石井ゆかりさんに聞いた2022年の星模様。前半でチャージして、後半は…?

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更新日:2021/12/24

星栞 2022年の星占い

 2021年も年末に差しかかり、そろそろ2022年はどんな年になるのか気になるという人も多いのでは? そんな人にぜひ手に取ってほしいのが、星占いの記事やエッセイで人気のライター・石井ゆかりさんによる、12星座別の星占い『星栞 2022年の星占い』と、手帳&星占いのふたつの機能を便利に使える『星ダイアリー2022』(ともに幻冬舎コミックス)だ。2021年はどんな年だった? 2022年はどんな年になる? 『星栞』と『星ダイアリー』はどんなふうに使い分けたらいい? 石井さんにお話をうかがった。

(取材・文=三田ゆき)


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2022年は前半でチャージ、後半で暴れよう

──星模様を見ると、2021年はどんな年だったと言えるでしょう?

石井ゆかり(以下、石井) 2020年に引き続き、みんなが本当に大変な思いをした、ハードな年だったなと思います。「ハード」には「硬い」という意味もありますが、星占いの上でも、2021年は、牡牛座と水瓶座に重要な星が集まっていたのですが、牡牛座と水瓶座はどちらも「フィクスト・サイン」と呼ばれる、言わば「硬い」世界なんです。星の世界でも、硬いもの同士がぶつかりあっているようなイメージだったんですね。2021年の年明けは「風の時代」という言葉が広まりましたが、木星と土星という長い時間を扱う星が水瓶座に揃い、「風の星座」である水瓶座が強調された年でした。新型コロナウイルス感染症自体が「すごくやっかいな風邪」というような病気でもありますよね。換気や距離をとることがテーマになりましたし、「移動」も風の星座のテーマなのですが、移民の問題が思い浮かびます。また、フェイクニュースが飛び交ったり、人が傷つけあったりと、コミュニケーションの“風当たり”も強く、まさに「風が吹き荒れた」というイメージの2021年だったなと感じています。

──2022年はどんな年になりそうですか。

石井 2022年は、木星という星の足がちょっと速いので、1年全体というよりは、前半と後半に分けた方がイメージしやすいと思います。

 2022年の前半は「やさしい時間」です。木星が魚座に入るのですが、そこには既に海王星が待っています。海王星と木星はどちらも魚座を支配する、いわば「魚座の王様」のような星なので、魚座に両者が入ると「強い」状態になるとされているんですね。海王星は約165年の周期で動いているので、海王星と木星が魚座に揃うのは、私たちが生きているあいだにはもう起こりません。いわば、レアイベントと言えます。魚座は「癒し」「救済」「犠牲」などを象徴する星座です。今は本当に多くの方が、様々な形で傷ついたり、疲労したりしています。みんなが「癒し」を必要としている時期だと思うので、この配置はありがたいというか、それこそ、星に祈りたいような気持ちになる配置だなと思います。

 木星は5月上旬を過ぎる頃に、牡羊座に移動します。秋にもう一度魚座に戻ってくるんですが、基本的には、5月中旬から「牡羊座の時間」が始まります。牡羊座は「始まりの星座」であり、「闘いの星座」でもあるので、一転してとてもアツい時間が巡ってくることになるんです。世の中的にも新しいことがどんどん起ち上がりそうですし、個人の生活の中でも、新たなチャレンジをする人が増えるようなイメージです。また、8月下旬以降は火星が双子座に長期滞在するのですが、双子座はコミュニケーションの星座、火星は闘いの星で、このかたちは「議論」のイメージになるんですね。侃々諤々やりながら挑戦する2022年後半はそういった雰囲気です。

『星栞』では未来を見て、『星ダイアリー』では過去を蓄積

──12星座別の詳しい星占いや、365日の占いが読める『星栞 2022年の星占い』を読んでいると、たとえばよくないことがあったとしても、「明日には切り替えられる、いつごろには上向きになる」と思えますね。

石井 そう読んで頂けると、とても嬉しいです。私は以前はTwitter、今はLINEで毎日の占いを書いているのですが、一度、射手座だけ前日の占いとほぼ同じになってしまったことがあるんです。そうしたらみんなが「石井さん、射手座の占いが間違ってます」とおっしゃって。もちろん、星の配置を細かく読めば昨日と今日では違うのですが、毎日のことですし、短い占いなので、ざっくり読んでいたらそうなってしまった(笑)。ただ、よく考えると、二日間同じ占いの結果が続くことだって、占いの原理としてはあり得ない話ではないんです。にもかかわらず、多くのかたが迷いなく「間違っていますよ!」とおっしゃる。これは、みなさんが「今日は昨日とは絶対に違っていて、新しいことが起こる」と考えているからだな、と思ったんです。これはすごいことだ、と、ちょっと感動しました。というのも、「絶対に今日と明日の占いは違う」というのは、希望ですよね。みんな「毎日大して変わらない、同じような日が続く」と口では言いつつ、占いを読んで2日同じものが続けば、強い違和感を抱くんです。星占いは希望なんだ、と、すごく嬉しくなりました。

 人間は、「節目」を必要とする生き物なんだな、とも思います。今日と明日は夜や眠りで区切られていますよね。そこで「1日」が終わって、また新しく始まります。1ヶ月、1年という区切りもそうです。たとえば年末年始、私たちはすごくたくさんの「儀式」を行いますよね。会社や学校を休んで、いつもとは違う服装で、いつもとは違うテレビ番組を見て、私たち占いをする人も、こぞって年次版の占いを書く(笑)。でも年末年始って、実は、星占い的にはたいした節目じゃないんです。むしろ春分、秋分、夏至や冬至といったタイミングのほうが、星の動きとしては節目感があります。言わば、キリがいいんです。それなのに、特に「時間」自体には特徴の薄い年末年始に、世の中が毎年こうしてしっかり盛り上がるのは、私たちの心が、そういう時間の「境目」を必要としているからだと思うんです。時間の流れ自体には、特に継ぎ目なんてないわけですけれども、そこに儀式や習慣という仕掛けで、リセットするポイントを作って、人工的に区切っているんですね。占いは、そうした区切りに沿って用いられることが多いようです。初詣のおみくじとか、まさにそうですよね。『星栞』も、「今年はまた新しい時間になるはず」という希望に応えられるものになればいいなと思いつつ書いています。

──同じく年次版が出ている『星ダイアリー』ですが、『星栞』とのじょうずな使い分けかたがあれば教えてください。

石井 『星ダイアリー』は、「ダイアリー」という名前ですが「手帳」です。手帳のページに予定を書き込んで使ってくださるかたが多いと思うのですが、履歴を残すために使うのもおすすめです。たとえば、よく病院で「具合が悪くなったのはいつごろからですか」と訊かれますが、いつごろからか正確には覚えていないということがありますよね。私たちは、自分では自分の調子の波のようなものを、あまりちゃんと掴めてないところがあると思うんです。毎日自分の調子を書き込んでおけば、「いつごろから具合が悪かったのか」「調子がよかったのはいつか」といったことがわかるようになります。

 私は星占いに使うホロスコープを描くとき、カラフルなサインペンを使っているのですが、色ってとても便利です。イメージしやすいです。たとえば元気な日は赤、憂鬱だった日は青、というふうに色を塗っておくだけでも、かなり立派な記録になると思います。さらに、悩みを抱えたとき、不安になったときのことなども書いておくと、のちのち「私、この手の悩みは何回も乗り越えてきてる」とか、「これは杞憂だ、3日くらいで忘れる」とか(笑)、履歴をたどることで「自分の乗り越え力」みたいなものを掴むことができるんです。それがもし、星の動きとシンクロしているようなことがあれば、面白いですよね。『星ダイアリー』は、大きさもフォーマットも基本的にずっと同じなので、毎年使って下さっている方も多いんです。長期的に履歴が残れば、自分の生き方のクセのようなものもわかってくるかもしれません。

『星栞』のほうは、明日や明後日、未来のことが気になるときに見ていただくといいかなと。365日の占いもひとことずつ載っているので、一年を通して、ちょっと時間があるときに見ていただけるよう、バッグに入る文庫サイズにしています。使い分けるなら、未来のことは『星栞』で見ていただいて、過去の自分は『星ダイアリー』でたどるというようなイメージでしょうか。『星ダイアリー』には12星座すべての占いを載せていますので、ひとつの星座について詳しく知りたいときは『星栞』、ご家族や大切な人のことも考えたいときは『星ダイアリー』と使い分けていただくのもいいかもしれませんね。

──星の動きと連動させて自分のことを振り返るのも、おもしろいですね。

石井 占いって、「叩き台」的な使い方もできるのかなと思うんです。占いで「こうなるよ」と言われても、そうはならないことがありますから。でも、叩き台があれば「いやいや、それは違うぞ」と思ったときに、「じゃあどうなるんだろう、どうすればいいだろう」という具体的な案が、なんにもないときよりも出てきやすいんじゃないかと思うんです。

──宇宙規模の視点を手に入れると、自分の視野がいかに狭かったかも思い知らされます……。

石井 2020年に話題になった「グレート・コンジャンクション」は、およそ200年の周期で起こるものですが、「人間の一生よりもずっと長い時間のことを知りたい」という欲望があったから、こうした周期が時代の区切りとして考案されたわけですよね。私なんかはどうしても、自分の身の回りの小さなことに終始しがちなので、「自分の大きさよりも大きいものを作ろう」とか「自分の人生よりも長いなにかをしよう」というスケールの大きな知的欲求のありかたには、なんというか、感動しました。

文章を書いて、それを読んでいただいて、一緒に生きているという「運命」

──石井さんが占いに興味を持たれたきっかけは?

石井 昔から占いに興味があったというわけではないんです。20代で学校を出て就職したとき、世の中のことがなにもわからないまま社会人になってしまい、「明日なにが起こるんだろう」という恐怖が強くて、すごくつらくて。そんなときに占いと出会ってしまって、心が食いついちゃったんですね……(笑)。当時はたまたま星占いの教科書がたくさん出た時で、本屋さんにたくさん並んでいたんです。そこで、偶然出会えた、という感じです。

──占ったことを他者に伝えようと思ったきっかけはありますか?

石井 「伝えたい」という感じは正直あまりありませんでしたが、実験的な気持ちはあったような気がします。雑誌で読むような占いはだいたい、フォーマットというか、定型的なイメージがありました。運の善し悪し、アドバイス、○○に注意、というような感じです。そういうのとはちょっと違う書きかたができないかな、自分が書いたらどうなるんだろう、という興味がありました。2000年頃はインターネット黎明期で、「私もWebサイトを作ってみたいな」と思ったんですが、内容をどうしようと考えたとき、人が来てくれそうなのは「占い」かもと考えたんです。それで「筋トレ」というWebサイトを起ち上げました。そのころはすごく簡単な知識ですぐにサイトを作れたんです。でも、あれから20年経ってWebの技術がものすごく高度になって、私では歯が立たなくなってしまいました。で、2021年の11月に終了させたのですが、最終的に1億8000万アクセスぐらいになっていました。本当にありがたいなと思います。

──石井さんの占いは、前向きで、自分の状況に当てはめやすい言葉選びをされているように思います。そういった言葉選びをするようになったのはなぜですか?

石井 「筋トレ」をはじめた2000年ごろは、まだケータイでネットを見ることができない時代で、読んでくださるみなさんは、パソコンからアクセスされていたんです。占いコンテンツはやっぱり女性の読者が多いのですが、私より年上の方々がほとんどだったんですね。なので「先輩たちに向かって書いている」という思いがずっとありました。そのころの一般的な占いは、高い学識の先生や年齢の高い先生が「人生の先輩としてアドバイスします」というスタイルのものが主流だったと思います。一方で私は、同じ時代を生きている、同世代か少し年上の人と、フラットにお話しているという感覚。そうなると、「こんなことがあるかもしれませんよ、気をつけてね」という言いかたではなく、「今、星がこんな感じですから、みなさんこんな感じじゃないですかね」という語りになります。当時、ネットでは「インタラクティブ」という言葉がとても重要なワードでした。読んでくださるかたがたとのやりとりのなかで、今の文体ができてきたんだと思います。

 中学生の女の子が「おばあちゃんと一緒に読んでます」と言ってくださったことがあるのですが、中学生の女の子とおばあちゃんが、ふたりとも「私のことだ」と思えるにはどう書いたらいいだろうって、すごく悩みます。どんな世代の人、立場の人にも当てはまるように、と抽象的にしてしまうと、読んでいてもアタマに入ってこない。やはりなにかしら具象的なイメージが必要なんですが、それは比喩のような形で表現するしかありません。最初にカラーのあるもの、印象の強いものをポンと置いて、そこからまわりの絵を作っていくというような書きかたで、さらにそれが、年齢や性別、社会的な立場に特定されないように書いているつもりではあるのですが……いまだに、なかなかうまくはいきません(笑)。

──石井さんご自身は、2022年をどのように過ごしたいなと思われますか? その先の夢や目標もあれば教えてください。

石井 毎年言っていますが、本を読みたいですね……積ん読がひどいので(笑)。「読まないと書けないじゃないか」と思いながらも、読む時間がなくてどんどん積まれていくんです。今目の前に積んでいるのは『失われたいくつかの物の目録』(ユーディット・シャランスキー:著、細井直子:翻訳/河出書房新社)、積んでいるのは『客観性』(ロレイン・ダストン他/名古屋大学出版会)、『感情史の始まり』(ヤン・プランパー:著、森田直子:監訳/みすず書房)……いっぱいあります(笑)。あと、死ぬまでにもう何冊か紙の本を出せればなあと思ってます。贅沢かもしれないんですが。毎年出す本は、その年だけである意味、流れ去ってしまうので、できればずっと本棚に置いておける、『愛する人に。』(石井ゆかり/幻冬舎コミックス)のような本を書きたいなと願ってます。

──石井さんのご著書の読者に、メッセージを。

石井 以前、「運命」という言葉に興味が湧いて、「運命ってなんだろう」と、自分なりに色々考えたことがあるんです。会う人会う人に「運命ってあると思いますか?」とか聞いて回ってたんですが、その中で「運命ってぜったいあるでしょう、この時代に生まれて、こういう社会とか、テクノロジーの中で生きているっていう運命だよね」と応えた人がいました。「運命」というとつい「自分の人生」「自分の運命」と思いがちですが、「この時代に生まれたということ」を「運命」という言葉の意味だととらえている人がいて、そういう観点ってたしかにあるなと思ったんです。その観点から見ると、私が文章を書いて、それをみなさんに読んでいただいて、一緒に生きているということも、広い意味では「運命」だなと。なので、占いを書くときも、「みんな一緒に生きてるよね、みんな一緒にがんばろうね」という気持ち、同じ時代を生きているからこそ書けるお手紙だという気持ちで書いています。なので、そんな風に受け取って頂けたら、うれしいなと思います。

石井ゆかり 12星座の星回り×「本」占い《2022年特別編》

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