天希かのん「心を開いたら、演技はひとりで乗り越えるものじゃなかった」【声優図鑑】

アニメ

公開日:2021/10/18

天希かのん

 キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチニュースの恒例企画『声優図鑑』。第270回目に登場するのは、2019年に『サクガン』メメンプー役の公開オーディションでグランプリを獲得し、主役を勝ち取るとともに、青二プロダクションに所属した天希かのんさん。

今は大学に通いながら、声優のお仕事でも活躍の幅をぐんぐん広げています。メメンプー役は自分と重なるところがあるのだとか。プライベートでは、通っている大学への思いや、大切に飼っている猫ちゃんの話も。

恩師に出会えたから今の私がいます

——『サクガン』のオーディションを機に、声優のお仕事がスタート。声優に興味を持ち始めたのはいつ頃ですか?

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天希:小さい時から魔法少女に憧れて、記憶はないんですけど、3歳くらいでバレエを始めて。物心ついた頃からバレエダンサーを目指していたんです。でも中学2年くらいの時、バレエの中でもマイムって呼ばれるお芝居が好きだなと気づいて。中学高校は演劇部でしたけど、性別や年齢を超えた役を演じられる声優になれたらいいなと。学校以外でも演技の学校に通って、大学でも演技を学んで、声を鍛えたくてマンツーマンのボイストレーニングにも通いました。

——芝居だけでなく、声の基礎も学んで。

天希:ボイトレでは恩師に出会えました。私は根が人見知りで、演技では溌剌とできますけど、周りの人と一対一になるとうまく話せないことが多くて。嫌われたらどうしよう…っていつも思っているから、緊張すると笑ってやり過ごしちゃうクセがあるんです。それが逆に、自信があるとか度胸があるって見られることが多いんですけど、その先生は「緊張しいでしょ、自分に自信ないでしょ」って真正面から向き合ってくれて。初回のレッスンで思わず大泣きしちゃいました…。

——本当の天希さんの姿を見抜いてくれたんですね。

天希:はい。だから私も心を開いて演技をすることを学ぶことができました。今までは演じることで仮面をかぶるというか、演じている時だけは自分が許されるって、役を免罪符にしているところがあったんです。でも先生の前では、相手を信じて自分をさらけ出してもいいんだって思えました。『サクガン』のオーディションも受かるはずないって思ってたけど、先生が「かのんはこの声の系統だから」って、声のサンプルまで作ってくださって。先生に出会えたから、今の私があると思ってます。

——まさに運命の出会いというか。今でも通っているんですか?

天希:所属してからは行かなくなりましたけど、今でもSNSでつながっていて、仕事で悩むことがあったら相談させていただいてます。

演技はひとりで乗り越えるものじゃなかった

——『サクガン』のオーディションの思い出を聞かせていただけたら。

天希:緊張でほとんど覚えてないんですけど…『ここが、ものすごくドキドキするんだ』っていうセリフをよく覚えています。胸に手を当てるとドクドクしていて、でもそれは私の緊張じゃなくてメメンプーのドキドキなんだって思うようにして。津田美波さんとの掛け合いもあったんですけど、練習してきたものとは全然違うお芝居が出てきたりして、これがお芝居の楽しさなんだ!と。

——緊張しながらもお芝居を楽しめたのですね。メメンプーを実際に演じた感想は?

天希:演劇では最初にすべての台本を受け取りますけど、アニメは話数ごとに渡されるので、原作があったとしても先の展開がわからなくて。自分が考えているメメンプーちゃんとは違った印象のセリフがあったりするので、「こういう語尾なんだ。どうやって言うんだろう?」ってイメージをずらしていくのが難しいけど楽しいな〜と。不安を感じながらも、現場で東地(宏樹)さんや花澤(香菜)さんと掛け合いをしてみたら、知らないうちにセリフを言えていたりとか。

——掛け合いのなかでメメンプー像ができあがっていると。

天希:はい。演技って、ひとりで乗り越えるものじゃないんだと思いました。うまく解釈できないことがあっても、自分なりに役を落とし込めているのなら、そのまま現場にいけば大丈夫というか。お芝居をガチガチに固めていくこともあったけど、難しいって思った時こそ、練習しすぎないで現場に行ったほうがいい、ということを学びました。

——演技で心を開けるようになって、現場でのコミュニケーションに変化は?

天希:最初から人を怖がることはやめました。自分でも大丈夫かな、嫌われてないかなって考えるより、この人が好きだ!っていう気持ちで向かっていったほうが、相手からどう思われるのかはさておき、自分の気持ちがラクだな〜と気づいて。まだ人見知りではありますけど、初めて会う人も5分後には超好きだ!って思えるように、気持ちを作って現場に向かっています。

守りではなくギリギリまで遊びを入れたい

——お仕事にもいい影響がありそうですね。小さい頃はどんな子どもでしたか?

天希:誰かと遊ぶよりひとりで本を読むのが好きで、図書館で片っ端から本を読んでいました。それこそ辞書なんかも。でも昼休みは外に出なさいと言われたので、服の中に本を隠して屋上で本を読む…っていう厨二病みたいなことをしてました。チェーンネットの内側で、みんな走ってるな〜、私は本読もう、みたいな(笑)。

——(笑)。今までに影響を受けた人や作品は?

天希:声優で憧れているのは悠木碧さんと高橋李依さん。お芝居を見て、こういう声なんだって一瞬驚くんですけど、キャラクターを見ているとキャラクターそのもので。守りではなく、ギリギリまで遊びを入れていらっしゃる演技に憧れます。作品で影響を受けたのは『マギ』。演じられているのが男性かと思ったら、石原夏織さんで。私も、見た目にとらわれない少年役とか人間以外の役とか、普段の自分とは違う役を演じてみたいな〜と思います。

——自分とは似ていない女の子、みたいな役も? メメンプー役はどうだったんですか?

天希:似てる部分と似てない部分の両方あって。メメンプーちゃんは快活で人を恐れないんですけど、私はいつもわ〜って緊張しちゃう。でも、これが好き!って突き進むところはすごく似ていると思います。

——自分の声の魅力はどんなところだと思いますか?

天希:もともと自分の声が好きじゃなくて。高く聴こえるのがコンプレックスで、高校の時はわざと低く喋ったりしてました。魅力とは違うかもしれないけど、演技では“きれいな声”にこだわらないようにしてます。『サクガン』のPVでも、絵が可愛いからこそ、声で人間味を出したくて、ガラガラした声も出しているんです。そのほうが、こういう子いるよね〜と思えるかなと。ここは可愛く演じるところじゃない、と思ったセリフには、台本にたくさん濁点が書いてあります。だから、台本がいつもぐちゃぐちゃですね(笑)。

大学は大切な場所。最後の青春を味わってます

——おうち時間が増えがちですが、最近ネットショッピングしたものは?

天希:ネイルが好きなので、最近は溶液とか石とかをよく買います。オーロラ色とか、いろいろあるんですよ。お友だちにネイルチップをプレゼントするのも好きで、うちに来てもらっておしゃべりしながら作って渡したりとか。ネイルのジェルってUVに当てられないし、猫にやられやすいから、今はタンスの一段をネイル用にして陳列してます。

——寝る前についやってしまうナイトルーティーンはありますか?

天希:猫にご飯をあげて、遊んでます。1日の運動量を消費しきれないと、夜中に大運動会を始めるんですよ。おやすみ…って部屋を暗くした瞬間に、もう寝るんだってわかるんでしょうね。ダダダダーッと、お腹の上に乗るし、変な声は出すし。なので、YouTubeやラジオを流しながら、猫じゃらしで遊ばせて、ハァ、ハァ…ってなったところで寝るぞ!と(笑)。

——最近の“小さな悩み”を教えてください。

天希:大きな悩みになっちゃうんですけど、大学に行けないこと。全部オンラインなんです。大学って自分がやりたいことをしたくて集まってるから、私も大学に入ってから急に友達が増えて、すごく居心地がよくて。私にとっては最後の青春で、もっと交流したいのに学芸祭もできないし、通えないのが悩みというか悲しいなと。
それと、猫に引っ掻かれたこと。猫ちゃんのシャンプーをして乾かすぞって時にドライヤーを持っている手をすべらせて。待って!と追いかけた時にガリッと。きれいにぱっくり割れました。おかげで猫はもこもこになりましたけど(笑)。

——よっぽどびっくりしたんでしょうね(笑)。これからどんな声優になっていきたいですか?

天希:吹き替えとかナレーションとか、まだ知らないことがたくさんありますし、歌は苦手意識がありましたけど演技のように歌えばいい、と先輩方とお話するうちに興味を持ちましたし。人を引き寄せられる磁場の強い役者になりたいとずっと思っているので、観てくださるみなさんも、一緒にお仕事をするみなさんも、また会いたい、またお芝居を観たい、と思っていただけるような役者になりたいです。

——記事を読んでくれた方にメッセージをお願いします。

天希:『サクガン』の公開オーディションで投票していただくなど、助けられている実感がものすごくあります。ネガティブになりがちですけど、お手紙やTwitterで応援してくださるみなさんのおかげで、できること、できないことを知っておくことも自信につながるのかなと思えるようになってきて、本当に感謝しています。恩返しできるように一歩一歩進んでいきたい。これからも温かく見守ってもらえたらうれしいです。

——天希さん、ありがとうございました!

【声優図鑑】天希かのんさんのコメント動画【ダ・ヴィンチニュース】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

天希かのん

天希かのん(あまね・かのん) 青二プロダクション所属

天希かのん(あまね・かのん)Twitter

◆撮影協力

撮影=山本哲也、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト