祝・アニメ化!『魔法科高校の優等生』司波深雪役 早見沙織さんインタビュー

アニメ

公開日:2021/7/6

司波深雪役 早見沙織さん

早見沙織さん

 シリーズ累計2000万部突破、快進撃を続ける『魔法科高校の劣等生』。そのスピンオフコミック『魔法科高校の優等生』が、テレビアニメに! 才色兼備の優等生・司波深雪を主役に、新たな青春スクールマギクスが開幕する──!! 深雪役の早見沙織さんに、作品の魅力を語っていただきました。

(イラスト=森 夕 取材・文=野本由起 撮影=山口宏之)

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お兄様がいるから今の深雪がいる

❅― 2014年に『魔法科高校の劣等生』(以下『劣等生』)がアニメ化されてから、すでに7年経ちます。長年にわたって司波深雪を演じていますが、あらためて彼女の印象をお聞かせください。

早見 誰もが振り返るような存在であり、能力もとても高い完璧な女の子です。時折お兄様のことで暴走するところも含めて、五角形のグラフがきれいに整ったパーフェクトな存在だと思います。日常会話では令嬢らしい気品ある柔らかな物腰ですが、戦いの中ではちょっと怖いなと思うくらい非情な一面をあらわにすることもあって。そういった印象は、今に至るまでまったくブレないですね。お兄様である達也もそうですが、このふたりは作品の中で支柱のようにずっとまっすぐ立ち続けています。

❅― 収録時に、心がけていることはありますか?

早見 私はその時々のテンションが音に乗ることも多いので、自分も深雪のように心が整っていないといけなくて(笑)。背筋を伸ばすような思いで、ちゃんと心を整えて収録に臨むようにしています。

『魔法科高校の優等生』

❅― 深雪を演じるうえで、大切にしているのはどんな点でしょう。

早見 やっぱりお兄様の存在でしょうか。何をしている時でも、深雪の頭の中を占めているのはお兄様。初期はあまり意識していませんでしたが、時が経つほど「お兄様がいるからこそ、深雪の人格がどんどん形作られていくんだな」と感じています。お兄様がいるから今の自分があるという点は、常に意識していますね。

❅― 深雪のお兄様愛には特別なものがありますよね。

早見 そうですね。尊敬の行きつく先というか、ここまでの敬愛ぶりはなかなかないことだと思います。もちろん、過去にそれだけのことがあったから、ここまでの思いを抱くようになったわけですが。すべてを超越したお兄様愛ですよね。

❅― 早見さんにはそういう存在はいますか?

早見 3次元ではなかなかいないですね(笑)。アニメのキャラクターをすごく好きになるような、そういう感覚に近いものがあるかもしれません。常にそのキャラクターのことを考えて、それこそ自分がその日着るお洋服もそれを基準に決めたり。とはいえ、深雪の一途さ、敬愛の深さはすごいなと思いながら演じています。

『魔法科高校の優等生』
何をおいてもお兄様が大事。『優等生』は深雪視点になったことで、彼女のお兄様愛がさらに際立っている。

『劣等生』をもう一度観つつも新しい『優等生』を作りたい

❅― 『劣等生』を経て、このたび『魔法科高校の優等生』(以下『優等生』)がアニメ化されます。第一報を聞いた時の感想はいかがでしたか?

早見 びっくりしました! 『優等生』は、『劣等生』と同じストーリーを深雪視点で描く〝裏面〟のようなお話ですよね。「2014年に『劣等生』のアニメで描いたことを、2021年の『優等生』でまったく同じように描いていくのかな。どんな風に進んでいくのかな」とワクワクしました。

❅― 7年前と同じ気持ち、同じテンションで演じることになるのでしょうか。

早見 同じ出来事の別側面を描いていますが、7年経っていますし、これまでのテレビアニメや劇場版を踏まえてもう一度原点に帰るという気持ちでした。どう頑張っても当時と同じ音をトレースすることはできませんし、今の私が感じるイメージを大切にしています。とはいえ、やっぱりアフレコの前には『劣等生』の「入学編」を観直しますね。実は『優等生』と『劣等生』では、同じシーンでもセリフ回しが違っているところがあるんです。『優等生』のマンガ自体が言葉を変えているので、音響監督と相談して変えるところは変えたり、『優等生』ならではの味わいを残したりしてから収録に臨んでいます。ディレクションも『優等生』の監督の方針があるため、『劣等生』を踏襲しつつも新しいものを作ろうという心意気です。

❅― 7年前の『劣等生』を観返して、改めて気づいたことはありますか?

早見 けっこう自由にやっていますね(笑)。その時々で感じたものをそのまま出しているので、振り幅も大きくて。逆に、ここ1、2年の私は少し演じ方を狭めていたのかなという思いも。原点に立ち返り、もっと肩の力を抜いて自由にやるのもアリだなと感じました。

❅― 過去の作品を観返すというのは、声優ならではの面白い作業ですね。

早見 すごく不思議な作業ですね。ただ、あまり過去の『劣等生』を意識しすぎると「ああしなきゃ」「こうしなきゃ」と過去の自分で自分を縛ってしまうことになるので、難しい面もあるんですよね。あらためて新しい作品を作るんだという気持ちは忘れないようにしています。

深雪の心情が明かされ、より親しみやすい存在に

❅― 『劣等生』と『優等生』では、作品のテイストも違います。その点について、早見さんはどう感じますか?

早見『優等生』では、クラスメイトのほのかと雫が登場するシーンが多いので、ふんわりした空気感ですよね。コミカルなシーンも多く、より親しみやすい作品になったように感じます。『劣等生』の序盤は、世界観などの説明が多くストーリーも重厚だったので、「同じ物語でも、視点や描き方が違うとここまで変わるんだ」という発見もありました。

『魔法科高校の優等生』
深雪をひと目見た時から、彼女にあこがれる光井ほのか(画面右)。『優等生』では、彼女や親友・北山雫(左)が存在感を発揮する。

❅― 先ほど「『劣等生』と『優等生』は表と裏」というお話がありましたが、『優等生』では『劣等生』では描かれなかった深雪の心情も丁寧に描かれています。

早見 個人的には、そこがすごく面白くて。今回は深雪のモノローグがたくさん出てくるんですね。台本の中でもセリフを言ったらすぐモノローグになって、「あ、このセリフを発していた時、深雪はこう考えているんだ」と知ることができて面白かったです。

❅― 内面が語られることで、深雪の印象も変わりましたか?

早見 皆さんがイメージしている深雪のキャラクター像から外れることはありませんが、意外にコミカルですね。お兄様と自宅で過ごしている時にお洋服をチェンジしようとするのですが、なかなかいい服が決まらなくてワーッとなるシーンは、すごく親しみが湧きました(笑)。そういった深雪のかわいらしさ、親しみやすさをアニメで表現できるのはすごく楽しかったです。

❅― 深雪のことを、より身近に感じられるようになった気がします。

早見 戦いの中で感情をコントロールできなかった時に、ちょっとウルッとしてしまったり、落ち込んでしまったりするモノローグもあります。深雪の新たな一面も感じていただけるのではないでしょうか。

❅― コミカルなシーンでは、深雪が妄想を膨らませるのも面白かったです。

早見 お兄様関連のことになると、深雪は突拍子もない想像を膨らませるんですよね。『優等生』では、その妄想がしっかり映像として描かれるのも楽しいんです。お兄様が妄想の中で話すシーンでは、中村(悠一/司波達也役)さんが普段のお兄様より5割増しで面白く演じてくださって(笑)。それに合わせて、深雪もちょっと遊んで演じています。

『魔法科高校の優等生』
『優等生』では、深雪の内面を描くことで、高嶺の花だった彼女が身近に感じられるようになっている。

『優等生』はシリーズのベストな入り口

❅― 「魔法科」シリーズは、長年にわたって多くのファンに愛され続けている作品です。その魅力について、早見さんはどう感じていますか?

早見 この作品は人間ドラマも深く描かれていますし、物語の設定や世界観も細やかに作り込まれています。その両方を楽しめるのがとても面白いですし、だからこそ多くの方々のアンテナに引っかかったのではないかと思います。小説やマンガ、アニメの楽しみ方って、人それぞれですよね。細かい設定が好きな方もいれば、キャラクターの人間的魅力に着目して楽しむ方もいて。私の友達にいたっては、「さすがです、お兄様」という一点を楽しんでいるそうです(笑)。設定はそこまで深く理解していないけれど、とにかく「お兄様、カッコいい! 強い!」というところを楽しんでスカッとしているのだとか(笑)。多面的な楽しみ方ができるのが、「魔法科」シリーズの魅力ですね。

❅― 早見さんご自身は、どのような側面を楽しんでいますか?

早見 私は人間ドラマを楽しんでいますね。難しい用語は、全然覚えられないので(笑)。『劣等生』も、最初の頃は設定が難しくて「あれ、この用語って何だっけ」と振り返りながら台本を読んでいました。でも、お兄様の人となりや、深雪との関係性がわかってくると、裏ではこういう思惑があって……とドラマが広がっていき、面白さがどんどん増していきました。

❅― では、最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

早見『劣等生』のアニメは、7年前にスタートしました。もしかしたら、タイトルは知っているけれどこれまで作品に触れてこなかった方、どのタイミングで足を踏み入れたらいいのかわからなかったという方もいらっしゃるかもしれません。そういう方にとって、『優等生』はベストな入り口だと思います。新作ではありますが、「魔法科」シリーズの世界観を最初からアニメで味わうことができるので、ぜひ初めて作品に触れる方にもご覧になっていただきたいと思います。これまでも応援してくださっている方々には、『優等生』はもちろん、すでに制作が発表されている『魔法科高校の劣等生 追憶編』などを通して、さらに深くシリーズを楽しんでいただきたいですね。まだまだ「魔法科」シリーズは止まらないので、私も皆さんとともに歩んでいけたらと思います。

ヘアメイク:大庭由美恵

はやみ・さおり●2007年、声優デビュー。アニメ『鬼滅の刃』(胡蝶しのぶ役)、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(雪ノ下雪乃役)、『アイドルマスター シンデレラガールズ』(高垣楓役)など出演作多数。15年からはアーティストとして音楽活動にも力を入れている。

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