「ミステリーって難しいものじゃない」──小説紹介クリエイター・けんごと楽しむ「メフィストリーダーズクラブ」

文芸・カルチャー

公開日:2022/2/1

けんご

森博嗣、舞城王太郎、辻村深月、西尾維新など、多くの才能を世に送り出してきた文芸誌『メフィスト』が、会員制読書クラブ「メフィストリーダーズクラブ」(以下〈MRC〉)としてリニューアル! 会員になると、小説誌『メフィスト』が年4回自宅に届くうえ、オンラインイベントへの参加、限定グッズの購入など、さまざまな特典もある。

そんな〈MRC〉を、TikTokやInstagramで本の楽しさを発信する「小説紹介クリエイター」けんごさんが体験! 気になる感想は……?

(取材・文=野本由起 写真=山口宏之)

けんご

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「気づいたらミステリーばかり読んでいて、『あ、ミステリーってこんなに読みやすくてびっくりできるんだ』となりました」

──このたび小説誌『メフィスト』が、〈MRC〉に生まれ変わりました。けんごさんは『メフィスト』をご存じでしたか?

けんご:メフィスト賞の受賞作を読んだことがあったので、存じておりました。最近だと、『スイッチ 悪意の実験』(潮谷験/講談社)がすごく面白かったです。過去には、『六枚のとんかつ』(蘇部健一/講談社)みたいな不思議な作品も受賞していて、他にはない賞だなと思いました。

──新しくなった〈MRC〉では、小説誌『メフィスト』が自宅に届きます。けんごさんのお手元にも届いたかと思いますが、「小説誌が届く」「届いた小説誌を読む」というのはどんな体験でしたか?

けんご:面白かったですね。そもそも僕は、最近になって小説誌を読むようになったんです。これまでは単行本や文庫しか読んでいなくて。でも、小説誌に取材していただくようになり、自分が載っていることから手に取るようになりました。

──リニューアルした『メフィスト』Vol.1には、五十嵐律人さん、島田荘司さん、辻村深月さん、西尾維新さん、森博嗣さんという錚々たる作家陣の小説が掲載されています。以前から注目していた作家さんはいますか?

けんご:西尾維新さんの「掟上今日子」シリーズが載っているのがうれしかったです。シリーズ作品を全部読んでいるわけではありませんが、もともと好きだったので。僕は小説を読み始めるのが遅くて、大学1年生から読むようになったんですね。ですから、先に『掟上今日子の備忘録』というドラマを観ていて、それがきっかけで原作を読み始めました。『メフィスト』に掲載された『掟上今日子の忍法帖』も続きが気になりますし、単行本が出たら買いたいと思いました。

──「掟上今日子」シリーズのどんなところに惹かれたのでしょう。

けんご:やっぱりキャラクターでしょうか。どの作品についても思うことなんですけど、キャラクターが立っている作品は読みやすいし、想像しやすいんです。このシリーズに関しても、ドラマの掟上今日子役がガッキー(新垣結衣)だったのもあって、小説を読みながらガッキーのイメージで脳内再生していましたね(笑)。他には、『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(相沢沙呼/講談社)も好んで読んでいました。

──『メフィスト』はミステリーを中心とした小説誌です。ミステリーというジャンルについては、どんな魅力を感じていますか?

けんご:僕が小説を読み始めたきっかけは、『白夜行』(東野圭吾/集英社)。小説を読んでみたいなと思って書店に行ったら、レンガみたいに厚い本がバンと積んであって「どうせ読むなら分厚い本にしよう」と思って選んだんです。ミステリーとは意識せずに読みましたが、すごく面白くて。

──『白夜行』は映画化、ドラマ化もされていますが、そちらから入ったわけではなく?

けんご:そうですね。観た記憶はあるんですけど、幼い頃だったので。「そういえば親が観てたな」という感じでした。あとは、小説を読んでいなくても東野圭吾さんのお名前だけは知っていたんですよね。「あの有名な方が書いている作品なら面白いだろう」と思って、手に取りました。

 そこから『火車』(宮部みゆき/新潮社)や『十角館の殺人』(綾辻行人/講談社)のようなミリオンセラーや「おすすめ!」と書店で推されている本を読むようになったんです。気づいたらミステリーばかりで、「あ、ミステリーってこんなに読みやすくてびっくりできるんだ」となりました。

──最初にいい出会いをしたんですね。

けんご:そうですね。最初に選んだ一冊が、自分の好みではない作品だったら、今こんなに本を読んでなかっただろうな、という気がします。

──ミステリーの中でも、どんなジャンルがお好きでしょうか。

けんご:犯人当てが好きです。「どうなるのかな、この先」とワクワクしながら読んでいます。最近は、いろいろと疑いながら読むようになりましたね。『medium』は、「犯人はコイツだろうな」と思って「やっぱコイツだったか」のあとにワッ!と驚きがやってくる。どんでん返しのある作品や、叙述トリックが好きなのかもしれません。

──けんごさんは、若い方々が書店に足を運びたくなるよう、本を紹介されています。若い方に、もっとミステリーや〈MRC〉を楽しんでいただくにはどうすればいいと思いますか?

けんご:僕もそうだったんですけど、本を読まない方にとっては「小説=難しい」「ミステリー=超難しい」というイメージがあると思うんです。「ミステリーは気が引けちゃう」という方も多くて、僕もその気持ちがすごくわかるんですよね。「ミステリー作品はよくわからない」という声もいただくので、その印象をどう変えていくかは僕自身も考えていることなんです。実際読んでみると、当たり前ですけど事件の結末が書いてあるので、絶対理解できるはずなんですよね。「ミステリーは難しくないよ、親しみやすいんだよ」ということは伝え続けていきたいと思います。

──けんごさんがTikTokやInstagramで紹介した小説が、それを観た方にとって初めて読むミステリーになる可能性もあるわけですよね。

けんご:実際、「初めて小説を読んだ」という声もたくさんいただきます。なので、いつも文章を読むわけではない方の目線に立って、紹介するようにしています。『残像に口紅を』(筒井康隆/中央公論新社)を紹介した動画がバズった時は、超難しい作品なので「大丈夫かな」とちょっと心配になりました(笑)。「初めて小説を買いました」というコメントが来たので、「小説のこと嫌いにならないかな」って。

けんご

「僕が目指しているのも〈MRC〉のような場なんです。こういう素敵な場がどんどん広がればいいなと思います」

──〈MRC〉は会員制読書クラブなので、小説誌『メフィスト』が届くだけでなく、オンラインイベントや限定グッズの販売、おすすめ本のAI診断などいろいろな企画を楽しめます。数ある特典の中で、興味が湧いたものはどれでしょう。

けんご:僕も動画配信をしているので、オンラインイベントには興味があります。作家さんがどういう思いで作品を書かれたのか、どういう狙いだったのか、という生のご意見を聞く機会はなかなかありませんから。僕はこういう活動を始めてから、いろんな作家さんと対談させていただき、交流も生まれまして。でも、ミステリー作家さんのお話はあまり聞いたことがないので、だからこそ作品づくりの裏側を聞いてみたいと思います。

 それに、これまでお話しさせていただいた10名くらいの作家さんは、人柄と作風がマッチしている方ばかり。「文章や作品に人柄が表れるんだな」と思いましたが、逆に全然違う方ともお話しをしてみたいです。すごく不気味な作品を書かれているある作家さんは、実は優しい二児のママだと聞いて「え、ほんと!?」と興味が湧きました。作家さん同士の対談も盛り上がると思いますね。僕も来年(2022年)の3月頃に刊行予定の小説を書き始めたので、作家さんのお話からいろんな勉強をしてみたいなという気持ちもあります。

──小説を書き始めてから、読み方も変わりましたか?

けんご:大きく変わりました。勉強しようという気持ちで読むようになったので、読むのがすっっごく遅くなりました。ひとつひとつの描写が気になるようになったんです。細かいことを言えば、「ひとり」という単語ひとつとっても漢字なのかひらがななのか、作家さんによって違います。そういった違いを見ていくと、読むのに時間がかかるんです。これまでは300ページくらいの小説だったら1時間半くらいで読めていたんですけど、今は1日あっても読めないほど。1ヵ月に読む本も、つい2ヵ月前までは15冊とか20冊でしたが、今は5冊読むのがやっとですね。

──ちなみに今書かれている小説は、どんなジャンルなのでしょうか。

けんご:中高生向けの恋愛小説です。一応、その中にミステリー的な要素を入れようと考えています。

──そちらも楽しみですね。〈MRC〉には、好みの文章を選んでおすすめのミステリーと出会えるAI診断「美読倶楽部」も行えます。こちらを体験された感想は?

けんご:読みたい作品がなかなか見つからない。そう悩む人はたくさんいらっしゃると思います。この選書サービスでは、5分もかからないうちに文体だけで複数冊をピックアップしてくれて、率直な感想を述べると“楽”でした。サクッと読みたくなるような説明文も添えられているので、読書好きからすると非常に重宝されるだろうと思います。ぼく自身も読んだことがない作品を選書してもらえて、すぐにネットで注文したほどです。若い層をターゲットに小説紹介をしているので、中高生たちにも使ってほしいと思います。

けんごさんの診断結果
けんごさんの診断結果

──MRCの会員限定グッズはご覧になりましたか?

けんご:はい。家に届いた『メフィスト』や〈MRC〉のサイトもそうですけど、デザインもミステリー感満載ですよね。鍵穴のようなミステリーっぽいモチーフを使っているのが、すごく素敵だなと思いました。

──綾辻行人さんの『十角館の殺人』をモチーフにした、「十角館マグカップ」も販売予定です。

けんご:殺人が起きた館なので言い方としてはおかしいかもしれないですけど、かわいいですよね。綾辻さんご自身がブランドなので、とても価値があると思います(笑)。

──〈MRC〉を体験した感想、印象をお聞かせください。

けんご:ミステリー好きには、自信を持っておすすめしたいです。小説誌が自宅に届くって、ちょっとうれしいじゃないですか。会費は年額5500円(月額550円/ともに税込)だと聞きましたが、単行本を4冊買ったらそれ以上かかりますし、そのうえ配信サービスもあるなら全然安いと思います。これからもっとサービスが充実していくんだろうなという期待もありますしね。

──動画配信をしているけんごさんからご覧になって、「今後〈MRC〉にこういう動画があったらいいんじゃないか」というアイデアはありますか?

けんご:いろんな作品について、その一作に迫るしっかりした紹介動画があれば、より手に取りたくなるんじゃないかと思います。あとは、メフィスト賞選考の裏側を知ることができたらうれしいですね。どういう基準でその作品が選ばれたのか、全部見せてもらえたら面白いんじゃないかと思います。

──〈MRC〉は、「読書を体験として楽しんでもらいたい」という思いから生まれた、謎を愛するすべての人に向けた読書クラブです。このコンセプトについて、どう感じましたか?

けんご:とても素敵だと思います。実を言えば、僕が目指しているのもそういう場なんです。僕の場合は、ミステリーに限らず小説全般ですけど、中高生に向けて「小説って面白いんだよ」と紹介しているので。Instagramのコメント欄で、中高生同士がおすすめの本を紹介しあっているのを見るのもうれしくて。こういう素敵な場がどんどん広がればいいなと思います。

提供:講談社

けんごさんが体験した、本ソムリエのAI診断「美読倶楽部」が楽しめる、メフィストリーダーズクラブの詳細はこちらから。
「美読倶楽部」は会員登録後にお楽しみいただけます。

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