武内駿輔「村上隆さんの『芸術起業論』は、エンタメに携わっている人は、一度は目を通すべき本だと感じました」

あの人と本の話 and more

公開日:2021/9/14

芸術起業論 (幻冬舎文庫)

著:
出版社:
幻冬舎
発売日:
武内駿輔さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『リョーマ!The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』にブー役で出演中の武内駿輔さん。「感銘を受ける言葉ばかりだった」と語るおすすめ本の話、そして念願の出演をはたした映画『リョーマ!』の制作の裏側をたっぷりとうかがいました。

(取材・文=倉田モトキ 写真=山口宏之)

 武内さんが本誌でおすすめしてくれた1冊は芸術家・村上隆による『芸術起業論』。手にしたのは一年ほど前だったという。

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「少し前から、イラストレーターでありアーティストでもあるJUN INAGAWAくんを通じて若手アーティストの方々と出会う機会があったんです。そこで一番仲良くなったCOIN PARKING DELIVERYが村上隆さんの話をよくしてくれていて。それまで村上さんのお名前は存じ上げていたものの、どんな作品を作っていらっしゃるのかまでは詳しく知らなかったんですね。そこからいろいろと調べていくうちに、この本にたどりつきました。ちょうど同じ頃、声優の先輩である津田健次郎さんもこの本が大好きだとおっしゃっていたので、そのことも読むきっかけのひとつとなりましたね」

 海外でも高い評価を受ける村上隆。本書には、欧米で自身の作品が受け入れられたのは、作品性だけでなく、徹底したビジネス戦略があったからだと綴られている。こうした従来の常識を覆すような芸術論に、武内さんは目から鱗の思いだったそうだ。

「感銘を受けることばかりでした。たとえば、“芸術でお金を稼ぐ”ということに重きを置いて考えている点。アート作品をはじめ、表現の創作物って評価の仕方が難しいと思うんです。でも、多くの人に“この作品には価値がある”とわからせる基準のひとつに、いくらで売れたかという“金額”の指標がある。だったら、そこを大事にして何が悪い?と言い切っているところにかっこよさを感じました。それに、実際村上さんの作品には海外からの芸術的な評価はもちろん、それに対して1億円の値がついたこともあるわけで。だからこそ、仮にまわりから、“芸術をお金で計るなんてナンセンスだ”と言われようと説得力がある。本当にすごい方だなと思います」

 また、この本を「ビジネス書としての観点で読んでも面白いと思います」と武内さん。

「村上さんはこれらをアートの世界の話として書かれていますが、エンタメ業界全体にも言えることがたくさん盛り込まれているんです。どうやって作品をブランド化させるか、マーケットを分析することがいかに大事かなど。エンタメは夢を売る仕事なので、あまりお金の話や戦略のことばかりを意識しすぎると、こじらせた考え方になっちゃうかもしれませんが(笑)、エンタメの世界を目指す人、携わっている方は、一度読んでみてもいいかなって思いますね」

 そんな武内さんが出演する映画『リョーマ!The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』が現在公開中。大ヒット作『テニスの王子様』の新たなエピソードを、シリーズとしては初の3DCGで作り上げた本作。製作総指揮を務めたのは原作者・許斐剛だ。

「『テニプリ』といえば、マンガやアニメの大ヒットにはじまり、新たなミュージカルの形として2.5次元舞台の基礎を作り上げたような作品。そんな歴史あるシリーズに携わることができたのは本当にうれしかったです。しかも、今回の3DCGアニメは許斐先生の構想からスタートしているそうで。作品から先生のバイタリティや、ファンをもっと楽しませたいという思い、それに『テニプリ』をさらに違う形で表現していきたいという強いパッションを感じましたので、僕も熱い気持ちで収録に臨みました」

 今作の舞台となっているのはアメリカだ。その中で武内さんは、“テニスギャング”の一人であるブーを演じている。

「アフレコはすごく楽しかったです。双子の兄弟・フー役の竹内良太さんと掛け合いができたのもうれしかったですね。僕と竹内さんは名字の読み方が同じということだけじゃなく、じつは声の低さも似ているんです(笑)。ですから、同じ作品に出る機会があまりなくって。その点、今回は双子の役ということで、“その手があったか!”と(笑)。また、声質は確かに似ているものの、当然ながらそれぞれが持つ明確な個性の違いもあるわけで。今回の作品では、そうやって互いの似ている部分で統一感を出しつつ、いっぽうで差別化もしていくことを二人で相談し合いながらできたのもいい経験でした」

 また、二人の兄貴的存在であるウルフ役には杉田智和を起用。

「杉田さんは僕がデビューしたばかりの頃からよくしてくださっている大先輩なんです。その杉田さんの下っ端にあたる役を演じさせてもらえるなんて、夢のようでした(笑)。プライベートでの関係性を上手くお芝居にも反映させることができたと思いますし、その意味でも、普段から仲良くさせてもらっていてよかったなと思いました(笑)」

 なお、映画の公式サイトでは、彼ら三人と主人公のリョーマがラップバトルをするシーンも先行配信されている。

「ファンの皆さんからの反応も上々で、ひとまずホッとしました(笑)。個人的には“リョーマもラップを披露するんだ!?”という展開に驚かされました(笑)。それに、杉田さんのラップも。まさか杉田さんがラップを歌うとは思ってもいませんでした。聞いたところによると、最初はお断りをされたそうなんです。でも、許斐先生が直談判し、幅広い年齢層に楽しんでいただくためにもラップが必要で、杉田さんの力を貸してほしいとお願いしたそうで。そうした作り手側の熱量を知った上でラップバトルのシーンを見ると、また違った楽しみ方ができるかもしれませんね」

 とはいえ、『テニプリ』とラップの組み合わせと聞くと、“一体どうなるんだ?”と戸惑うファンもいるかもしれない。それに対しても、武内さんは「これが自然とマッチしているんです!」と太鼓判を押す。

「これまでの『テニプリ』の世界観を崩すことなく、新たな魅せ方にも挑戦している。しかも、劇中のすべての作詞・作曲をされているのが許斐先生ですから、合わないはずがない。それに先生は、初めて『テニプリ』をご覧になる方でもスッと入れるようにいろんな工夫をされているんです。映画のメインタイトルが『テニスの王子様』ではなく『リョーマ!』になっているのも、先入観なしに楽しんでもらいたいという気持ちが込められているからなので、ぜひ多くの方にご覧いただけるとうれしいですね」

たけうち・しゅんすけ●1997年、東京都生まれ。声優。デビューの翌年、『アイドルマスター シンデレラガールズ』のプロデューサー役に抜擢され、注目を集める。近年の代表作に映画『アナと雪の女王』のオラフ役、TVアニメ『A3!』兵頭十座役など。2016年に声優アワードで新人男優賞を受賞。

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映画『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』

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原作・製作総指揮:許斐 剛「テニスの王子様」 監督:神志那弘志 脚本:秦 建日子 出演:皆川純子、松山鷹志、高橋美佳子、朴 璐美、杉田智和、武内駿輔、竹内良太ほか 全国上映中
●全国大会で優勝をはたした3日後、越前リョーマは武者修行のため、アメリカを訪れていた。しかし、そこで偶然遭遇した同級生とともに過去にタイムスリップ。たどり着いた先は、なんとリョーマの父・南次郎が引退に追い込まれた全米オープン決勝の数日前だった……。
(c)許斐 剛/集英社 (c)新生劇場版テニスの王子様製作委員会

この記事で紹介した書籍ほか

芸術起業論 (幻冬舎文庫)

著:
出版社:
幻冬舎
発売日:
ISBN:
9784344428140