8人の小説家が仕掛ける、鮮烈なミステリー体験。「さあ、どんでん返しだ。」特別対談⑦(東川篤哉×真下みこと編)

文芸・カルチャー

公開日:2021/12/17

さあ、どんでん返しだ。
イラスト:石江八

 五十嵐律人、三津田信三、潮谷験、似鳥鶏、周木律、麻耶雄嵩、東川篤哉、真下みこと。8人の小説家による多彩なミステリー作品が連続刊行される講談社の「さあ、どんでん返しだ。」フェアでは、作家同士が互いの作品に抱いた印象や、自らの創作へのこだわりを語りあったインタビューを配信中。第7弾の対談は、『居酒屋「一服亭」の四季』東川篤哉さんと、『あさひは失敗しない』真下みことさんの組み合わせで実現。「仕掛け番長」こと栗俣力也氏がMCを務めたインタビュー、その模様の一部をご紹介します。

さあ、どんでん返しだ。

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実はシリーズ2作目である『居酒屋「一服亭」の四季』を描いた理由のひとつには、「安楽ヨリ子」を自分の作品の中でもっと活躍させたいという思いがありました(東川)

栗俣:『居酒屋「一服亭」の四季』へとつながるシリーズ1作目『純喫茶「一服堂」の四季』で、探偵役として描かれたキャラクター「初代・安楽ヨリ子」が、本作でも「2代目・安楽ヨリ子」として登場し、その癖になるキャラクターにますます虜になってしまいました。そうなってくると、ファンとして気になるのはシリーズ3作目が今後発売されるのかどうか、「3代目・安楽ヨリ子」が登場するのかどうか、というところなのですが、東川先生いかがでしょうか。

東川:現時点で続編を書くことは考えていませんが、まったくないとは言えませんね。ただ、作者としても「安楽ヨリ子」というキャラクターには、名前のインパクトを含めて魅力があると思います。実はシリーズ2作目である『居酒屋「一服亭」の四季』を描いた理由のひとつには、「安楽ヨリ子」を自分の作品の中でもっと活躍させたいという思いがありました。

栗俣:そうなのですね。本当に一度読むと忘れられないほどの印象を与えてくれるキャラクターの「安楽ヨリ子」ですが、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

東川:きっかけは東北楽天ゴールデンイーグルスの「安樂智大(あんらく・ともひろ)」という投手です。彼が入団した時、名前を見ていたら“安楽椅子”という言葉が頭に浮かんできて、次第に“椅子”という文字が“よりこ”という女性の名前に見えてきたのです。

真下:野球選手の名前がきっかけなのですね。本当に読者にとっては衝撃の大きなキャラクターで、私は“安楽椅子”という言葉を見るだけで「あ、ヨリ子さんだ!」と反応してしまいます。私だけ、他の人とふりがなのルビが違う感覚です!

栗俣:そうなのですよね! 僕らはもう、ヨリ子さんから逃れることができません(笑)。

東川:そこまで言っていただけると、嬉しいですね。ありがとうございます。

さあ、どんでん返しだ。

駆け出しの小説家という背景に非常に共感してしまいました。「東原さん」と同じように街で編集者さんに出会ったら、私も営業しちゃうだろうな、と(真下)

栗俣:さて、共通の探偵役「安楽ヨリ子」と並ぶくらい濃いキャラクターが登場するのも、
本作の魅力のひとつですよね。

東川:ありがとうございます。毎話語り手が異なることで、探偵役が共通だとしても読者のみなさんに違った読み味を味わっていただければと思います。

栗俣:物語の世界観やリズム感がとても癖になってしまいました。真下先生、ユーモラスなキャラクターの多い本作ですが、お気に入りのキャラクターを教えていただけますか?

真下:私が好きなのは4話に登場する「東原さん」です。駆け出しの小説家という背景に、非常に共感してしまいました。「東原さん」と同じように街で編集者さんに出会ったら、私も営業しちゃうだろうな、と。またその出会った編集者の方が「放談社」という出版社に勤めていて、「え、講談社ですって!?」と登場人物たちが一度勘違いしてしまうところも、とても面白いですよね。本当に間違えるの? なんて思いますが、実際に口に出してみると音が非常によく似ていて、間違えるのも無理ないなと。

東川:「放談社」も「安楽ヨリ子」と同じく、1作目から続けて登場する設定です。3作目を書くことになるなら、「放談社」もおそらく登場してくると思います。

栗俣:本当に東川先生の作品はファンを掴んで離さない魅力を放つ作品ばかりですよね。本シリーズも間違いなく、1作目を読めば2作目を読みたくなりますし、3作目が出れば必ず買ってしまう。2度と忘れられないような要素ばかりで本当に癖になってしまいます。

対談インタビューの模様は、動画でもご覧いただけます。
TSUTAYA Newsに掲載のインタビューとともに、ぜひチェックしてみてください。

ダ・ヴィンチニュースでは、「さあ、どんでん返しだ。」に参加する8人の小説家への単独インタビューも公開中! 特集はこちら

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