読書が教えてくれる「自分の物語を楽しむ生き方」 本で人生が変わる体験を発信する「TikTok図書室室長 そのぴー」インタビュー

文芸・カルチャー

公開日:2021/12/29

そのぴーさん

 1分~3分の短尺紹介動画で面白い作品と出会えることから、本好きや出版社が熱くウォッチしているTikTok。本やマンガを愛するクリエイターたちの発信力によって、ヒットや重版につながった書籍も少なくない。そんな書籍紹介クリエイターの中で異彩を放っているのが、ビジネス本をメインで紹介する「TikTok図書室室長 そのぴー」氏だ。普段は外資系企業でコンサルタントとして働いているそのぴー氏が発信で意識しているのは、実践と、その先の自分の変化につながる読書体験だという。事前アンケートで答えてもらった「自身の考え方に影響を与えた書籍」、そしてTikTokの発信にかける思いや、書籍紹介で実現したいことを聞いた。

(取材・文=川辺美希)

そのぴー氏が選んだ、「自身の考え方に影響を与えた書籍」5選

人を動かす

①『人を動かす』デール・カーネギー
【あなたも私も自分が正しいと思っているし、あなたも私も褒められたい】
現在の私の土台となっている一冊。嫌われないための生き方から人を喜ばせる生き方に変えてくれ、さらに読書の世界へ私を連れてきてくれました。

自分の小さな「箱」から脱出する方法

②『自分の小さな「箱」から脱出する方法』アービンジャー・インスティチュート
【人を人として向き合えていないことに気づくことが良い人間関係を作るための一歩】
他人に嫌われることを恐れるあまり、些細なことで人との気まずさを感じ、会話ができなくなってしまっていた私を人間関係の悩みから解放してくれました。

7つの習慣

③『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー
【自分が自分の物語の主人公であり続けるために】
大きなゴールに向かって、己を磨き、仲間と共に物語を進めていく、王道主人公になるためのマニュアルだと思います。まだまだではありますが、本書は私が私の物語に胸を張れるようにしてくれました。

サードドア-精神的資産のふやし方-

④『サードドア-精神的資産のふやし方-』アレックス・バナヤン
【一発逆転の突破口をなんてない、小さな積み重ねが全て】
今の自分の物語に胸を張れず、一発逆転の大きな突破口を探し、それが見つからないことに絶望していた時がありました。そんな私の勘違いを正し、小さな挑戦を積み重ねる大切さに気づかせてくれました。

運のいい人の法則

⑤『運のいい人の法則』R・ワイズマン博士
【運がいいと思うだけで世界が変わる】
自分は運がいい人だと思う。ただそれだけで、自分の考え方が変わり、行動が変わり、結果が変わる。そんなバカな、と私も思っていました。そんな私がバカでした。本書は私を不運からある程度幸運な状態にしてくれました。

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「モテたい」をきっかけに読んだ本で人生が変わった

――TikTokを始めた理由は何だったんでしょうか?

TikTok図書室室長 そのぴー(以下、そのぴー):私は、考え方に影響を与えた書籍としても紹介した『人を動かす』を読んで、大げさではなく人生が変わったんです。人間関係の悩みを持つ人が多い中で、私が体験したように、この本を読んだら人生が変わる人がいると、広く伝えたい思いがありました。実は以前からYouTubeやブログでも書籍紹介をしていたんですけど、あまり見てもらえなくて、1年前にたどりついたのがTikTokでした。TikTokを見ている方には、人間関係に悩む時期の若者も多くいると思うんです。私が今、27歳なんですけど、少し下の世代に向けても発信ができると思って、TikTokを選びました。

――『人を動かす』を読んだきっかけは何だったのでしょうか。

そのぴー:大学2年生のとき、サークルの先輩に紹介されたのがきっかけです。実は私、大学に入るまではほとんど本を読まなくて。パーソナルな話になるんですけど、当時、人間としてレベルアップしたいという考えを持っていたんですね。そんなときに、尊敬している先輩にこれを読んだほうがいいと言われて、しかも『人を動かす』というタイトル、「絶対面白いはず!」と思って手に取りました。読めば、自分がレベルアップできるんじゃないかなと思ったんです。

――レベルアップのために、読書も含めたいろいろなことにチャレンジしていたんですか?

そのぴー:いろいろやってきましたね。自分の背が低いことがずっとコンプレックスで。背が低い人って、弱そうとかモテない、みたいなイメージがあると思っていて。だから、自分に自信を持ちたいとか、ストレートにモテたいという気持ちで、高校、大学受験までいろいろやってきたんですけど、結局、モテなくて。高校では『アイシールド21』に憧れてアメリカンフットボール部に入って、「これならモテるだろう」と思ったけど、それもダメで。そんなときに親に言われた、「中身を磨け」という言葉が、ずっと自分の中に残っていたんですね。じゃあその中身は何かと考えたら、頭がいい、面白い、肩書きがある、そして中身ではないけど清潔感の4つだろうと、当時は思っていました。服装や髪形を整えたり、アルバイトでも認められる立場になったり、いろいろやってきたんですけど、その一環として、本を読んでその内容を実践するのが面白いんじゃないかと思ったんです。仕事を決めるときも、外資系コンサルタントってカッコいいよねっていうことで、就活をがんばって。実際に内定を取って就職して、「これでどうだ」って(笑)。

――なるほど(笑)。そういうふうに中身を磨いた結果、変化はありました?

そのぴー:モテるかモテないかでいえば、モテないんですけど(笑)。でも私的には、今の自分がすごく気に入っているんです。そういう意味で、本が自分をここまで導いてくれました。考え方や習慣も変わりましたし、他人から好かれるのではなくて、自分に好かれる自分になれたんです。

――そのぴーさんが書籍5選のコメントに書いていただいているとおり、「自分の物語を生きる」という土台を作ったのが、読書だったということですね。

そのぴー:まさにそうです。自分の物語を素晴らしいものにしたいと小学生の頃から思っていたんですが、それを実感できるようになりました。人生の主人公である自分が、読者としての自分から見て好きなキャラクターになってきたと思いますね。モテたくないというと、噓になりますが(笑)。人に好かれる人間になるより、自分が気に入る自分を突き詰めるほうに判断基準がシフトしたのは、間違いないです。

読書で自分の人生を素敵なものにするきっかけをつかんでほしい

――TikTokでの活動の目指すところは、どんなことですか?

そのぴー:動画を見た人に、本を読むきっかけや、自分の人生を素敵なものにするきっかけをつかんでもらいたいという思いで発信しています。私は動画でよく、本の一部を抜粋して「今日はこれをやってみたらどうですか?」という提案をするんですけど、なぜかというと、ただ本の内容を紹介しても、読む人は少ないだろうと。でも、その本の内容からひとつアクションを起こして、少しでも変化を実感してもらえたら、読みたくなると思うんですね。だから、アクションの提案がしやすい本を選びますし、多くの人が悩んでる人間関係やコミュニケーション、ストレスなどのテーマをピックアップするようにしています。

――そのぴーさん自身は、本で生きる土台が作られたそうですが、今もまさに、本を読むことで視野が広がったり、考え方がガラッと変わったりすることはあるのでしょうか。

そのぴー:めちゃくちゃありますね。日々、アップデートです。自分がどこまで行けるのか、が私のテーマなので、本から学ぶことが多いです。

――どこまで行けるかという「どこ」とは、具体的に目指す場所があるということですか?

そのぴー:自分が今やりたいことや面白そうなことに取り組んでいくことで、その結果、どんな場所に立てるのか楽しみなんです。目の前にあることを全力でやった結果、どこにたどり着くんだろう?という意味ですね。そのひとつがまさに今、こうしてインタビューしていただいていることでして。1年前にTikTokを始めたとき、こんな形でインタビューしていただけるとは思っていなかったですし、この1年で嬉しかったことのひとつです。こんなところに来られるんだっていう、大きな発見でしたね。

――最近の読書体験で、価値観がガラッと変わった大きな体験はありましたか?

そのぴー:アンケートでも紹介した『運のいい人の法則』では価値観が変わりました。その日、運が良かったことの日記をつけるというアクションが紹介されているんですけど、幸運へのアンテナが張られて今まで気付けなかった幸運を感じられるとわかって、視野が広がりました。それに、『脳を鍛えるには運動しかない!』という本を読んで、毎朝ジムでルームバイクを漕ぐ習慣を始めました。朝から昼にかけて、これまでの比にならないくらい頭が冴えて仕事がはかどるし、午前の気分もいいんです。もうひとつ、今まで私がこうやって誰かに何かを勧めても、伝わらないことが多かったんですよ。「どうすれば伝わるんだろう?」と思って本を読んでいたら、ストーリーで伝えなさい、と書いてある本が多いんですよね。振り返ると、自分は事実ばかり伝えていたと反省して、今まさに、ストーリーで伝えることを勉強中です。

――本を読むだけではなくて、行動にどんどん移しているんですね。そのぴーさんの書籍紹介動画も、実践と併せて本をオススメしていますよね。

そのぴー:結局、主人公が何か行動を起こさないと、物語は進まないんですよね。自分のストーリーを自分で進めていく意識は、常に持つようにしてます。動画を見てくださる方には、自分のストーリーを楽しんでもらいたいんです。私はマンガもよく読むので、ストーリーを味わうのも好きなんですけど、自分の物語を胸張って語れるものにしようよ、ということも伝えていきたいと思っています。

自分に出会って人生が変わった人に囲まれる終わりをイメージ

――今、動画や耳で聞くものなど、いろいろ情報を得られるツールがありますけど、読書という体験でしか得られないものは何だと思いますか?

そのぴー:文字媒体以外のコンテンツって、勝手に流れていくじゃないですか。でも本って、止まるんですよね。自分で流していかない限り、印象的に残った部分をずっと見ていられるわけですよね。「ここ!」って思ったら線を引けるし、一時停止ができる。そういう部分って、絶対に忘れないんです。私はオーディオブックも聞くんですけど、耳では聞き流していたのに、後から文字で読んでみると、大事なことに気付くこともあるので。勝手に流れていかないことが本の良さなのかなと、最近思いました。……大丈夫ですか、こういう回答で。こういう方向で答えてほしいっていうものがあれば、言ってください。

――(笑)ありがとうございます。サービス精神が旺盛なんですね。

そのぴー:いやいや(笑)。私、アイドルになりたかったんで。

――そこちょっと、聞いてもいいですか(笑)。アイドルになりたかったんですか?

そのぴー:私のTwitterのプロフィール、アイドル志望です(笑)。幼稚園の頃からずっと歌とダンスが好きで、今もボイストレーニングをしていたりします。アイドルって、同性からも憧れられる存在じゃないですか。エンタメとしての歌や踊りも好きだし、同性から憧れられる存在は自分の理想像なんです。今も、そういう意味でのアイドルになりたいと思ってます。自分と同じようにコンプレックスを持っている人に、「あいつがこれだけいい人生を胸張って生きてるんだったら自分もがんばろう」と思ってもらいたくて。自分のライフスタイルや生き様も、誰かの何かのきっかけになったらいいなと思っています。

――実践につながる本を読みたいビジネスマンや、家事や育児に忙しい主婦の方にオススメしたい本はありますか?

そのぴー:『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』という本は面白いです。実力がなくても、勘違いさせる力があれば評価されるよ、という本です。心理学的なことを面白く書いているんですけど、有名なものだとハロー効果というものがあって。要するにカッコいいとか、背が高いとか、見た目がいいと優秀に見えて、逆もしかりなんですよ。私がこれを読んで何をやってるかというと、会社に行くときは高いソール入りの靴を履いてます(笑)。忙しい主婦の方には、『超ストレス解消法(イライラが一瞬で消える100の科学的メソッド)』がおすすめです。ストレスの解消法が100個書いてあるんですけど、ストレスを抱えている方も多いと思うので、まずは何かひとつ、やってみるのをオススメします。

――そのぴーさんの今後の目標は何ですか?

そのぴー:『7つの習慣』という本で紹介されている第2の習慣が「終わりから考える」ことなんですけど、私は終わり、つまり自分のお葬式がどうなったらいいかというイメージが明確にあって。葬式で、たくさんの人が、私と出会って自分が変わったというエピソードを思い出しながら棺桶に花を添えてくれる、という終わりを思い描いているんですよね。「そのぴーに出会って人生がちょっと良くなった」と思ってくれる人が、ひとりでも多くいたらいいなと思っているんです。そのためにも、これまでお話ししたような、自分の人生が良くなった学びや考え方を発信していきたいです。自分の言葉が誰かの何かのきっかけになることが、人生のテーマであり、今後の目標です。

そのぴーさんTikTok
https://www.tiktok.com/@tiktok_library_ysonop

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