がほとんどだと思うんですけど、亜美の方が思春期ギリギリ手前であり、計算なく突進していく子どもらしさがあるのに対して、真美の方が少し大人の入口に差し掛かってる危うさがあるように思います。

――昨年11月に亜美の『MA4』がリリースされましたが、発売前後に下田さん自身が感じていたことや、聴いてくれたプロデューサーさんのリアクションで印象的だったことを教えてください。

下田:なかなか直接皆さんから感想を聞ける機会がなかったもので、多くの方のお声を拾えてるわけではないんですけど、「元気が出る!」というお声はいくつか届きました。亜美のMA4は、全体を通してパワフルさが際立った1枚に仕上がったので、聴いてくださる方の心にストレートに届いて笑顔になってもらえていたら嬉しいです! また、亜美と真美はやはりツインズなので、真美の『MA4』を聴いていただいた上で、改めて亜美の個性を感じてそれぞれを楽しんでいただけたらと思っています。

――前回のインタビューでは、思い入れのある楽曲として“M@STERPIECE”を挙げていただきました。今回は、亜美と真美のソロでそれぞれ、特にお気に入りの楽曲――絞るのが難しいと思いますが、あえて1曲選ぶなら……になりますが、教えてください。

下田:はい、難しい質問ですね(笑)! ソロもあるけど、ふたり名義の曲もいっぱいありますし……。でも、あえて!ということであれば…亜美は『YOU往MY進!』でしょうか……! やっぱりこの曲は、ライブで何回か披露してきて思い出もたくさんある。サビでタオルをみんなと振り回したい!という意見を採用していただいて、それが実現できた瞬間は本当〜に気持ちよかった! 意外となかったんですよね、アイマスでタオル曲。曲が難しくて長いので体力勝負なところがあって、サビを踊りながら歌いきれるかって不安が発端でもあったんですけど(笑)。でも、結果的にみんなが一緒にタオルを回してくれたから、最後まで全力で亜美として駆け抜けられたんです。真美は……悩ましいんですけど、ここはあえて!『MA4』の『セクシータイフーン』で!! 今までの曲ももちろんそれぞれ個性的で愛着があるんですが、今回の『MA4』を通して、今までより一歩前進できた気がするんです。そのきっかけになったのがこの曲。私が表現したい真美の個性を爆発させられた1曲だと、自信を持っています!

(C)窪岡俊之 (C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

皆さん、私たちをまだまだ先の未来まで連れて行ってください!

――『MA4』収録の真美の新曲“セクシータイフーン”は、タイトル通り非常にインパクトのある楽曲でした。この曲の収録は、下田さんにとってどんな体験でしたか。

下田:レコーディング前に思い描いていたイメージ以上に辿り着けたというか、この曲が私を真美として導いてくれたというか、すごく気持ちのいいレコーディングでした。この曲は制作にあたって、私が歌いたい曲のイメージをすごく汲み取って下さった曲だったこともあり、すごく楽しみにしていたのと同時にプレッシャーもかなりありました。自己練習では、曲は完璧なのに自分の力量が追いついていないような気がして。でもレコーディング本番では、曲の魅力にすごく引っ張ってもらえました。皆さんにも届きますように!

――『MA4』の制作には、どのような意識をもって臨まれましたか。真美の「らしさ」を深く追求する方向なのか、新たな一面を見せる方向なのか、でアプローチも変わってくるかと思います。この1枚を通して、どんな真美を届けたいと考えていたか、を教えてください。

下田:『MA4』全体を通してのコンセプトが「変わるもの、変わらないもの」ということなので、やはりそこは強く意識しました。個人的に亜美の後に再びの収録だったのもあって、より前回より強くそのコンセプトを意識した部分はあります。特にカバーに関してはかなり悩んだのですが、”女々しくて”では、みんながイメージする「変わらない真美」をこってり表現することができたと思うし、”新宝島”に関しては、この曲を真美がどう歌うのか、レコーディングまで私もスタッフさんもイメージできなかった。だからこそ、今までにない真美の一面を表現できる可能性にかけたかったし、実際過去のどの曲でも見せてこなかった表情を盛り込んだ1曲に仕上がったと思います。カバー曲って既存のイメージがある分、聴き手も事前にどんな仕上がりになるか脳内で再生してみるじゃないですか。そこを越えたいし、崩したい。そして、今まで以上に真美を好きになってもらえたら嬉しいですよね。

――亜美のカバー曲の“MONSTER DANCE”には驚きましたが、真美のカバー曲“新宝島”も、意外性がありつつ面白い楽曲に仕上がっていて、いち聴き手として楽しかったです。“新宝島”のレコーディング時のエピソードを教えてください。

下田:ありがとうございます! この曲の収録が発表された時、ものすごい反響があったみたいで。発表時には既に収録は終えていましたが、反響の大きさの分、イメージと違った時にネガティブに受け止められることもあるのかな、と心配もあっただけに、そう言っていただけるのは嬉しいです。この曲って、一度聴いたら耳から離れない、癖になる魅力があるじゃないですか。特に「次と」「丁寧」を繰り返すところなんか、ずっと聴いていたいと思わせる中毒性がある。「この中毒性を真美として表現したい!」という意欲に駆られたわけですが、実際歌ってみると、全く表現できなくて驚きました。聴き手としては気持ち良いのに、歌い手になるとすごく難しい。なので、原曲を何回も聴いて研究したし、真美の声の中でどういう音色がマッチするかなと、何度も擦り合わせて収録に臨みました。それでも、レコーディング本番まで何が正解なのか確信が持てなくて不安もあったんですけど。いざ本番になったら、曲の流れにひたすら身を任せて、リラックスして歌うことができました。すごく心地のいいレコーディングだったと思います。

――今回の収録を通して改めて発見した真美のよいところ、好きだなって思った部分について教えてください。

下田:毎度セクシーセクシーと、耳にタコができるくらい言ってるのが真美で、それに対して、決して「セクシー」ではなく「せくしー」だよね!と、子どもに対してツッコんできたような気がするんですよね、今まで。いや、今も基本はそうなんですけど(笑)。でも今回の収録で、「あれ? ちゃんとセクシーなんじゃない?」って垣間見える箇所がけっこうあって。それは私から見たら、なので、皆さんがどう受け止めるかは分からないんですけど、「けっこうドキッとさせてくるぞこの女子……!!」と、あなどれない部分を感じさせてくれましたね。やっぱり「変わるもの」というコンセプトのおかげかなと。

――15周年を経て、20周年へと向かう『アイドルマスター』の一員として、抱負をお願いします!

下田:5周年の次の10周年は長く感じたけど、15周年を迎えたばかりの今、もう20周年の話ですか(笑)!不思議ですねぇ、20周年ってもうすぐだねって気持ちになります……。今は長引くコロナ禍で、数年先の未来も不安があるけど、やっぱり20周年を皆様の応援の元に迎えられる作品って、本当に奇跡だと思っているので、その節目は盛大にやりたいですよね! 出来ればドームのステージに立ちたいです! いつまでも、何歳になっても、大きな目標を声を大にして言っていけるのがアイマスだと思ってますからね! 皆さん、しっかりついてきてください!……と言いたいところですが、逆かもしれませんね。皆さん、私たちをまだまだ先の未来まで連れて行ってください!


取材・文=清水大輔