『劇場版 呪術廻戦 0』キャストインタビュー 夏油傑役・櫻井孝宏さん

アニメ

公開日:2022/1/12

櫻井孝宏さん

『劇場版 呪術廻戦 0』の製作・公開がアナウンスされた「解禁映像」は、徹底的に夏油 傑がフィーチャーされていた。「来たる12月24日 我々は百鬼夜行を行う」「さぁ、新時代の幕開けだ──」。アニメシリーズでは謎に満ちたキャラクターが、ついに素顔を晒す。

(取材・文=吉田大助 写真=山口宏之)


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あえて爽やかにすることで底知れなさが伝わっていく

 夏油 傑は呪術師と敵対する「呪詛師」、その中でも「特級」とされる凶悪な存在だ。このキャラクターを演じることになった櫻井孝宏が、一番最初に感じたことは「のっけは“なんて読むんだろう?”から始まりましたね。“かゆ? いや違うよな”と(笑)。げとう、という音の響きに、くすぐられるものがありましたね」。

 原作およびアニメシリーズで夏油が初登場するのは、人間の駆逐を目指す特級呪霊の漏瑚から、「我々はどうすれば呪術師に勝てる?」と相談を受けるシーンだ。その一連の展開が、役作りに大きく生きたと言う。

「赤信号ではちゃんと止まって、ちゃんと青信号になってから横断歩道を渡った先でファミレスへ入る時に、絵としては呪霊たちと一緒にいるんだけれども、店員さんに“1名様のご案内でよろしいですか?”と聞かれて、夏油は“はい、1名です”とにこやかに答えるんです。そうした叙述的な仕掛けもあいまって、夏油は人間なんだけれど呪霊側にいるんだということが伝わってくるんですよね。その後は普通にテーブルへ座って漏瑚と物騒なことを喋り続け、漏瑚が店の中で大変なことを起こしても、止めるでもなくにやにやしている。そもそも、何もファミレスで喋らなくたっていいわけじゃないですか。なのにわざわざファミレスに来ているところが示唆的というか意図的というか、人間に対する強い悪意のようなものを感じるんですよ。このシーンは、夏油を理解していくうえでの大きなヒントになりましたね」

『劇場版 呪術廻戦 0』
©芥見下々/集英社 © 2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会

 このシーンのアフレコ時は、スタッフからの提案を受け、演技のチューニングをした部分があるそうだ。

「一番初めのトライの後、“もっと深夜のファミレスで友達とだべってるみたいな感じでいいですよ”というディレクションをいただいたんです。脚本と原作を読んで先々の展開まで知っていたこともあり、無意識のうちに悪者っぽさというか怪しさをだいぶ出しちゃっていたみたいなんですよね。でも、説明的なキャラクター作りをしてしまうと、逆に小物っぽくなってしまうというか、チープになってしまう。あえて爽やかにしたり軽やかに見せたりすることで、この人の底知れなさが伝わっていく。だから、その後もわりと基本、爽やかにやっています(笑)」

 ニヤニヤした笑顔がスタンダードで、素の感情が伝わってこない夏油の不気味さは、呪霊たちの戦闘を背後からサポートはするものの、彼自身の動機や行動原理がはっきりしていないところにもある。呪霊の花御が、五条に敗れた漏瑚を助けにいくという意思を告げるシーンではポツリと、「よく言うよ、呪霊の分際で」。仲間であったはずの呪霊を、明らかに見下してたりもするのだ。

「あのシーンは、アニメならではの演出が効いていますよね。呪霊に聞こえるか聞こえないか、独り言みたいなセリフなんだけれども、視聴者にははっきり聞こえている。“えっ!?”ってなるじゃないですか。“絶対悪いやつじゃん!”みたいな(笑)。まさにそこのセリフの時は、夏油の歪んだ部分を少し開放しました」

『劇場版 呪術廻戦 0』

 その歪みが大々的に開放されるのが、アニメシリーズの前日譚の物語となる『劇場版 呪術廻戦 0』なのだ。「来たる12月24日 我々は百鬼夜行を行う」──予告編の声質から、アニメシリーズとはまるで雰囲気が違う。

「お待たせしました、という感じでしょうか。アニメシリーズで話題をさらったド迫力の戦闘シーンに、ようやく夏油もお邪魔させてもらうことができました(笑)。アニメシリーズでは抑えていたいろいろな感情を、思いきり発散できましたね」

続きは雑誌『ダ・ヴィンチ』2022年2月号で!

櫻井孝宏
さくらい・たかひろ●1974年、愛知県生まれ。96年にTVアニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』で声優デビュー。以降、『おそ松さん』(松野おそ松役)、『鬼滅の刃』(冨岡義勇役)、『FINAL FANTASY VII REMAKE』(クラウド・ストライフ役)など人気作品に多数出演。著作にエッセイ集『47歳、まだまだボウヤ』。

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