「すごく自然に『平良と清居だ』と思った」萩原利久&八木勇征でドラマ化! 大人気小説『美しい彼』作者・凪良ゆうインタビュー

文芸・カルチャー

公開日:2021/11/19

美しい彼【SS付き電子限定版】 (キャラ文庫)

著:
イラスト:
出版社:
徳間書店
発売日:
美しい彼
MBSドラマ特区ほかにて11月18日(木)放送スタート
©「美しい彼」製作委員会・MBS

 2021年11月18日(地域によって異なる)、凪良ゆう著『美しい彼』(徳間書店 キャラ文庫)を原作としたドラマ『美しい彼』(MBSほか)の放送がスタートした。

「美しい彼」シリーズは、1巻が約7年前に刊行されたBL作品だ。吃音症に悩み、幼い頃から周囲になじめずにぼっちで過ごしていた平良一成は、高校3年の春、クラス替えで出会った清居奏の姿を見た瞬間、その美しさに一気に心を奪われてしまう。

 スクールカースト上位に君臨するキング、清居のパシリになることも厭わないどころか、喜びを感じる平良。日々彼に忠誠を誓う平良は、しかしその気持ちがただの憧れではないことに気づいていく。

 歪んだ愛情の形を描いた『美しい彼』は、BLジャンルの中でも少し異彩を放つ作品だ。今回はドラマ化を記念して著者の凪良ゆうさんにお話を伺った。

(取材・文=園田もなか)

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予想外に受け入れられた「気持ちの悪い攻め」

凪良ゆう
©Hiroyuki Yamaguchi

――『美しい彼』第1巻が発売されてから7年、その間に『流浪の月』(東京創元社)が本屋大賞を受賞したり『わたしの美しい庭』(ポプラ社)が山田風太郎賞候補になるなどBLジャンル以外の作品が評価され話題になりましたが、それによって他の作品が再評価されたような実感はありますか。

凪良ゆう(以下、凪良):そうですね。私自身はボーイズラブが好きで10年以上このジャンルで執筆をしてきましたが、やっぱりニッチなジャンルではあるので、そもそもこのジャンルの作品を1冊も手にとったことがない人の方が世の中では大半だと思うんです。そんな中、本屋大賞などをいただいたことで、「この人は今までどんな本を書いたんだろう」とさかのぼって手にとってくださる方々がたくさんいて、それはとても大きなことだったと思います。

――そもそも『美しい彼』はBLというジャンルの中でも受け入れてもらえるか不安だったというお話もあとがきなどでされていますよね。

凪良:私も担当編集の方も、絶対に1巻で終わるだろうって思っていましたからね。こんな本を出させてくれてありがとう、と感謝をしていました。やっぱり、ボーイズラブってハッピーエンドが約束されているからこそ、途中で悲しいことや辛いことがあっても安心して読めるジャンルだと思うんですよね。そういう安心がほしいと思う読者は、やっぱり安心させてくれるような素敵な人が好きなわけです。身も蓋もない言い方をすれば、高身長高収入のイケメン、みたいな。そういう読者の欲望が如実に表れるジャンルだと思うので、この作品の平良のような“攻め”は受け入れられないだろう、と。ただただ自分が好きな気持ちの悪い攻めを書きたくて書いただけだったので、それが予想外に受け入れてもらったときは、正直「嘘やろ」って感じでしたね。驚きとか戸惑いが先にありました。

――BLのセオリーから外れているという点でいうと、たとえばシリーズ第3巻『悩ましい彼』では、イケメンだった清居が役作りのために20kg太って見た目が一気に変わってしまう展開にも驚きました。

凪良:あれは『美しい彼』、そして『憎らしい彼』とシリーズが続いていく中で、平良と清居というカップルへの理解が読者の中でもある程度できているという信頼があったからこそできたことですね。「清居が太るっていうんじゃ、しゃあない」と許してくれるんじゃないか、と思って書きました。気持ちの悪い攻めを受け入れてくれた読者さんでもありますしね。

愛が純化すると己が消える

美しい彼
MBSドラマ特区ほかにて11月18日(木)放送スタート
©「美しい彼」製作委員会・MBS

――「気持ちの悪い攻め」が好きだとあとがきで何度も書かれていましたが、平良の気持ちの悪さって独特ですよね。容姿は整ってはいるし、品もあるのだけど、なんだかゾッとするようなところがある。

凪良:便宜上「気持ちの悪い」という言葉を使ってしまってはいるんですけど、実は私自身は平良のことを気持ち悪いとはあまり思っていないんですよね。

――そうなんですか。

凪良:たとえば推しをもつ人だったら、けっこう平良に共感できる部分があると思うんですよ。そこまではやらないけど、気持ちはわかるよ、みたいな。特にBLジャンルの読者の方々って、なんとなく推しに対する愛情が大きいような気がするんです。アイドルを追っかけて応援している人達と似たような熱量というか。オタクじゃなくても、たとえば恋愛で恋人のことが好きすぎる人だって、同じような部分があると思う。「3日連絡がこなかった、私は嫌われたんだ」とか思ったりするでしょう。はたから見たら「いやいや、3日で大げさだって」と冷静に思うんですけど。みんなそういう歪んだ部分は少なからずもっていて、平良はそれをデフォルメして書いたってだけなんです。

――そう言われてみると、たしかに平良の心情にどこか共感している自分もいる気がします。

凪良:あとは意識しているのは、平良の中で一本筋を通しているというところですね。彼氏としては迷惑をかけている部分もあるけど、清居のファンとしてはとても行儀がいいし、たとえ清居と別の人との熱愛が発覚しても血の涙を流しながら祝おうと心に決めている。

――それも彼氏としてはまたちょっとズレた感覚ではありますけどね……。ただ、平良がいいファンだというのはとてもわかります。現実でも、彼のように模範的なファンもいれば、周囲や推しに迷惑をかけてしまうようなファンもいる。それはどうしてなんだろう、と思います。

凪良:これは推しに対してだけの話ではないんですけど、愛情って純化すると滅私の精神になる気がするんです。崇拝や信仰に近い形。そこに己が混じってくると欲が出てきてしまうんだけれど、それをすべて捨てることで愛とはまたちょっと違う方向へと進んでいく。そこに私利私欲はないから、美しいんですよ。平良って突拍子のない言動ばかりをするけど、そこには自分のことを何も考えていないような美しさがあります。

恋愛以外にも書けることはたくさんあった

美しい彼
小説「美しい彼」シリーズ

――今回のドラマではシリーズの続刊で登場する小山和希(高野洸)など、高校時代だけでなく大学時代までまたがって描かれるのもまた楽しみです。「美しい彼」シリーズを書く上で意識していたことなどはありましたか。

凪良:そもそも2巻以降に続くと思っていなかったので、最初は少し焦りました。ただ、続きものを書くとなると、たとえば当て馬キャラが出てきてふたりの関係がこじれたり、せっかく結ばれたのにごたごたしてしまう、というような展開が多いと思うんですけど、私はそれだけはやりたくなかったんですね。1冊かけて、あれだけ揉めて悩んで葛藤してぶつかって、やっと結ばれることになったのに、そんなに簡単に気持ちが揺らいでしまったら、それまでのことが全部無駄になってしまったような気がして。人間は恋愛だけをして生きているわけではないし、学校に行ったり仕事をしたりする時間の方がうんと長いわけじゃないですか。だから普通にその部分を書いていけば物語としては十分成り立つだろうなと思っていました。ただ、彼らの場合はあまりにもお互いを理解し合えていないので、その葛藤などは描くことができましたね。

――ここまでわかり合えないカップルもなかなか珍しいなと思いました。

凪良:普通は“受け”をあれだけ振り回したり不憫な状態にさせると、攻めが読者に嫌がられたりするんですけど、平良に関してはそんなことがないので助かってます。そういう平良が好きで付き合ってるんだからしょうがないねって読者も思っているんだと思います。

萩原利久さんと八木勇征さんには、すごく自然に「平良と清居だ」と思った

美しい彼
MBSドラマ特区ほかにて11月18日(木)放送スタート
©「美しい彼」製作委員会・MBS

――平良や清居への読者の理解が深いというお話ですが、それだけ読者の想いが強いと、ドラマ化はプレッシャーもあったのではないでしょうか。

凪良:やっぱりタイトルが『美しい彼』というだけあって、清居が美しくないと“燃える”だろうなと思っていました。ドラマ化の発表があったときも、「清居をやれる人がいるの?」とか「誰がきても納得できない」という声も多くて少し不安は感じていました。ただ、キャストとビジュアルが発表された途端にそういう声がぱたりと消えてしまったんです。清居役の八木勇征(FANTASTICS from EXILE TRIBE)さんが顔面で黙らせた感じ。美しさのもつ力ってすごいんだな、と改めて思わされたような気分でした。

美しい彼
MBSドラマ特区ほかにて11月18日(木)放送スタート
©「美しい彼」製作委員会・MBS

――清居がちゃんと清居をやっていたんですね。

凪良:清居が清居をやってましたね。加えて、私は平良役の萩原利久さんもすごいなと思っていて。実際お会いしてわかったんですけど、萩原さんの目力がすごいんです。たぶん平良役に選ばれた決め手はあの目なんじゃないかな、って。目が大きいのは誰が見てもわかるんですけど、萩原さんは白目が真っ白なんですよ。ふつう人って年を重ねるにつれて白目が濁ったり黄色くなったりするものだと思ってるんですけど、萩原さんはとても綺麗な青みがかった白を保っていて、この目でじっと見つめられたらおそらく清居も落ちるんじゃないか、これは間違いなく平良だ、って思えたんです。原作を読んでくださっている方々は、きっとドラマが始まったら萩原さんに視線が釘づけになるんじゃないかなと思っています。

美しい彼
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©「美しい彼」製作委員会・MBS

――個人的にはTikTokのハロウィンの投稿を見て、萩原さんにとても平良を感じていました。

凪良:あれすごいですよね。そこまで役を忠実に理解してくれているんだってびっくりしました。あと、萩原さんご自身はとっても素敵な方ですが、どこか平良に通じるようなユニークさもあるなと思っています。撮影現場を見学しに行ったのですが、萩原さんはちょっと離れた自宅から、コンビニのレジ袋に荷物をすべて入れて来ていて、さすがに無造作すぎるってちょっと笑ってしまいました。Instagramの妄想劇場も独特なセンスを感じますよね。そういう、平良本人ではないんだけど、平良と通じるドアみたいなものは感じていて、これからどんな平良を見ることができるんだろうと楽しみです。

――撮影現場で実際に演じているおふたりを見てどう感じましたか。

凪良:なんだか、言葉にできない感じですね。すごく自然に、「平良と清居だなあ」とすーっと納得することができた。違和感がなかったんです。漫画や小説の実写化のときの大きなハードルとしてその違和感というのがあると思うんですけど、それをまったく感じさせられなかった。役者のおふたりはもちろん、酒井麻衣監督(『荒ぶる季節の乙女どもよ。』ほか)やスタッフの方々の、作品への理解もとても深いのだろうな、とありがたかったですね。

――最後に「美しい彼」シリーズのファンの方々へ一言お願いします。

凪良:すでにSNSであれだけ映像が出ているので、ふたりのイメージがぴったりだということはわかっていただけていると思います。だからあとは、動いて話す平良と清居を楽しんでいただければ。絶対にいいドラマになると思います。

ドラマ特区『美しい彼』

ドラマ特区『美しい彼』
放送時間:毎週木曜24:59~(MBSほか)※放送曜日・時間は地域によって異なります
原作:凪良ゆう
監督:酒井麻衣
脚本:坪田文
出演:萩原利久、八木勇征、高野洸 ほか
ドラマ公式サイト:https://www.mbs.jp/utsukushiikare/
ドラマ公式TikTok:https://www.tiktok.com/@drama_mbs?
ドラマ公式Instagram:https://www.instagram.com/utsukare_mbs/

キャラ文庫『美しい彼』特設サイト
https://chara-info.net/utsukushiikare/

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