近藤 華「少しSF要素があって、読みながらたくさん考えさせられる本にいつも興味を惹かれます」

あの人と本の話 and more

公開日:2021/9/19

近藤華さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、12月から始まるミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』への出演が決定した近藤 華さん。読書家の彼女が「一番好き!」とおすすめする『星の王子さま』の思い出や、これまでの読書歴の中で印象に残っている本について、そしてついに夢を叶えて動きだした女優としてのスタートについてお話をうかがいました。

(取材・文=倉田モトキ)

「小学2年生の時に友達がすすめてくれた本なんです。その時からずっと大好きで、今でも何度も読み返します」

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 サン=テグジュペリの『星の王子さま』についてそう話すのは、近藤 華さん。今年春に芸能界デビューし、「三井のリハウス」のCMでは宮沢りえの娘役として注目を集めた女の子だ。

「最初はファンタジー作品として面白く読んでいたのですが、何度も読むうちに、すごく深いことが書かれているんだなということに気づきました。王子さまの行動や、彼が出会う人・物・動物との会話にハッとさせられることも多くて。それに、読む時の自分の年齢や感情次第で本から受ける印象も変わってくるんです。その意味では、気軽にサラサラッと読むことはできないです(笑)。最近はむしろ、哲学的な本を読みたくなる時に手にすることが多いですね(笑)」

 話をうかがうと、幼少の頃から読書が大好きだったという。

「小さい頃によく読んでいたのは童話の『こまったさん』シリーズでした。主人公のこまったさんが、不思議な世界に入り込んで、奮闘しながらお料理を作っていくという物語で。お話も面白いし、お料理も美味しそうだし、絵もすごくかわいいんです。シリーズがたくさん出ていたので、毎日一冊ずつ読んでいました(笑)」

 また、最近では星新一のショートショートなども。

「星新一さんの作品は学校の図書館に全巻そろっていて、すべて読みました(笑)。物語の展開であったり、近未来的な設定が大好きなんです。それにSFの世界観に惹かれることが多くて。映画だと『スター・ウォーズ』とか。なかでも、アナキン・スカイウォーカーのエピソードが大好きです」

 では、マンガは?

「マンガはファンタジー作品をよく読みます。手塚治虫先生の『火の鳥』や『ブラックジャック』も読みました。父が持っていて、お部屋の片付けをしている時に偶然見つけたんです。どちらにも少しSFの要素が入っていますし、『星の王子さま』もそうですが、やはり読みながら、いろいろと考えさせられる作品に興味を持つことが多いのかもしれません」

 ここまで話を聞いていて、ふと思う。14歳になったばかりという女の子にしては、作品のチョイスがなかなか渋い。

「そうなんです。友達からも“趣味が変わってるね”とよく言われます(笑)。私としては、みんなにも読んでほしいのでがんばってすすめているんですが、手塚先生の作品はその面白さや素晴らしさをうまく説明できなくて。それでいつももどかしさを感じています。逆に、同じ趣味を持っている子が現れると、ものすごく盛り上がりますけどね(笑)」

 華さんは昨年、女優になることに憧れて、現在の芸能事務所に入所。そこからわずか半年でCMへの出演をはたした。そんな彼女にさらなるチャンスが訪れた。舞台デビューだ。

「オーディションだったのですが、自分を選んでいただけたことがウソみたいで、びっくりしました! しかも、作品が『北斗の拳』をミュージカル化したものなんです。オーディションを受ける前に全巻読んだのですが、“この世界をどうミュージカルで表現していくのだろう?”とすごく興味がわきました」

 公演は12月からのため、稽古もまだまだ先。そのため、今は漠然と舞台の世界を想像するしかない。

「やっぱりちょっと不安が大きいですね。どのような演出を受けるのかも分かりませんし、はたして自分にできるんだろうか、と。いえ、やらなくちゃいけないんですけど。……でも、どちらかというと怖さのほうが大きいです。もちろん、それでもやらなくちゃいけないんですけど。……と、今はこんな感じで、期待と不安と楽しみの感情がグルグルグルグル回っています(笑)」

 なお、稽古に向けて、少しずつ演技の勉強もはじめている。

「ワークショップやいろんなレッスンに参加させていただいています。自分がやりたいと思っていたことなので、演技のお勉強はすごく楽しいです! もちろん、まだ未熟ですし、表現の幅もないので、自分がイメージするお芝居ができなかったり、どれも似たような演技になってしまったりと、難しさを感じることばかりです。でも、ひとつひとつの役としっかりと向き合い、その人物が感じる思いを丁寧に出していけたらなと思っています。特に今回の舞台で私が演じるリンちゃんという役は、あまり感情を大きく出す女の子ではないんです。それでも、心の内側に秘めているものをしっかりお客さんに届けられるよう、がんばっていきたいですね」

 目標は「いろんなことができる女優さん」と華さん。

「お芝居の仕事に全力で向かっていくのはもちろんですが、興味のあることにはどんどん挑戦していきたいです。もともと私は、いろんなことを頭の中で想像したり、それを形にしていくことが大好きで。小4の頃から動画を撮ったり、アニメーションを作って配信もしていました。今は完全に趣味として楽しんでいるのですが、でもこうやって想像すること、形にしていくことが、いつかお芝居の仕事に役立つかもしれないと思って。ですから、これからもいろんなことに挑戦し、興味や発想力の幅を広げていけたらなと思っています」

衣装協力:iNtimité

こんどう・はな●2007年8月6日、東京都生まれ。女優を志し、20年よりトップコートに所属。21年4月から放送されている「日本マクドナルド」「三井のリハウス」のTVCMで芸能界デビュー。映像・アニメーション制作を趣味とし、Instagramなどを通して、自身が手掛けた作品を配信中。

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