霊が視える主人公と“憑かれてる”イケメン上司のラブがたまらない! 単行本第1巻発売記念で著者・つきのおまめさん初インタビュー!

マンガ

公開日:2021/7/23

ここからはオトナの時間です。
『ここからはオトナの時間です。』(つきのおまめ/集英社)

 先行連載中のコミックシーモアで、続巻が配信されるたびに大反響を巻き起こしているマンガ『ここからはオトナの時間です。』(つきのおまめ/電子版はコミディアから発売)が、ついに集英社からコミックス化! 本作は、霊が視える体質のOL・佐々木みかんと、霊に憑かれているみかんの上司・亜久津和音という不器用な男女ふたりが、ひょんなことから“ベッドをともに”することになり、じれったく、ときにはセクシーな展開も交え、心の距離を縮めていく物語だ。2021年7月21日、これまでの配信をまとめた単行本が発売されることを記念して、著者のつきのおまめさんにお話をうかがった。

(取材・文=三田ゆき)

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ユニークなキャラクター設定は“個性”を描くため

ここからはオトナの時間です。

ここからはオトナの時間です。

──本作をお描きになるきっかけは、どういったことでしたか?

つきのおまめさん(以下、つきの) 私、一重まぶたのキャラクターが好きなんです。Twitterに「こういうキャラが好きなんだよね」という落書きをいくつか載せたことがあるのですが、その中に、『ここオト。』に出てくる和音とみかんも描いていたんです。それからしばらく経って、ちょうど本作の担当さんから「短編を描きませんか」というお誘いをいただいたので、「それなら、あのとき落書きで描いたキャラクターが出てくるお話を描きたいな」と思って、描きはじめたのがきっかけですね。

──『ここオト。』は、最初は短編になるはずのお話だったのですね。

つきの そうですね。一応、プロットまでは書いて担当さんに提出したのですが、キャラクターを作っているうちに、短編のキャラクターではないなと思えてきて。担当さんにプロットをお送りするときに、「よかったら、ヒロインに霊が視えるという設定を足して連載にできませんか?」と図々しく申し出たんです(笑)。そうしたら担当さんも、私(つきのさん)がいいならいいよ、と言ってくださって。

──『ここオト。』は、ヒロインのみかんとヒーローの和音がじれったく近づいていく“じれキュン”な恋愛面と、セクシーな展開のどちらも楽しめる作品ですが、こだわって描かれている点や、萌えポイントなどはありますか。

つきの 毎回いっぱいいっぱいで描いているので、こだわりを持てるほどの余裕はないのですが……(笑)。でも、「なるべく頭の中に浮かんでいるシーンをちゃんと絵に落とそう」という、こだわりというより、そうしなくちゃいけないなと思って描いているところはありますね。

 キャラクターを生み出したのは私ですが、生み出したあとは、キャラクターのイメージも含めて私だけのものではないと思っているので、そのキャラクターがしない行動や、そのキャラクターに対してみなさんが持ってくださっているイメージが崩れる行動は描かないように、気をつけています。萌えポイントみたいなものに関しても、私はなるべく自分の好みが反映されないように描きますね。そのキャラクターが動いたままを描いて、私の都合で動かさないように心がけています。

──みかんの「霊が視える」体質や、「霊が憑いている」和音のキャラクターなど、普通のラブストーリーには見られないユニークなキャラクター設定は、どのように作られたのですか。

つきの なんだろう……思いつき? ですかね(笑) 私、ストーリーを描くことにあまり自信がないんです。自分のことを、すごいお話が描ける人だとは思いません。でも、たとえば「みんなで桃太郎のお話を書いてください」と言われたとすると、それぞれ同じ『桃太郎』を書いているつもりでも、違うお話ができあがるのではないかなと思うんです。もし犬好きな私が書いたら、お供の動物の中でも犬だけにきびだんごをたくさんあげちゃうので、犬がまるまる太っていて戦えない、みたいなお話になりそう(笑)。

 それぞれひいきにする動物がいたり、鬼が女の子だったり、そんなふうにあらわれてくるものが個性だと私は考えていて、そういった個性を描くことならば、ストーリーを描くのに自信がない私にもできると思うんです。そういう感覚で、キャラクターに肉づけをしていくことが好きなのかもしれませんね。だから、「霊が視える」「霊が憑く」などの設定が生まれたのかなと思います。

──前作の『保護者失格。一線を越えた夜』(大都社)でも、叔父と姪の恋愛をお描きになっていらっしゃいましたね。今回も、主人公のみかんから見て、和音は「年上の男性」ですが……。

つきの 年上が好きだというよりも、年齢差ものが好きなんですよ。もともとは『保護者失格。』も兄と妹の設定で描いていたのですが、配信会社の方から「兄妹ものは流行っていないから、おじさんにしない?」とのお話があって、それなら叔父と姪にしようと。『保護者失格。』のイメージがあるから、私、おじさん描きだと思われているかもしれませんね(笑)。年下ももちろん描きますよ。

 年齢差もののいいところは、歳の差があまりない恋愛なら、簡単にクリアできるだろうなという悩みを抱えなくてはいけない点。悩んでいるキャラクターって、人間らしくていいなと思うんですよね。でも『ここオト。』は、ライトな作品だと思って描いているので、そこまで悩むキャラクターは出てこないはずです。

海外からも反響が! 新しい広がりを見せた『ここオト。』

ここからはオトナの時間です。

──電子書籍版を手がけられたコミディアの担当編集者さんにもおうかがいしたいのですが、本作が配信されているコミックレーベル「カンパネッラ」は、社会問題から性事情まで取り揃えた、オトナ男女の好奇心を満たす超エンタメマンガレーベルだそうですね。つきのさんに執筆を依頼されたポイントはなんだったのでしょう?

担当編集者 おまめ先生とは、ずっと一緒にお仕事をしたいと思っていたんです。ずっとお忙しい状態が続いていたようですが、ようやく短編をきっかけに、連載でもご一緒できるかなと思ったときに、「作品を世に出すならここだな」というタイミングが訪れまして。「カンパネッラ」というレーベルから配信することにこだわったというよりも、おまめ先生の新しい作品を世に送り出す場所として、いちばんいろいろな方に読んでもらえるだろうなと考えて、今回の形になりました。

「カンパネッラ」は、読者さんの興味を引けるおもしろいものなら、ジャンルなどにこだわらずに配信しています。「ふだんは特定のジャンルしか読まない」という読者さんにも、読んでもらえる機会があるのではないかと期待しています。

──連載開始後、読者さんの反応はいかがでしたか?

つきの 以前から私の作品を読んでくださっている方ももちろん読んでくださっているようですし、新しい読者さんにも声をかけていただけることがすごく増えたんですよ! ありがたいことですね。

担当編集者 すごい反響ですよね。思った以上のリアクションがあって、続巻を配信するたびに毎回驚いています。海外の読者さんなど、私たちの想定した以上の読者さんに届いているらしく、その読者さんからまた新しい反応がいただけることがうれしいです。

──単行本の第1巻には、描き下ろしが収録されるそうですが……?

つきの 描き下ろしは、イラストと、Twitterで読者さんに質問を募って作ったみかんと和音のプロフィール、短めのマンガが3本です。マンガは、ちょっとしたこぼれ話のような内容で、1巻の先を読んでくださっている方も、1巻から読みはじめてくださった方も、どちらも楽しめる内容になっていると思います。

──今回は、声優の阿澄佳奈さん、前野智昭さんが、それぞれみかん役、和音役を演じた作品PVも制作されたそうですね。

つきの PVは初めて作っていただきました! 声がついているって、本当にすごいことですよね。マンガで声を描くことは不可能なので、読者のみなさんも妄想で補ってくださっていたところだと思うのですが、それが今後、「みかんはこういう声で、和音はこういう声だよね」という共通認識を持って読めるようになりました。私も、みかんや和音の声を想像しながら描けますし、世界が広がった感じがしてありがたいですね。

──みかん役の阿澄佳奈さん、和音役の前野智昭さんの声の印象はいかがでしたか?

つきの 和音役はぜひ前野さんにお願いしたいなと思っていたので、本当に想像どおりでしたし、想像以上の和音を演じてくださいました。みかん役の阿澄さんは、みかんがお酒を飲んで言うセリフがめちゃくちゃかわいいんですよ! 私が想像していた以上にかわいくて、「これは和音も放ってはおかないよな」って(笑)。

読書中だけでも、現実を忘れられるマンガを

ここからはオトナの時間です。

──つきのさんの創作全般についてもおうかがいしてみたいのですが、マンガやイラストを描かれるようになったきっかけは?

つきの 子どものころから、マンガやアニメをよく見ていました。あるとき、『りぼん』を読んでいると、最後のほうに「マンガ賞のお知らせ」みたいなものが載っていて。「マンガを描く仕事があるんだ。ここに応募すれば、りぼんで描けるんだ」と、マンガ家を目指したのがきっかけですね。

──ストーリーはもちろん、つきのさんの綺麗な絵のファンも多いと思いますが、魅力的な絵を描くために心がけていらっしゃることはありますか?

つきの 毎回すごく悩みながら描いているので、「これに気をつけている」と言えるほどのことはないのですが……今描いた絵よりも1mmでもいいから、次に描く絵はもっといい絵が描けるようにしたいなと思っています。それを積み上げていくしかないんですよね。

 絵が上手い人はたくさんいますが、そういう人たちは、描いていて「好きだ」と思えるところが多いのだろうと思います。「絵を描く」って、好きな部分をつなげていく作業だと思うんですよ。手を描くのが好き、洋服を描くのが好き、背景を描くのが好き、って。私は手を描くのが好きなのですが、一部分だけではつながっていく絵にならないので、まだまだ「好き」が足りないなと思います。

 あっ、でも、「ここいいですね」と褒めてもらえたら、「今度からもうちょっと気持ちをしっかり入れて描こう」と思いますよ!(笑) 仕事の気分転換にも絵を描くくらい、ずっと描いています。

──創作のアイデアは、どんなときに湧いてきますか?

つきの 常にマンガのことを考えているからだと思うのですが、キャラクターやお話は、お風呂に入っているときなどに、パッと思いつきます。先日、アンソロジーに短編を載せてもらったのですが(『悪い男に抱かれたら…快楽のワナから逃れられない』(オトメチカ出版))、その短編のアイデアは本当にそんな感じで思い浮かびました。あわててお風呂場でメモを取って、担当さんに「描きたい短編があるんですけど、どこかにねじ込めませんか?」って連絡しましたね(笑)。

──インプットはどうされていますか?

つきの 映画や音楽が好きですね。音楽は、最近では藤井風さんがいいなと思います。映画もいろいろ見ますよ。古い映画、白黒の映画も好きですね。ほかにも、『美少女戦士セーラームーン』などに参加されているアニメーターの伊藤郁子さんや、日本画家の池永康晟さんにも影響を受けていると思います。その人にしか描けない絵を描かれている方には、やっぱり憧れますね。見た瞬間に「誰々さんの絵だ」とわかる絵はなかなか確立できないので、そういう絵を描かれる方はすごいなって、嫉妬しています(笑)。

──今後、どのような作品を描いていきたいと思われますか。

つきの 読んでくださっている瞬間は現実を忘れて、キュンとしたり楽しい気持ちになったりできるマンガが描けたらいいなと思います。これまでもずっとそういう気持ちで描いてきましたし、『ここオト。』も、和音みたいに疲れている人に読んでいただけるとうれしいですね。現実であったいやなことを、読んでいるあいだだけでも忘れてもらえるマンガになっていればいいなと思います。

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『ここからはオトナの時間です。』公式サイトhttps://cocooto.com/