相羽あいな「何一つ見つからなかった武器を周りの人が教えてくれた」【声優図鑑】

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更新日:2021/7/5

相羽あいな

 キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチニュースの恒例企画『声優図鑑』。第263回目に登場するのは、元プロレスラーという華やかな経歴を持ち、舞台経験を経て、最近では“圧が強い声優”として唯一無二の立ち位置を確立している相羽あいなさん。じつは子どもの頃から声優に憧れ、その想いが強いからこそ「自分には武器がない」とずっと悩んでいたそう。『ヴァンガードG NEXT』や『けものフレンズ』での経験を経て、『BanG Dream!』湊友希那役としてRoseliaのボーカルに。今では、かけがえのない武器も手に入れたとか。

「武器がない」ってずっと言い続けてきました

——さまざまな経歴をお持ちですが、もともとは声優の専門学校に通っていたんですね。いつ頃から声優に興味を持っていたんですか?

相羽:2歳くらいの時、最初は歌手に憧れていました。母親が米米CLUBさんのファンで、私自身もエレクトーンを習っていたし、歌もずっと歌っていて。でも友だちに話したら、「歌手になんてなれないよ」って言われて、子ども心にすごく傷つきました。それで、歌手になる夢を封印してたんです。同時に、漫画やアニメが好きになって、お年玉でフィギュアを買ったり、UFOキャッチャーでグッズを集めたりして。ポケモンのカードを集めている時に、松本梨香さんや田中真弓さんの存在を知って、声優の職業を意識しました。

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——歌手への憧れが、だんだん声優に向かっていったと。

相羽:はい。小学校の高学年くらいの時、戸田恵子さんが出ている『ショムニ』を観ていたら、母が「アンパンマンにも出てる声優さんだよ。」ってポロっと言ったのが頭に焼き付いて。先輩と一緒に行ったカラオケで、エヴァンゲリオンの歌にシンジくんやキャラクターのセリフを挟んでいたら、「面白いよ。チャレンジしたら?やらずに後悔したらもったいないよ」と言われて、「ずっと声優になりたかったのに逃げていたのかもしれない」と。芝居もダンスも何もできないけど、ただアニメが好きというパッションだけで専門学校に入りました。

——プロレスラーや劇団員を経験したのは、声優になる前ですね。

相羽:ラジオや舞台のオーディションを受けても全部ご縁がなくて。ただ、イベント事があると、だいたいいい役をもらえていたんです。すぐに先生に聞いてしまうほうだったので、「なぜこの役に選んで頂けたんですか?」と聞いたら、「華があるから」と言われて。そうか、そういう理由で選ばれることがあるなら、それが私の武器になるかもしれないなと。

一度、81プロデュースさんの研究生として上京したんですけど、卒業試験に合格できなくて、悔しくて、人生うまくいかないなって。26歳までに何もなければ大阪に帰ろうと決めたんです。それまでにできることを考えた時に、声優の舞台を観る機会がよくあったので、舞台なら自分の目標とするエンタテイナーになれるかもしれないし、芝居心を忘れずに演技力を上げることができるかもしれないと。舞台をやろう!と思いました。

——そこから舞台へ。

相羽:はい。まずステージを踏まないと成長できないってことで、一緒に上京してきた子たちと劇団を組みました。元々プロレスを観るのが好きで、劇団の関係者の方にもプロレスが好きな方がいたので話が盛り上がって、プロレスをやってみないかとお誘いを頂きました。実際に女子プロの試合を観たら、感情のままに体を動かして相手と戦う姿がめちゃくちゃかっこよくて、私もリングに立ちたいと思ったんです。

——とんとん拍子に。でもプロレスの経験はゼロだったんですよね。

相羽:なので大変でした。泣きたくないのに自然と涙が出るまでスクワットしたこともあるんですよ。トレーニングしないと命に関わるから。もともとプロレスやダンスをやっていたような、武器を持ってる人が周りにはいっぱいいたし、華なんてみんなあるし、私の敵はまず、武器を何も持っていない自分自身だったんです。できることといえば、誰よりもプロレスが好きだから、いろんな人のプロレスを観て自分ができることを研究したりとか、体が小さいほうだからご飯をたくさん食べたりとか。絶望の中で、でもあきらめるのはいやで、がむしゃらでした。

——とても活躍されているので、そんなにコンプレックスをお持ちだったとは意外でした。

相羽:「武器がない」ってずっと言い続けて生きてきました。親に「なんでもっといろいろやらせてくれなかったの?」ってぶつけてしまったこともあるくらい。エレクトーンを習わせてもらったのに、結局プロになれるまで極められなかったのは自分のせいなんですけど。どちらかというとネガティブなほうですね。ただネガティブをポジティブに変えるのは得意です。自分には武器がないと思った時に、何ができるかなと考えるのはうまいですね。きっと。

——そんながむしゃらな中で、プロレスラーから声優に転向を。

相羽:偶然ブシロードの会長の木谷(高明)さんにお会いして、歌を歌う機会をいただきました。『残酷な天使のテーゼ』と『愛・おぼえていますか』を歌ったんですけど、いい声してますねと。プロレスも観にきてくださって。バンド企画があるんだけど、そのボーカルの候補に入れてもいいですかと言われたんです。楽器を持たないボーカルで、体を動かすこともあるからパワーがある子がいいし、見た目もぴったりだと思うと言われて。

できなくて悔しいから歌っていました

——そのバンドというのが『BanG Dream!』のRoseliaだったと。

相羽:声優の学校まで行きましたけど、自分の声そのものが武器になるとは思ってなかったんです。歌も、好きだけどうまいわけではないし。でも、上松範康さんの前で歌わせていただいた時に「歌声に芯があっていい」と合格をいただいて。プロレスと両立することも考えましたけど、プロレスは喉を壊す可能性もあるし、悩みに悩みましたが、声優という夢を目指して東京に来たのでその道を選びました。

——声優デビューしてからは『カードファイト!! ヴァンガードG NEXT / Z』(安城トコハ役)、『けものフレンズ』(イワトビペンギン役)など、続々と出演されています。

相羽:ありがたいことに、最初からいろいろお仕事させていただいて。ヴァンガードは初めてのアフレコでめちゃくちゃ緊張しましたが、先輩のみなさんの支えがあったから現場に行くのが楽しかったです。初めてのソロシングルでは、私の好きな曲をたくさん作っていらっしゃる畑亜貴さんや太田雅友さんに手がけていただいて、私はなんていう世界にいるんだろうって…。

——そのあたりから、Roseliaとしての活動も始まっていきますね。

相羽:友希那役は私にはない引き出しだったんですよ。正直ビジュアルを見た時も私とはだいぶ違うと感じましたし、普段は生粋の大阪人だからクールでもないし。でも周りからはぴったりだと言われて。

——演じてみてから当てはまるところは見つかりましたか?

相羽:喋り方や佇まいは違うと思いますけど、やると決めたらやる!っていう男気みたいな姿勢は似てるのかな。でも友希那の魅力はなんといってもプロも認める歌声。それはやっぱり素人の私からするとプレッシャーでした。そのギャップをどう埋めようかと。

——今はもう、友希那の歌声そのものになっていると思います。

相羽:ありがとうございます。ハイトーンのロングボイスを私の武器にしてくれたのは上松さんです。レコーディングをしているうちに、どんどん歌が高音になってきて。それは自信につながっています。そもそも昔から歌っていた歌も高音が多かったんです。浜崎あゆみさんの『Boys & Girls』とか。高音が出ないと悔しいから、声が枯れるまで歌うんですよ。カラオケボックスに通って、同じ箇所の同じフレーズだけを何時間も歌って、声が枯れる頃に高音に慣れてくるっていう。そのやり方が合っているかは分かりませんが。

——それで声域が広がっていたということですか?

相羽:できなくて悔しいから歌っていました。独学ですけど。Roseliaってあまりファルセット(裏声)を使わないっていうのがあって。もちろん気持ちでファルセットにすることもありますが、使わない方がいいところはファルセットを使わずいきたいという気持ちがあります。そういう負けん気の強さは小さい時から変わらないです(笑)。

やっと見つかったいちばんの武器は、人との出会い

——Roseliaのメンバーと初めて会った頃はどんな印象でしたか?

相羽:私がいちばん経験が浅かったので…自分がボーカルでいいのかっていう気持ちは正直ありました。でもそんなこと言ってたら、私を選んでくれた方々に申し訳ないなと。不安なことたくさんありましたが、メンバーの皆さんが本当にいい方ばかりで。「大変だと思うけどがんばろうね」って。櫻川めぐさんは“はじめまして”じゃなかったから、その存在も大きかったです。

——今年はRoseliaの成長を描いた物語が映画にもなって。相羽さん自身は、最初に持っていた自信のなさは払拭されてきましたか?

相羽:初めての舞台はPoppin’Partyさんのライブのサプライズ登場だったし、物を投げられたらどうしようってシミュレーションしてたくらい怖くて。友希那の絶対的存在感があるなかで、皆さんは私に納得してくれるんだろうかと不安はありましたが、それは私の不安であって、友希那なら堂々とステージに立つだろうと思ったんです。最近はもうステージ上では覚悟を決めて、堂々とできるようになってきたと思います。正直、プロレスラーの頃の精神が役に立っていますね。どんなに相手が怖くても、リングに立ったらそれを表に出すことはできなかったので。

——これまでずっと「自分の武器がない」ことに悩んできたと。その後、武器は見つかりましたか?

相羽:見つかりました。いちばんの武器は、人との出会いですね。私は自分の武器に何一つ気づくことができなかったけど、木谷さんが歌声の可能性を認めてくれたし、上松さんがハイトーンの歌声を見つけてくれたから。それに、どのコンテンツのグループも仲がいいんです。みんな「歳をとってからも一緒にいたいね」って話せるくらいの関係で。スタッフさんも愛を持って接してくださるし。そういう方々にお仕事で出会える確率って、高くないと思うんですよね。

会いたいって言ってくださる方に会いに行きたい

——忙しい毎日だと思いますが、プライベートで最近ネットショッピングしたものはありますか?

相羽:めっちゃありますよ! 最近は競馬のグッズを買いました。コントレイルのぬいぐるみとか。大会で優勝した馬は記念品が出たりするので、ぬいぐるみはまず買いますね。競馬好きはもう15年くらい続いてますね。ディープインパクトから入っているから。

——寝る前に必ずしてしまうナイトルーティーンは?

相羽:疲れていなければ、筋トレとストレッチ。最近は美容にもこだわってます。まずはお風呂に浸かりながらカッサで足のむくみを取って、そのまま1時間くらいアニメとかドラマを観ちゃいます。お風呂上がりは美顔器とヘッドスパ、パックをするから、お風呂に入ってから髪を乾かすまで2時間くらい。毎日…ではないですね。4分の1くらいは寝落ちしてるので(笑)。

——お風呂の中では何を観ることが多いんですか?

相羽:刑事ものとか推理もののドラマが好きなんですよ。有名どころだと『科捜研の女』とか『相棒』。最近は『イチケイのカラス』とか『桜の塔』もチェックしてたし。浅見光彦シリーズとか、赤い霊柩車シリーズとかも好き。でもすぐ忘れちゃうんですよ。なんか観たことあるな〜と思ったら、前観たことあった!みたいなことも多いです(笑)。

——最近のささいな悩みがあったら教えてください!

相羽:地方に行くと太るんですよ。胃袋がブラックホールになるらしくて、北海道に2日間行った時、5キロ太りました。お寿司、ラーメン、ソフトクリーム、シュークリーム、チーズケーキ、ジンギスカン…お腹いっぱいと思っても、買ってしまったら食べちゃいます。もともと食べるのが好きなので、そこでしか食べられないものを見つけると、胃袋が「いいよ」「お腹いっぱいとかないよ」ってなるんですよね。危険です(笑)。

——最後に、記事を読んでいるみなさんにメッセージをお願いします。

相羽:本当にありがたいことに、会いたいって言ってくださる方がいらっしゃるので、そういってくれる人たちのところに会いに行きたいです。自分が大阪出身で、好きなアーティストさんが大阪まで来てくれた時、本当にうれしかったから。

延期になっていた1stライブをようやく開催できましたけど、そこで歌って踊った時に、もしかしたら私の武器は、すべてで表現することなのかもしれないって思いました。ファッションや髪型、ダンス、表情もそうだし、一分一秒同じステージってないから、いろいろ表現を変えながら、こういう世界もあるんだって、その時にしか届けられないものを届けたい。小さい頃に観た米米CLUBさんのステージのドキドキがやっぱり忘れられなくて、その時の衝撃を私も届けることができたらいいなって思います。

皆さんの応援のありがたさがコロナ禍でより響いて、誰かひとりでも支えるきっかけになればと思って、最近はブログも始めたんですけど、やっぱりすごいなって思います。感想があるとうれしいし、リプでもDMでも、文字で伝えるのって時間もかかるし大変なことだと思うんですよね。なので、そこから感じたものを私もステージの上でそのまま返していきたい。ありがたさが高まっている分、私の圧もさらに強くなっているかもしれませんが(笑)、これからもついてきていただけたらうれしいです。

——相羽さん、ありがとうございました!

【声優図鑑】相羽あいなさんのコメント動画【ダ・ヴィンチニュース】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

相羽あいな

相羽あいな(あいば・あいな) 響所属

相羽あいな(あいば・あいな)Twitter

◆撮影協力

撮影=山本哲也、取材・文=麻布たぬ、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト