藤原竜也「風間君とは芝居の掛け合いが楽しかった」×土屋太鳳「津田さんは愛すべきダメ男っていう感じ」映画『鳩の撃退法』の見どころは?

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PR更新日:2021/8/20

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鳩の撃退法

 直木賞作家・佐藤正午の最高到達点ともいわれる山田風太郎賞受賞作『鳩の撃退法』(小学館)が、藤原竜也主演でついに映画化! 累計発行部数が20万部を突破した本作は、小説ならではの巧みな構成と、謎が謎を呼ぶスリリングな展開で、映像化不可能と言われ続けてきた傑作。1000ページ以上(文庫版)におよぶ本作を、2時間の映像におさめるだけでも至難の業。いったいどんな作品に仕上がったのか? かつては直木賞も受賞した天才小説家の津田伸一を演じた藤原竜也さんと、担当編集者・鳥飼なほみを演じた土屋太鳳さんにお話をうかがいました。

(取材・文=立花もも 撮影=干川修)

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――よくぞあの複雑に絡み合った小説を、濃密に凝縮し、かつエンターテインメントとして仕上げてくださった、と原作ファンとしてはお礼を言いたい気持ちです。

藤原竜也氏(以下、藤原):そう言っていただけたら、ホッとします。脚本を読んだときも、なかなか難しい話だなと思ったんですよ。まずタイトルの意味が、物語を追っていてもなかなかわからない。展開していく物語がはたして、津田が考えた小説なのか、本当に起きた出来事なのかも、わからない。謎だらけの構造を、僕ら自身も演じながら現場でひもといていった気がします。太鳳ちゃんは、完成した試写を観てもよくわからなかったって言ってたよね(笑)。

土屋太鳳氏(以下、土屋):はい(笑) すごくおもしろかったんですよ。でも観ながら、頭のなかにずーっと、クエスチョンマークがほわんと浮いているような心地で。それが楽しかったんです。たぶん、1回で全容が理解できるわけじゃないところも、この作品のおもしろさですよね。「えっ、あのときどうなってたの?」「この場面の意味は?」ってくりかえし観たくなってしまう。

藤原:そうね。1回でわからなくても、全然いいと思う。

土屋:私の演じた鳥飼は、津田さんから書きかけの小説を渡されて読むじゃないですか。で、「津田さん、これ小説ですよね? ノンフィクションじゃないですよね?」って迫る役。お客さまの視点にいちばん近い立場なので、演じているときも、全部をちゃんとわかっている必要はないだろうなって思ってたんですよね。いちおう、原作小説も手にとったんですけど。

藤原:(文庫本を手にしながら)こんなにぶあつい小説だったんだね。

土屋:先に脚本を読んだんですけど、原作とは全然描かれ方がちがうので、どこが共通していてどこが変わっているのかを把握して、雰囲気だけつかむようにしました。原作を知りすぎてしまうと、鳥飼のまっさらな感じが出しにくくなるかなと思って。

藤原:たしかにぱっとは理解しにくい内容なんだけど、僕ら自身が演じていて作品の世界に入り込みやすく、かつ完成した映画をおもしろく観ることができたのは、やっぱり脚本が秀逸だったからだと思います。原作からいろんなものを削ぎ落としながら、必要なものを綿密に構成していったんだろうな。あと僕は、津田伸一というキャラクターがとても好きなタイプだったのもありがたかった。

鳩の撃退法

――どんなところがお好きなんですか?

藤原:そうですねえ。落ちぶれた元直木賞作家で、今はデリヘルの運転手。ぱっと見はろくでもなさそうだけど、嘘はない人なんですよね。あと、これは個人的な感覚ですけど、彼の言葉遣いとか心の動かし方というのが、芝居をしていてやりやすくて。たぶん、シンプルに、僕と合ってたんだと思います。

土屋:絶対こんな男の人には引っかかりたくない!って思うんですけど(笑)、竜也さんの演じている津田さんを観ていると、どんどん好きになっちゃうんですよね。愛すべきダメ男っていう感じ。そんな津田さんに引っ張られるようにして、まわりの人たちの魅力も浮かびあがってくる。

藤原:共演者もまた、豪華でしたからねえ。もう、うまい人しか集まってない。風間(俊介)くんとは初共演なんだけど、役者としてまるで違うタイプだったので、芝居の掛け合いが楽しかった。

――風間さんの演じた幸地秀吉は、物語の鍵を握る人物です。コーヒーショップで秀吉に出会った津田は、次に会ったら『ピーターパン』の本を貸す約束をする。でもその夜、秀吉は愛する妻と娘とともに一家で失踪してしまう……。

藤原:風間くんは秀吉を寡黙で淡々とした演技で表現していったけれど、僕はどちらかというとよくしゃべって相手を煙に巻くような人間として津田を演じていた。そんな2人の交錯は、演じていても観ていてもおもしろかったですね。2人の対比は、物語の芯としても大きく機能してくれたな、と思う。一方で、津田の雇い主を演じていた岩松了さんという演劇界を背負っている人がいて。現場で「セリフが出てこない! 藤原くん、ごめん」なんて言うんですよ。僕もう、感動しちゃって。

――感動。

藤原:岩松さん、もっとラクしていいのに。って思いながら、そんな彼を見られたことだけで胸がいっぱいですよ。あとはトヨエツ(豊川悦司)さん。1週間ぐらいしか(撮影場所の)富山に来てないのに、最後は全部持ってっちゃうでしょ?

土屋:あはは(笑)。

藤原:俺もそういうやり方がいい!って思った(笑)。

土屋:1週間しかいないのに、全部をかっさらう。竜也さんは、はやく東京に帰りたかったんですか?

藤原:帰りたかったっていうか、微妙な時間だったんだよね。21時半発のかがやきに乗れれば帰れるから、それまでに終わるか?っていうせめぎあい。でも泊まりになったらなったで、みんなでごはん食べに行けたからね。

土屋:富山は、なにを食べてもおいしかったですね。竜也さんが率先してみなさんを誘って下さるので、賑やかでとても楽しかったです。

藤原:ほかにやることがなかったからね(笑)。

土屋:でも普通、コンビニではちあわせたスタッフさんを連れて来れないですよ。

藤原:つかまったほうはいい迷惑だよね。

土屋:いやいや、さすがだなって思いました。ロケバスでも、先輩方に「お茶いりますか?」って声をかけたり、こまごまと気を配られていたので。上下関係を、いい意味でとても大切にされているのを感じましたし、そういう気配りが現場をあたたかくして、いい仕事に繋がるんだなって、勉強になりました。

藤原:そのほうが楽しいからやってるだけだけどね。

土屋:なかなかできることじゃないと思います。

――お二人は、どんなふうに役作りをしたんですか?

藤原:リハーサルしないで一発撮りをすることが多かったんで、つくりこむというよりは、その場で最適だなと感じるスピードやテンポを大事にしていましたね。クライマックスに近づくにつれて、現実と小説が交錯して津田の推理なのか妄想なのかわからない想いが膨らんでいくんですけど、心情を吐露する長台詞のシーンもたびたびあって。そういうときは、ちょっと今までと表現を変えてみたりしました。ここは句読点要らないかな、とか、実験的に演じてみたというか。最初は手探りだったけど、やっていくうちに、間違ってないなって感じる手ごたえみたいなものがありました。

鳩の撃退法

土屋:私はなるべく“目”で演技するようにしていました。こうして自分が取材を受けているとき、編集者の方やライターさんって、目でお話しされることが多いなと感じていて。たいていはノートをお持ちですけど、そこに目を落としながら話すというより、脳内で質問を組み立てながら私の……相手の反応をしっかり見ているし、ご自身の反応も目で表現される。だから津田さんからも、目を離さないようにしていました。たぶん鳥飼は、編集者であると同時に、津田さんの熱心すぎるファンでもあると思うので。

藤原:腐れ縁でもあるし、一緒にいて安心感のある関係だったね。バーのシーンは、ママ役の坂井(真紀)さんに、役の上だけでなくいつも見守られている感覚があって、すごく居心地がよかったな。

土屋:でも私は、緊張感もありましたよ。常に竜也さんの凄味を感じていましたし。

藤原:またまた。

土屋:何が起きるかわからない、って撮影をご一緒しているあいだは思っていました。先ほどおっしゃっていましたけど、テンポをそのつど変えたり、句読点を省略していったり、セリフってこんなふうに表現できるものなんだ!?って、圧倒されて。ちょっとでも気を緩めたらついていけなくなる、って思いましたし、津田さんと会話のラリーをする場面では、いろんな意味でドキドキわくわくしていました。

藤原:僕は太鳳ちゃんとの絡みはとてもやりやすかったですよ。

土屋:あと、私は登場していないけれど、クライマックスでの風間さんとのシーンは、いち観客としてドキドキしました。風間さんが“手を叩く”というのが、物語の象徴的な場面として何度か出てくるんですけど……。

藤原:あれは、僕も完成した映画を観て、すごくよかったなと思った。叩くのか、叩かないのか。そもそもなぜ叩くのか。ということがもうひとつ、物語の鍵となってくるんだけれど、脚本を読んだときはいったいどう演出するのか、見当もつかなかったんですよね。でも、そこがうまく機能しないと映画は成立しないとも思った。そうしたら、監督が非常に寓話的な雰囲気を漂わせつつもリアリティをもって仕立て上げていて……。

土屋:さすがですよね。

藤原:僕らにとっては脚本がすべてだし、「これ、なんか違うんじゃない?」って思う瞬間があるのが、いちばんつらい。でも今回は、現場では理解しきれない部分がありつつも、戸惑ったり引っかかったりすることがひとつもなかった。一発撮りの手法が必ずしもうまく機能するとは限らないけど、今回はその瞬発力や、失敗はできないという緊張感が功を奏して、物語の深みをさらに増しているんじゃないかと思う。

土屋:“観客参加型謎解きエンター〈転〉メント”、って宣伝していますけど、本当に、みなさんには作品世界に参加するつもりで観ていただきたいです。

藤原:どんな状況でも書かずにはいられない津田という男が背負う、物書きとしての宿命と、人物同士の運命が重なりあって転がっていくエンターテインメント。近年なかなかお目にかかれないよくできた作品だと思います。

この記事で紹介した書籍ほか

鳩の撃退法 上

著:
出版社:
小学館
発売日:

鳩の撃退法 下

著:
出版社:
小学館
発売日: