七海ひろきさんが選んだ1冊は『チ。』――「何かを伝えようとする人間の情熱。その力に強い憧れを抱きました」

あの人と本の話 and more

公開日:2022/3/11

七海ひろきさん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、七海ひろきさん。

(取材・文=河村道子 写真=TOWA)

「『チ。』最終回まで、残り9話です」。2月1日、ツイッター上で著者が告げた物語の完結。中世ヨーロッパの異端審問を背景に命懸けで地動説を証明しようとした人々のストーリー、そのフィナーレを、七海さんは今、固唾を飲みつつ見守っているという。

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「主人公がどんどん変わっていくところに面白さを感じました。第1集を読み始めたときは、異端思想の真ん中にある真理を知ったことで、“チョレ〜”と感じていた世界への意識を変えていく少年が“この物語の主人公なんだ”と思っていた。未知なるものへの彼の探求心、自分が正しいと思うことを追求していく姿は、すごく素敵でかっこよくて。でも突然、彼は物語の舞台からいなくなる。みずからの“チ”を誰かに託し、それが新たな主人公たちへと受け継がれていったとき、魚豊さんが描こうとしたものに思いが巡りました」

 時を越え、無意識に連帯していく知性と信念は人々のなかを伝染していく。そしてそれは読む人にも――。

「この物語に描かれた人々は命を懸けて“伝えよう”としているのだな、と思いました。そして何かを伝えようとする人間の情熱は、時に世界をもひっくり返すようなものなのだと。その力に強い憧れを抱きました」

 いよいよ本公演が開幕する舞台『刀剣乱舞』も、女性初のキャストとして参加する以前から「受け継がれていく舞台」だと感じていたという。

「虚伝、義伝、ジョ伝……と、舞台『刀剣乱舞』は様々なストーリーや出演者によって上演されてきました。けれど観る方に届けたい、根底にあるものは変わらない。自分自身がその舞台に立ったことで、改めてそれを実感、確認することができました」

 一昨年、コロナ禍のために科白劇として上演された「綺伝」本公演では、科白劇に続き、細川ガラシャを演じる。

「俳優として、同じ世界線のなかで違う軸を生きるところを演じる、という貴重な機会をいただきました。戦の世に生きる女性は強くないと生きていけない。その心の強さ、そして彼女は愛に生きた人でもあるので、舞台ではその愛と強さを表現したい」

 歴史修正主義者という敵と戦う刀剣男士たち。歴史上の人物たちと彼らの葛藤は、本作でも波のごとく客席まで押し寄せる。

「観る方それぞれがご自身の考えを巡らす深い作品になると思います。そして今作も刀剣男士はめちゃめちゃカッコいい(笑)! そちらもぜひ楽しみになさってください」

スタイリスト:藤長祥平 衣装協力:ベスト3万1900円、シャツ1万9800円(共にラッド ミュージシャン/ラッド ミュージシャン 原宿TEL03-3470-6760)(すべて税込)

ななみ・ひろき●茨城県生まれ。2003年、宝塚歌劇団に入団。宙組配属後、星組へ組替え、男役スターとして活躍。2019年退団後は俳優、声優、歌手など多方面で活動中。出演作に舞台『Color of Theater「ROSSO」』『フランケンシュタイン-cry for the moon-』、アニメ『かげきしょうじょ!!』など。

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舞台『刀剣乱舞』綺伝 いくさ世の徒花

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原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」より(DMM GAMES/Nitroplus) 脚本・演出:末満健一 出演:和田琢磨、梅津瑞樹/佐野真白、松井勇歩、伊崎龍次郎、大見拓⼟、塚本凌生、星元裕月/七海ひろきほか 東京公演:3月19日(土)〜4月3日(日)明治座 他、福岡・大阪公演あり
●入電に込められた和歌の意図を汲み取った歌仙兼定ら刀剣男士が出陣した慶長元年・熊本。その地は弾圧を逃れたキリシタンたちが集う地となっていた。異変の原因を調査すると――。
(c)舞台『刀剣乱舞』製作委員会 (c)2015 EXNOA LLC/Nitroplus