高橋文哉さんが選んだ1冊は「本質を突いた言葉に、悩みを見透かされ、しかも心を軽くしてもらえる」

あの人と本の話 and more

公開日:2022/2/8

高橋文哉さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、高橋文哉さん。

(取材・文=立花もも 写真=yoshimi)

2〜3カ月に一度、なぜか本屋に引き寄せられてしまう日があるのだと、高橋さんは言う。

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「昔からマンガよりもアニメ派だし、全然本は読まないんです。でも、そういうときは、必ず一冊買おうって決めています。いちばん最近買ったのが『嫌われる勇気』。実は僕、本を一冊読み切った経験がほとんどないんですけど、これは珍しく最後まで辿りつける予感がしています(笑)」

とくに印象に残っているのは〈お前の顔を気にしているのはお前だけだよ〉という言葉。

「わりと自由に生きてきたほうではあるんですが、それでも他人の目を気にして縮こまったり、挑戦できなかったりしたことはたくさんある。もちろん、役者は見られるのが仕事だから、そうは言っても気をつけなきゃいけないんだけれど、相手の状況を忖度しすぎて会話を弾ませられなかったり、仲良くなれそうな人にも一歩踏み込むことができなかったり、人見知りで怖気づくのは確かに損だなと気づかされました。あと、〈自慢する人は、劣等感を感じている〉ってところも刺さったんですが、そういう本質を突いた言葉に、自覚していなかったけど抱え続けていた悩みを読むたび見透かされてしまうんです。そのうえで、心をちょっと軽くしてくれる。一気に読むのはもったいないから、ゆっくりじっくり味わいたいと思っています」

同書を読んでいたのがきっかけで、映画『牛首村』の現場でもふだんより人見知りせずに済んだという。

「相手をリスペクトしながら会話ができるというのは、芝居にも影響するような気がします。『牛首村』は、明言はされていないけど意味がわかるとめちゃくちゃ怖い、っていうシーンがたくさんあるし、撮影場所が地元の人も恐れる心霊スポット・坪野鉱泉で、スクリーンからも異様な雰囲気が駄々洩れていて。駅で電車を待つシーンで、晴天だったのに撮り始めたら急に雷鳴が轟き始めたりとか、あの場所でしか生み出せない恐怖もたくさん描かれているんだけど……でも、いちばん大切に描かれているのは、“人を想う”ことの切実さでした。怪異がなぜ起きるのか、その真実が明らかになればなるほど胸が痛くなってしまう。もしかしたらこの日本のどこかで、同じことが起きていたかもしれない、であれば、ただ怖いっていう表面的な感情だけで受けとめてはいけないと思いながら演じていました。その緊張感が、皆さんにも伝われば嬉しいです」

ヘアメイク:速水昭仁 スタイリング:Shinya Tokita 衣装協力:ジャケット 5万9400円、シャツ 3万5200円、パンツ 4万2900円 全て税込(全てビューティフルピープル/青山店TEL03-6447-1869)、その他スタイリスト私物

たかはし・ふみや●2001年、埼玉県生まれ。ドラマ『仮面ライダーゼロワン』の主演で俳優デビュー。『夢中さ、きみに。』『着飾る恋には理由があって』など話題作に出演、『最愛』で注目を集める。1月よりドラマ『ドクターホワイト』出演中。

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映画『牛首村』

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監督:清水 崇 脚本:保坂大輔、清水 崇 音楽:村松崇継 出演:kōki,、萩原利久、高橋文哉、芋生 悠、大谷凛香、莉子、松尾 諭、堀内敬子、田中直樹、麿赤兒 2月18日(金)より全国ロードショー
●都内に住む女子高生・奏音(kōki,)は、心霊動画の撮影中に消えた少女が自分と瓜二つであると知る。撮影場所の富山で、少女の恋人・将太(高橋)に出会った奏音は、恋人未満の友人・蓮(萩原)とともに真相を探り始め……。2020年公開の『犬鳴村』から連なる「恐怖の村」シリーズ第3弾。
(c)2022「牛首村」製作委員会