広末涼子「テレザもサビナも、どちらも自分のスタイルがあって時代がどう変化してもブレない。素敵だと思いました」

あの人と本の話 and more

更新日:2013/12/19

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『鍵泥棒のメソッド』で、堺雅人さん、香川照之さんとともに見事な演技を見せている広末涼子さん。本誌インタビューでは、10代の頃に初めて読んだ『存在の耐えられない軽さ』にいまも変わらず感じる魅力を語ってもらった。

映画『鍵泥棒のメソッド』のファーストシーンは雑誌編集部。広末さん演じる編集長の香苗が部員たちに、この日までに結婚する(相手はまだいない)と宣言し、そのスケジュールを発表するところから始まる。そこにはいままでに見たことがない広末さんがいた。

「映画が始まってすぐに自分の机の上を
ハンディ掃除機でガーっと掃除するのですが、
あのシーンだけで香苗が
どんなキャラクターかがわかりますよね。
内田監督の頭の中で画が見えていらっしゃったので、
イメージしたお芝居を完璧にやるという
スタイルで演出されていました。
共演の堺さん、香川さんとも
こういう現場は珍しいね、
面白いねって話していたんです。
監督のイメージに合わせていくことで、
いままで出したことがなかった自分を
出せたような気がします」

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広末さんが、今回お薦めしてくれた本はミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』。モテ男のトマーシュと、一途な女性のテレザ、奔放な女性画家・サビナの3人の運命が、1960年代の「プラハの春」を背景に描かれる恋愛小説だ。

「この小説を初めて読んだ10代の頃、
少女マンガのような甘い恋愛ものが苦手だったんです。
くすぐったくて恥ずかしくて。
だから『存在の耐えられない軽さ』のような
大人の恋愛模様にあこがれました。
テレザもサビナも、どちらも自分のスタイルがあって、
時代がどう変化してもブレない。
素敵だと思いました」

広末さんはいまでもときどき『存在の耐えられない軽さ』の本を開くという。

「映像もそうですが、
本は読む年齢で解釈が違いますよね。
年齢を経ることで、
ものごとが多面的に見えてきたりとか。
でも、好きな本はやっぱり好きです。
若いときに好きだった本は、
いま読んでも共感できる。
見方や考え方は多少変わっても、
やっぱり自分の本質は変わらないんだなと思います」

(取材・文=タカザワケンジ 撮影=冨永智子)
 

広末涼子

ひろすえ・りょうこ●1980年、高知県生まれ。97年『20世紀ノスタルジア』で映画初主演を飾り、以降、映画、ドラマ、舞台などで活躍。2008年『おくりびと』、09年『ゼロの焦点』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。近年の出演作に、映画『LOVE まさお君が行く!』、ドラマ『東野圭吾ミステリーズ』など。
ヘアメイク=佐藤寛(KOHL) スタイリング=平野真智子(NOMA) 衣装協力=ニット1万8900円(Edition/Edition表参道ヒルズ店 ☎03-3403-8086)、ネックレス1万3650円、ピアス2万5200円(ともにCOCOSHNIC ☎03-3497-1309)

 

紙『存在の耐えられない軽さ』

ミラン・クンデラ/著 千野栄一/訳 集英社文庫 860円

1968年の「プラハの春」とその前後のチェコを舞台に、優秀な外科医でつねに複数の恋人たちとの逢瀬を楽しむトマーシュと彼を愛するテレザ、彼と長年にわたり「性愛的友情」を育む画家のサビナの運命を描いた恋愛小説。共産主義体制の不条理のなかで人間らしく生きようとする彼らの姿を生き生きと描いている。

※広末涼子さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ10月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『鍵泥棒のメソッド』

監督・脚本/内田けんじ 出演/堺 雅人、香川照之、広末涼子、荒川良々、森口瑤子 配給/クロックワークス 2012年9月15日(土)全国にて公開 ●自殺に失敗した売れない役者(堺雅人)は、銭湯で転倒し記憶をなくした殺し屋(香川照之)と入れ替わったことから、ヤクザがらみのトラブルに巻き込まれる。広末さんが演じるのは、結婚予定日を決めて婚活に励む生真面目な編集者。第15回上海国際映画祭最優秀脚本賞受賞作品。
(c)2012『鍵泥棒のメソッド』製作委員会