“表現者として衝撃を受けた”――崎山つばささんがおすすめする「モノクロなのにどこか新しい」1冊とは?

あの人と本の話 and more

更新日:2021/12/23

崎山つばささん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、崎山つばささん。

(取材・文=五十嵐 大 写真=干川 修)

 陰の中に光を、光の中に陰を感じるんです――。ため息を吐くように、崎山さんは何度もそう口にした。手にしているのは、世界的なフォトグラファーであるアントン・コービンの写真集『Mood/Mode』だ。

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「彼の写真を初めて見た瞬間、衝撃を受けました。モノクロなのに色が見えてきて、躍動感も伝わってくるんです。かと思えばカラーの写真も出てきて、すると不思議な安心感を覚える。しかも写っている人たちが、みんな自然体なんです。もちろん、ポーズを取っているんだろうけど、それを感じさせない。そのほうがその人ならではの魅力が伝わるんでしょうね。ぼくも撮られることが多いので、常にナチュラルでいることは意識したいなって思いました」

 最も感銘を受けたのは、派手な色調や加工に頼らない、被写体をありのままで写し出そうとする姿勢だ。

「人物の皺ですら格好いいんです。それをモノクロで写す。いろんな撮影技術がある中で、それは古い手法なのかもしれません。でも、そこに学ぶべき新しさが潜んでいる。それってどんなことにもいえますよね」

 我々は古きをたずねて新しきを知る。その最たるものが〝歴史〟だろう。史実の中から得た知識は、現代にも活かされる。あらためてそれを感じさせるのが、崎山さん主演の「WOWOWオリジナルドラマ 薄桜鬼」だ。幕末を舞台に、崎山さんは新選組副長・土方歳三を演じる。

「史実をもとに、『薄桜鬼』オリジナルの世界観を作り上げているところが絶妙な作品です。原作が大人気であることは知っていたので、まずはアニメで勉強しました。でもそれだけではなく、土方歳三という人物を膨らませるために新選組に関する作品を大量にチェックしたんです」

 結果、現場では土方歳三として“生きる”ことができたという。

「今回は特に、セリフよりも行間を読み解くことに重きを置きました。土方は〝鬼の副長〟として知られていますけど、やっぱり迷いや戸惑いもあったと思うんです。たとえば『撤退だ』とひとこと言うシーンでも、それまでに築き上げてきたものに対する悔しさや辛さがあるはずで。そういう部分にも注目してもらいたい。土方も人間なんだな、と感じてもらえたら、ひとりの役者として非常にうれしく思いますね。同時に幕末を舞台にしているからこそ、なにかを決断する強さや、人間関係の大切さなんかも学べるはず。ひとつの歴史書のような作品だと思います」

スタイリング:OBU- ヘアメイク:SUGANAKATA(GLEAM)

さきやま・つばさ●1989年11月3日、千葉県生まれ。2014年に俳優デビューし、舞台を中心に活動する。その後、『ミュージカル 刀剣乱舞』への出演で注目を集める。近作に映画『広告会社、男子寮のおかずくん』『クロガラス3&0』、ドラマ『140字の恋』『あいつが上手で下手が僕で』『科捜研の女』などがある。

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「WOWOWオリジナルドラマ 薄桜鬼」

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原作:オトメイト(アイディアファクトリー/デザインファクトリー) 監督:六車雅宣・西片友樹 脚本:保木本真也 出演:崎山つばさほか 2022年1月7日放送・配信スタート
●幕末の動乱期、行方不明の父を捜し求める少女・千鶴(若柳琴子)は、人とは思えぬほど恐ろしい「羅刹」に襲われる。そんな千鶴を救ったのは、土方歳三(崎山)率いる「新選組」の隊士たちだった――。
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