『コナンぬい』の開発についてセガに聞く! UFOキャッチャー®でぬいぐるみが大ブレイクした舞台裏

アニメ

公開日:2022/4/8

 UFOキャッチャー®でゲットできる“プライズ”やキャラクターくじ「セガ ラッキーくじ」などを展開しているセガ。中でも多くの人に愛され、続々と種類やラインアップを増やしている『名探偵コナン』のマスコット・ぬいぐるみシリーズは、ファンがぬいぐるみを連れて各所で記念に写真を撮る「ぬい撮り」文化を加速させたと言っても過言ではないだろう。いわゆる「コナンぬい」について、開発を担当するセガ アミューズメントコンテンツ事業本部の近藤さんに、企画を立てたきっかけや、製品に込められた想いなどをたっぷりとうかがった。

セガ アミューズメントコンテンツ事業本部の近藤さん
セガ アミューズメントコンテンツ事業本部の近藤さん

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――では早速ですが、『名探偵コナン』のぬいぐるみシリーズにつきまして、どのような経緯で企画を立ち上げたのか、うかがえればと思います。

近藤:最初にプライズで登場したぬいぐるみは、2016年4月に出た『名探偵コナン キーチェーンマスコット』です。ちょうどその時期に公開された劇場版『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』に合わせて、劇中に登場する江戸川コナン、赤井秀一、安室透、犯人の4人をラインアップしました。

名探偵コナン キーチェーンマスコット
劇場版『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』に合わせて2016年に展開された『名探偵コナン キーチェーンマスコット』左から赤井秀一、安室透、江戸川コナン、犯人

 『名探偵コナン』に関してそれまではアニメや劇場版のコンテンツ合わせで新作を出していたわけではなかったのですが、2014年に公開された劇場版『名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)』の公開時に赤井秀一のグッズを求める要望が上がっていた経験がありました。それをふまえて、定番キャラクターのみのラインアップから、定番キャラクターに加え劇場版に登場するキャラクターをラインアップさせて作ったことが、グッズのヒットに繋がったのかなと思います。

 実際にゴールデンウィーク明けには景品がなくなってしまい、その年の9月と12月に再リリースしました。私も当時ゲームセンターに行ったのですが、その再登場の際も長蛇の列ができて、すぐに景品が無くなっている店舗もありましたね。反応を肌で感じて、とても嬉しかったことを覚えています。

江戸川コナン
さまざまな姿、表情でリリースされている「江戸川コナン」

――キーチェーンマスコットが出る前、UFOキャッチャー®のプライズになるぬいぐるみの種類はどれぐらいあったのでしょうか?

近藤:昔は、私達の部署の中でもぬいぐるみのラインアップは、年間にして20アイテムあるかないか……のような状態が何年も続いていました。私が今の部署に来て最初の年なんて、10アイテムあったかどうかわからないレベルといいますか。でもやっぱり、「ファンシーなものがUFOキャッチャー®には入ってほしい」というところで、少しずつみんなで製品開発のチャレンジはしていたんです。それでも、なかなか定着していなかったです。しかし、このキーチェーンマスコットの登場がきっかけで、ぬいぐるみグッズへの風向きが変わったなと感じています。また、最初は『名探偵コナン』のぬいぐるみというよりは、アニメキャラクターのぬいぐるみ展開を増やしたいと考えていました。

――それまでぬいぐるみが少なかった中で、『名探偵コナン』のキーチェーンマスコットが話題になってから、周囲の反応が変わったり……といったことはありましたか?

近藤:ぬいぐるみの展開を増やすような方向性が固まりましたね。『名探偵コナン』だけでなく、同じ頃に話題となったTVアニメでもちょうどぬいぐるみが流行っていまして。割と今までは、タオルとフィギュアを中心に展開していたところが、ぬいぐるみが基本ベースに変わっていったなというイメージがあります。

安室透
トリプルフェイスを持つ「安室透」は、服やシチュエーションも豊富だ

――種類や作品が増え続けていく中で、新しいぬいぐるみを生み出し続けていくための秘訣やポリシーのようなものはありますか?

近藤:続ける秘訣……なんでしょうか。でも、一度展開すると、他のキャラクターも欲しくなりますし、たくさん続けようという気持ちになりますね。まずマスコットを出したら、今度は形を変えてくっつくタイプのぬいぐるみを出して。コナン、蘭、新一……そうしたら、平次と和葉も欲しいでしょ! みたいな。そうやっていくうちに、次は、次は……とお届けしたいものがつながっていったような気がします。

新一、蘭、平次、和葉
新一、蘭、平次、和葉……あわせてそろえたくなるラインアップ

――近藤さんも作品のファンだからこそ、大きく広げられたということなんですね。そういえば、最初に出たキーチェーンマスコットのラインアップに含まれている犯人のアソートはインパクトがありますね。

近藤:一番初めに私が犯人を入れたのが、最初のセガ ラッキーくじにラインアップされた『名探偵コナン デフォルメフィギュア』(2013年)です。やはり、良い意見も悪い意見もありましたが、だんだんと受け入れていただけるように、愛されるようになっていきましたね。他社さんのグッズでも可動式フィギュアが出されたりと、キャラとして立ってきている印象があります。

――続いて、ぬいぐるみのデザインについてお聞きします。“セガ”らしさはどういったところから生まれるのでしょうか。

近藤:作る際は、手にとってくださったお客様が喜んでくださるのが一番、と考えて制作しています。ユーザーさんの中には、ぬいぐるみをお出かけ先に一緒に連れて行ったり、写真を撮られたりという方が多いのかなと思いますので、お客様の使い方を意識して最初は持ち歩きやすく、小さいサイズのものから入るように意識しました。『名探偵コナン』に特化して言えば、主人公の新一・蘭をはじめ、様々なカップリングがあるラブコメ要素の多い作品ですので、この2人をくっつけるとラブラブだよ、遊んだりできるよ、という点もコンセプトの1つとして『くっつきぬいぐるみ』を企画しました。

名探偵コナン くっつきぬいぐるみ
『名探偵コナン くっつきぬいぐるみ』の左上から赤井、コナン、灰原、キッド

 また、同じセガ内で、他のキャラクターと横並びの展開もできるようにしています。当時ヒットしたマスコットシリーズは私が担当する他の作品でも、積極的に展開するように意識しました。また、他のキャラクターや、私以外の担当者でヒットしたデザインなども積極的に取り入れるようにしています。とくに『寝そべりぬいぐるみ』に関しては、ちょうど『名探偵コナン』のキーチェーンマスコットがヒットしたタイミングで市場に注目されていました。ですので、至急、権利元様に『寝そべりぬいぐるみ』を提案して、展開させることでセガらしさのあるブランド力の強化に繋げました。

――ありがとうございます。たしかに『名探偵コナン』は組み合わせが重要といいますか、そろえたくなる組み合わせがたくさんな印象があります。

近藤:やっぱり新一がいたら蘭が欲しいし、制服もいいけどトロピカルランド(本編の最初に出てきた遊園地)での衣装もいいよね、と衣装にも目が向きますね。

警察学校時代、同期だった5人
警察学校時代、同期だった5人

――衣装のことを考えると先にどれをラインアップに選ぼうとか、どうピックアップしようなど、結構苦労するところも多そうです。企画を考える際に苦労した点はありましたか?

近藤:過去の有名なエピソードや人気のシーンからとりたいとなったとき、衣装資料がそろっているわけではないので、ぬいぐるみに起こすためのデータを探してくるのが大変ですね。アニメを見返してその該当の場面を探して、資料を集めていました。

――やはり作品への熱意が無いと難しいお仕事なんだなと今、あらためて感じました。ちなみにデザインは近藤さんが描いているのでしょうか。

近藤:基本的には、他のデザイナー様にお願いして書いていただいたりしています。いろんな方がいらっしゃいますが、この方は男性向けの方が合っているかなとか、この方は女性向けの方が合っているかなとか。そういった、絵柄やデフォルメの特性は考えて依頼するようにしています。

――ぬいぐるみの種類展開や素材について、こだわっている部分を教えてください。

近藤:一番は髪の毛で、“ちょっとふわふわにする”ということにこだわっています。ペッタリした生地にすると、ツルッとしてしまって可愛さが半減してしまいますので。あとは、サイズでしょうか。持ち運びがしやすい小さいぬいぐるみから出して、もっといろんなものを出そうという話になったら、中くらいのサイズまで広げたり逆にもっと小さいものに挑戦したり。プライズだけでなく物販にしたり。『名探偵コナン』でいうと、10センチのマスコットが一番多いのではないかなと思います。

名探偵コナン キーチェーンマスコット
10センチのマスコットは圧巻の種類豊富さ!

――一番大きいもので、どれくらいのサイズがあるんでしょうか?

近藤:『名探偵コナン』では、70センチが一番大きいものになっています。他のタイトルだと1mが存在するらしいんですけれども、まだそちらは出したことがありません。

『じゃんぼぬいぐるみ』『特大寝そべりぬいぐるみ』
左の商品が『じゃんぼぬいぐるみ』右が『特大寝そべりぬいぐるみ』

――1m! 迫力満点ですね。ちなみに1mを作ってみようという気持ちはありますか?

近藤:今のところ『名探偵コナン』に関しては持ち運びを重視して、1mサイズは考えていないんですが、お客様の要望があれば検討したいですね。プライズに関して言えばサイズ的に筐体の中に入るのかどうかという問題があるので、大きくても60センチ、通常は40センチあたりが多くなるのかなというところはありますね。それよりおおきくなるような製品については物販として展開しています。

――やはり、サイズが上がるとその分、結構なお値段になってしまうんですね。

近藤:そうなんですよね。でも、その分ファンの方も喜んでくださって、他のタイトルですが予約も殺到して……という事例はあります。やっぱり特別感があるのかなと思います。

――大きいぬいぐるみには特有の充実感がありますよね。いつか出ることになったらと期待してしまいます。続きまして、今までたくさんの製品を出されているかと思うのですが、中でも、近藤さんが思い入れのある製品を教えてください。

近藤:最初にご紹介にしたキーチェーンマスコットももちろん思い入れがありますが、「この商品を喜んでいただけたら他のキャラクターも欲しくなるでしょう」というところで、いろんなキャラクターをラインアップできた、2017年発売のセガ ラッキーくじ『名探偵コナン-和collection-』でしょうか。以前セガ ラッキーくじは毎年、ワンダーフェスティバル(造形物の展示と販売が行われる催し)で展示してラインナップを発表していたんですが、その時点から結構ユーザーの方から反応を頂けていて、企画してよかったなと思ったのを覚えています。

名探偵コナン キーチェーンマスコット

セガ ラッキーくじ『名探偵コナン-和collection-』
セガ ラッキーくじ『名探偵コナン-和collection-』

――「ゲームセンターのプライズ」と「物販」として出す場合があると先ほどもうかがいましたが、やはり企画の立て方は異なるんでしょうか。

近藤:そうですね。プライズはまず、サイズが10センチか14~16センチ、30~40センチかの3パターンくらいのどれかにあてはめて展開して、展開の結構前から仕込んでいく、という流れのようなものは決まっています。10センチ以下のものや70センチのものはプライズに入れられないので、基本的には物販で……などと分けます。物販になる際は、プライズで展開できないくらい細かい衣装のデザインにすることなどを意識していて、あとは、くじも人気ですので、プライズのデザインにオプションがついたようなものを入れるなどという企画をしています。

『名探偵コナン キーチェーンマスコット~Memories~』
『名探偵コナン キーチェーンマスコット~Memories~』では、幼少期の姿も!

――グッズを展開していく中で、ユーザーからいろんな反応があるかと思いますが、その中で印象的な意見はありましたか?

近藤:やっぱり、グッズの情報をリツイートしてコメントくださっていると嬉しいですね。「可愛い」とか、「欲しい」とか、「どこに入ってるの」みたいなお求めいただく声も当然嬉しいですし、わかりやすいところでは、弊社の告知Twitterの反応数が上がっていくと、よかった! とホッとします。

――やはりSNSで市場調査というのは、普段からされるのですか。

近藤:そうですね。エゴサーチではないですけど、ちょっと検索してみたりすることもありますし、「最近ここらへんが盛り上がってるな」というものがあれば、そこに注目して、キャラクターをアソートしてみたりなどはあります。

SNSチームが公式Twitterアカウントでグッズ情報を出すと、キャラクターのラインアップを多く入れていることに対して、「このキャラクターが出た!」とか「これ出してくれる開発はわかってくれている!」という意見があったよと、共有してもらったりすることがあります。あとは、お客様相談室にお手紙を毎年くださる方がいらっしゃるそうで、手書きでぬいぐるみのイラストをはがきいっぱいに描いてくださって、「いつもありがとうございます」って書いてあるものを頂いたりするのですが、そういった反応も嬉しいですね。

――今後、どういった製品を出していきたいかお聞かせください。

近藤:『名探偵コナン』以外のアニメ作品で人気のふわふわぬいぐるみシリーズから、『名探偵コナン』を2021年4月から順次リリースしています。2021年11月と12月に展開したVol.6、7では、ジン、バーボン、スコッチ、松田、灰原、伊達をアソートに入れました。これまでに出ているコナンや赤井、安室、新一、蘭、服部、和葉、沖田総司など、何回も出てくるキャラクターをラインアップしながらも、ここまで広げられていますので、今後も展開に注目していただけたらなと思います。2022年4月からはマスコットサイズも連続登場予定です!

名探偵コナン ふわふわぬいぐるみ
『名探偵コナン ふわふわぬいぐるみ』工藤新一、毛利蘭

あとは、毎年春に展開させていただいているのですが、初めて2021年12月にセガ ラッキーくじ『名探偵コナン Romantic Star』を発売しました。春のくじでは入れていないブランケットやキャンバスグラフィックをはじめ、ラインアップの幅を広げています。
そして今年も4月に新作のラッキーくじを発売することが決定しています。今年のテーマは「Secret suit collection」で、キャラクターたちがスタイリッシュなスーツ姿になったセガオリジナルの描き下ろしイラストを使用しています。もちろん本くじにもぬいぐるみやマスコットもラインアップされているのでご期待ください!

2022年発売予定 『ラッキーくじH賞 ぬいぐるみマスコット』
2022年発売予定 『ラッキーくじH賞 ぬいぐるみマスコット』

――『名探偵コナン』といえば、カフェといったイベントや映画が毎年展開していますが、それに合わせてグッズを出していこうということも企画されたりするのでしょうか。

近藤:そうですね。『名探偵コナンカフェ』さんに関しては、2018年からオンラインくじでご一緒していまして、今のところ毎年、コナンカフェさんデザインの衣装をぬいぐるみなどでリリースしています。ときには賞品を店頭に飾らせていただいて、オンラインくじをやってますという、連動した紹介の形をとることもありました。

――ほかに1年の中で、「この節目には何かする」ということはありますか?

近藤:4月の映画の時期に合わせて、たくさんのお客様に製品を手にとっていただくためにぬいぐるみからフィギュアから雑貨からたくさん企画して、リリースしています。実は、以前は4月にしか展開していなかったのですが、今では徐々に他の月でも、毎月何かしら展開しています。

――現在のコロナ禍でのゲームセンターの状況はいかがでしょうか。

近藤:緊急事態宣言もあったりして、実際にお店をお休みせざるを得ないという店舗さんもいらっしゃいました。弊社としても、そういった期間はプライズを出荷できない、展開ができない状況もあったというのは少なくなかったと聞いています。ただ、それこそ『名探偵コナン』だったり、それ以外の人気のTVアニメや映画作品だったり、“これをゲットしたい”と訪れてくださった作品ファンの方々に支えていただいた部分が大きいと感じています。また、おうち時間の増加もあり、キャラクターグッズ需要が高まったと思っています。

名探偵コナン ふわふわぬいぐるみ
『名探偵コナン ふわふわぬいぐるみ』江戸川コナン、安室透、榎本梓

――最後に、『名探偵コナン』のぬいぐるみシリーズの展開を楽しみにしているファンの方にメッセージをお願いします。

近藤:私自身も『名探偵コナン』のキャラクターが好きで自分が喜べる、だからこそ、皆様がきっと喜べるであろうものを作っている自信はありますので、ぜひお手にとって可愛がってください!

――ありがとうございました!

聞き手:永野鈴夏

©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996
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※本記事で取り扱いました製品はすでに販売・展開が終了している製品もございます。

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