「ダメダメな自分を、愛していきましょう」ずっと蓋をしていた過去を言葉に! ブリアナ・ギガンテという生き方

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更新日:2022/3/22

 2020年3月にYouTuberとして活動を始めるや、独自の“小粒ちゃんメイク”やキュートなスタイル、「あなたの夢にお邪魔します」という毒気のある挨拶と独特の間、さらには妖艶で上品な存在感と、映像に満ちる不思議な空気感で見る人を釘付けにし、またたく間に人気者となったブリアナ・ギガンテさん。このたび初の著書となる『世界でいちばん私がカワイイ』(幻冬舎)を出版、発売前に重版となるなど話題沸騰中……なのですが、ご本人は謎だらけ! いったいどんな方なのか、ブリアナさんにお話を伺ってまいりました。

(取材・文=成田全(ナリタタモツ)

ずっと蓋をしていた過去や家族のことを書いてよかった 

――担当編集のSさんから伺ったのですが、この本が出来あがるまでに約1年もかかったそうですね。

ブリアナ・ギガンテさん(以下、ブリアナ):2020年、「本を書きませんか?」と最初にご連絡をいただいたのがSさんだったのですが、わたくし、頂戴したお話は、まず1回疑ってかかる癖があって。ポンッと人を信じるのが難しいタイプなので、「…本物かな?」「このメール、開いたらウイルスだったりして?」と考えてしまい、正直「何者!?」と怖さが先行いたしました……。

 でもマネージャーがネットでSさんのことを検索してくれて、見たら「実在の人だ、優しそう」と思い直し、お会いすることにいたしました。わたくしは普段ほとんど本を読まないので、作るのにどれくらい時間がかかるのかなんてまったくの無知、あんなに原稿のやり取りがあるとは思いませんで。教科書や説明書を読むのも苦手なくらい、シワの少ないツルツルゆで卵みたいな脳みそなので、こんなに大変だったんだ、と……。でも時間はかかったけど、Sさんが「じっくり一緒に考えて、ゆっくり作っていきましょう」と言ってくださったので、安心してできたかな。

――ブリアナさんがこれまで明かしてこなかった過去のこと、ご家族のパパ・ギガンテやママ・ギガンテのこと、壮絶な生い立ちのお話で本編が始まったのでビックリしました。

ブリアナ:本を作るにあたって、Sさんとどんなことを入れるかお話ししているときに、久々に家族のことを思い出したら感情的になって、涙腺がガバガバに開いてしまったこともございまして。その後、文章として書いてみたら結構キツいものもあり……原稿が何だか暗いね、重いね、と思った部分については削るだけでなく、いろいろ悩んで、童話風にしたらいいのではないか、ということになりまして。それで絵本ぽく、ちょっと怖いグリム童話のような感じにしたらしっくりきて、そこからぐっと本作りが進んだ感じがございました。

――パパ・ギガンテとの思い出は、涙なしでは読めませんでした……

ブリアナ:自分で蓋をしていたんですよね、過去のことも、家族のことも、親戚のことも、ずっと。でもこの本で、その蓋を開けて閉めてを繰り返して……。”嗚呼!やはりこの瓶は激臭だわ!”なんて事も繰り返しながら、童話風な内容にしてからは第三者の視点と申しますか、急にわたくしが読者のような感じになって、本人なのに「ブリアナちゃん、頑張って! 負けないで! ツラいよね!」となって、結局また涙してしまいました(笑)。でもわたくしの過去を知りたかった方も多かったみたいで、このパートがよかったと言ってくださる方が多く、自分の過去を振り返って見るのも良かった事なのかな、と今は思っております。

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1回しかない人生、合わないことに使っちゃうのホントに良くない!

『世界でいちばん私がカワイイ』(ブリアナ・ギガンテ/幻冬舎)

――本書は日々何も起こらないことの幸せを大切にして、何事もバランスと距離を取り、ダメな自分も含めて愛していこう、というエネルギーに溢れていますね。

ブリアナ:過去の自分みたいになっている方に少しでも楽になってもらえたら嬉しいな、と思いまして。せっかく本のお話をいただいたわけですし。YouTubeで質問を募集すると「自分のことがイヤ」という相談がたくさん寄せられるんですけれども、過去のわたくしもそうだったんです。周りの人と比べて理解力がないと申しますか、電卓で計算してもいつも間違えばかりで、レジ打ちもできないし、仕事のやり方がいつまでも覚えられなくて、「なんでできないんだろう」と思ったり……でもなぜか、映像で覚えるものは得意だったんです。得意なものと不得意なものの差が激しすぎるんですね、わたくし。

――ブリアナさんは料理もあまりお得意ではなく、パートナーの「しゅきぴ」さんが担当してらっしゃるんですよね。

ブリアナ:わたくし、レシピに書いてあることを守れないんです。途中でひらめいたら、もうその衝動を止められないばかりか、謎の自信が出てきて「自分のやり方の方が上手くいく」と思って結局失敗する、というのを何十年も繰り返してきまして、最近はほとんど作っておりません。以前、朝食にホットケーキを焼こうということになりまして、珍しくわたくしが焼いてしゅきぴに食べさせたら、ひと口目で「何入れた? ホットケーキミックスだけではこの味にならないんだけど?」と言われました。粉をかき混ぜているときに「あ、これは絶対に美味しくなる!」とひらめいて、ヨーグルトをひとパック全部入れてしまったんです。本当に酸っぱくて、はちみつかけまくって食べましたけどね。

――想像しただけで、口の中が酸っぱくなってきました……。

ブリアナ:しゅきぴは全部食べてくれたよ、優しいね……。とんでもない顔してたけど。それはともかく、得意なものが見つけられていない、自分が落ち着ける環境や場所を見つけられていない方って、たくさんいらっしゃる。中には、とにかく頑張って、ツラい状況を乗り越えていくことで生活が充実するという方もいるけれど、なかなかそうはなれないよね。しかもそういう方って、自分がツラい状況にあることに気づいていない方も多くて。DVだったり虐待があっても、「生活があるから」と考えて我慢したり、怖くて離れられなかったりしてる。環境を変えるのってメチャクチャ労力を使うことですし、リスクも伴うから、無責任にポンポンと「行け!」とはわたくし申し上げられないのだけれど、変わる“きっかけ”を探し続けるのはメチャクチャ大事だなと思うんです。でもその手前で「ここでやっていくしかないんだ」と諦めちゃう人が本当に多くてね。わたくしは他人だから、その人が一生そこにいようが構わないけど、人に話してスッキリすることじゃないレベルで大変な方は、毎日きっかけを探し続けないとね。1回しかない人生、合わないことに使っちゃうのホントに良くないと思います。

――ブリアナさんは上手く行かなかった仕事から、自分が得意なポールダンスへシフトしたんですよね。

ブリアナ:わたくしの場合は、とにかくオーディションを受けまくって、環境を変えました。家庭や学校、仕事などの環境が合わないとどんどん精神が蝕まれるし、合わないことをしていると、やりがいも感じられない。たしかに、自分には合わないけれど、何かをやることで周りが褒めてくれることもあって、もちろん褒められることは嬉しい。けれどもそれって、本当に自分に合ったこと、好きなことで得られる達成感とは全然違うもの。でもね、「自分に合ったことが見つからない」と言っている人のほとんどが、そもそも本気で探してないと思うの。もちろん「何かいいことないかな」と思う時期はあってもいいと思います。家にいて何もしない、とかね。ただ、いつかは本気で探すことをしないと、1回しかない人生、無駄にしちゃう可能性も大いにあると言う事も、脳みその片隅には置いておかなくては。

ポールダンサーからYouTuberへの転身

――ポールダンスで自分の場所を得たブリアナさんが、コロナ禍でパフォーマンスができなくなり、そこで選択したのがYouTuberでした。突然人気者になって、戸惑ったりはしませんでした?

ブリアナ:なんなんだろう、何が起きているんだろう、という戸惑いみたいなものはございました。でもやり始めた頃は、メイクに1時間かけて、部屋を片付けて、グリーンバックの布を洗濯バサミで棒に留めて設置して、撮影を始めたらギズモ(一緒に暮らしてる獰猛な目付きの猫)がぶわーっとやって布が全部シワになってしまって、それを戻してまた撮影して、ぽよまる君(※ブリアナさんが「労働者」と呼ぶ動画編集担当者)が編集して、というのを繰り返していたのですが、わたくしが飽き性なのもあって、5回目くらいの撮影で疲れてしまったんです。でもその頃にチャンネル登録者数が増えてきて、「ちゃんと作らなきゃ」という気持ちが出てきたところへネガティブなコメントやメッセージが来るようになり、やりたくないという感情が芽生えてしまって。そうしたら、しゅきぴが「何も考えずに、その日、そのときやりたいことがあったら撮ればいいじゃない」と言ってくれたことで、「今日はラザニアが食べたいから、それを動画に収めようかな」みたいにしていたら、登録者数がすごく増え始めて、テレビにも出させいただくようになって今に至る、みたいな。

――動画が面白い、癖になると評判を呼んでいますが、撮影には何か特別な秘密があるんでしょうか?

ブリアナ:これは編集のぽよまる君が言っていたのだけれど、「つまんなくていい」と思ってるみたい。とにかくなんでもいいから、”わたくしが好きなこと”をやって、それを撮影するという感じ。しかもボーッとリラックスして撮影してるの。でもボーッと撮影すると、ぽよまる君は編集してて楽しいんですって。わたくし自身はやってることはYouTubeをやり始めた当初から変わらず、ずっと一緒なんです。この先もそう。わたくし自身もそれが結構好き。そうやって同じことを繰り返して、飽きられても自分のチャンネルでは出しゃばっていたい。飽きて一度離れてしまった方が数ヶ月後また見に来たとき、全然内容が変わってなくて、「ブリアナちゃん、まだこんなことやってんの!?」と思われるようになりたいな。しつこめなんです、わたくし。

――そのブリアナさんの世界観を如実に表している、挨拶の「あなたの夢にお邪魔します」というフレーズはどこから生まれたのでしょう?

ブリアナ:講師をしていたスタジオの生徒さん達の発表会があるんですが、その時にわたくしのこの官能的なメイクでイントラナンバーに出演したところ、わたくしの生徒さんから「先生、夢に出そうです!」と言われまして。それでYouTubeに出るとき、何かひと言あったほうがいいなと考えていて、思い出したんです。実はもうひとつ「今夜、あなたの枕元に」という候補もあって迷ったのですけれど、しゅきぴに相談したら、枕元に〜はホラー感が強いし、お邪魔の方がわかりやすいよね、ということになりました。でも「あなたの夢にお邪魔します」もホラーと捉えられてる方もいらっしゃるようで。しかしながら、わたくしがあまりにも官能的に謳い上げてしまうので、ロマンチックに聞いてくださる方が多いみたい。YouTubeを見ている方から結構クレームをいただくんですよ、全然夢に出てくれないじゃないですか、って。待っててね、順番だから。

自分が一番かわいいと思える人が増えたらいいな

――『世界でいちばん私がかわいい』には、ブリアナさんのスタイルや日々のこと、心の整え方、さらには独自の“小粒ちゃんメイク”の秘密もあって、帯の「なぜか心が救われる!」という言葉も納得の内容ですが、どうしたらブリアナさんみたいに、自分を愛せるようになりますか?

ブリアナ:わたくしは「自己肯定感」というのが苦手。確かに自分のことは好きだけど、絶対的な自信があるわけじゃなくて、自信がなくても自分が好きなんです。絵を描いたりとか、自分がどうやったら魅力的に見えるかというのも日々研究しているから、自信がある物事はあるけど、自信がない部分もたくさんあります。でも別にそれでいい、そういう自分を好きでいる、という感覚なんです。

――――ぽよまるさん情報では「ブリアナちゃんは、ショーをしていないときでも『ショーガール』だから、YouTubeの撮影中は指先にまで神経を通わせ、ショーの感覚でやっている。ブリアナちゃんの発言自体は等身大だけど、カメラが回っている間は胸を張り、肩を引いて、リラックスはしていても、あくまで表情は見栄を張っていて、彼女はそういう自分が大好きなんだと思う」とのことですが…。

ブリアナ:そんなに自信があるわけじゃないけど、自信がないことをそんなに恥じてないし、いけないことだとも思ってない。基本的にわたくしは、YouTubeも、グッズの内容も、自分がしたいことしかしておりません。だから自分が欲しいものしか作りませんし、YouTubeも自分のためにやっております。誰かのためにやっているということはほとんどなくて、ファンの方々のために、とかでもない。ただ、自分のためにしたことで、たまたま誰かが喜んでくれたらラッキー!くらいの感覚でやっています。だもんで基本的に自分のこと第一優先でお仕事やらせていただいております。

――この本を読んで、そうやって自分のこと第一優先、皆がもっともっと自分を大事にして、愛してあげられる世界になるといいですね。

ブリアナ:子どもの頃からずっと引き摺っていたことがある人が、この本を読んで気持ちが軽くなった、という感想をもらえると、よかったなって思います。わたくしのようなユルユルした人間を「諦めた人」と取る人もいるんだけど、諦めることとか、ダメな部分を持ってる人間で良いと思ってるんです。そしてこの感覚に違和感を覚える方に、わざわざ理解してもらいたいとも正直思っておりません。

――「今後の目標はない」と本にありましたが……?

ブリアナ:いつもご飯を食べられて、ギズモが体調悪くなったら病院へ連れて行けるくらいのお金があったらいいかなって。あ、でも一個だけ目標がございます。将来は大型犬と暮らしたいんです。でも今のお家は小型犬と猫のみ許可して頂いた賃貸なので、大型犬は飼えないから…。頑張って貯蓄して、暮らせるところを探したいかな。大好きなの、おっきいワンコ。

――では最後に、読者の方へメッセージをお願いします!

ブリアナ:わたくしはあんまり人に対してゴリゴリ行くタイプじゃないから、メッセージとか特にないんです……自分のために書いた、というのが正直なところなので(笑)。でもこの本が運良く誰かのヒントになったらいいかなということと、自分が一番かわいいと思える人が増えたらいいな、ですかね。ダメダメな自分を、愛していきましょう。

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