角田光代さんが、本格焼酎「薩州赤兎馬」のおいしさを語る! 「独特なフルーティーさと檸檬の相性がよくて、進んでしまいます」

文芸・カルチャー

PR更新日:2022/4/8

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 5年ぶりとなる長編『タラント』を上梓した角田光代さんは、お酒好きとしても知られ、その様子は、夫・河野丈洋さんとの共著『もう一杯だけ飲んで帰ろう。』や「お酒のある風景」をテーマにしたアンソロジー集『もう一杯、飲む?』に綴られている。さらには、家を建てるにあたって、“飲み屋みたいな家にしたい”を叶えるほど、角田さんにとってお酒は特別なもの。味そのものを楽しむのはもちろんのこと、お酒がコミュニケーションツールになっていると言います。そんな角田さんに、豊かなさつまいもの産地で知られる鹿児島県の老舗・焼酎蔵薩州濵田屋伝兵衛が手掛ける本格焼酎「薩州 赤兎馬」の魅力についてお話を伺いました。

(取材・文=立花もも 撮影=花村謙太朗)

――角田さんは、家を建てるとき、人を招いて飲む用に大きなダイニングテーブルを設置されたくらい、お酒や飲みの場がお好きなんですよね。

角田光代(以下、角田) そうなんです。建築士の方にお願いした条件が3つだけあって、1つは野良猫が来やすい家であること。2つめは悪目立ちしない外観であること。そして最後が、飲み屋みたいな家にしてほしいということでした(笑)。私も夫も飲むのが大好きなもので。

――お二人の共著『もう一杯だけ飲んで帰ろう。』、すごくおもしろかったです。一緒に行った酒場についてお二人がそれぞれエッセイを書かれていましたが、共有した時間は同じなのに、視点が変わればこんなにも違うものになるのかと。誰かと一緒に飲みに行きたくもなります。

角田 誰かと外で飲むことが、当たり前ではなくなってしまいましたしね。コロナが流行して緊急事態宣言が出て、お店も閉まってしまったので、ここに歩いてこられる友人たちをときどき呼んで、一緒にテーブルを囲んでいました。その飲み会にはものすごく救われましたね。

――ぜひ「赤兎馬」も家飲みに活用していただきたいです。お飲みになっていかがでしたか?

角田 おいしかったです。いい意味で、芋焼酎らしくないフルーティーさがあって。芋の香りがガツンと効いているものは、実を言うと苦手なんですよ。だけど赤兎馬には、そういう慣れていない人を退けるようなクセの強さがない。かといって、クセがなさすぎて印象に残らないということもなく、独自の香りと華やかさが爽やかに残る、非常にバランスのいいお酒だと思いました。私はふだんロックで飲むことはないんですけれど、これなら飲めるなあとも。

――どんなお料理にあわせたいですか?

角田 そうですねえ。九州のお料理と一緒に食べてみたいかもしれない。九州のお醤油は甘いって有名じゃないですか。人によっては苦手だと思うんだけど、先日読んだ北折一さんという方のコラムによると、あの甘い醤油にお刺身をびたびた浸して食べると、甘い醤油の中からふうっと刺身が出てくる。そのあと、宮崎県の焼酎を飲むと、“口の中に日南の風が吹く”んだと……何それ、やってみたい! って思ったところなんです。北折さんも、九州に行くときは甘くない醤油を持参するほど苦手だったらしいんですけど、地元の人に試してみてと言われて食べて以来、すっかりやみつきだとか。

――やはりその土地で食べ継がれているものは、地酒にも合うんですね。赤兎馬は、鹿児島の焼酎なので、鹿児島のお料理をあわせたときに、素敵な化学反応が起きそうです。

角田 さつま揚げ、きびなご、さつま汁……鹿児島のいろんな郷土料理だけを集めたレシピ本をもっているので、今度、作ってあわせてみようと思います。

――鹿児島料理専門のレシピ本って珍しいですね。

角田 珍しいですよね。鹿児島に仲良しの古本屋さんがいるのですが、以前訪ねたときに、プレゼントしてくださいました。あと、鹿児島の方と飲んでいたとき、みなさんがお湯割り専用のグラスで飲んでいたのが印象的で。焼酎をここまで入れる、っていう線がグラスに引かれているんです。それがもう、グラスの半分近くで、焼酎の割合が多いことにびっくりしました。赤兎馬も、お湯割りにして飲むなら、焼酎多めのほうがいいかもしれません。

――角田さんは以前、『もう一杯だけ飲んで帰ろう。』の刊行イベントでレモンサワー愛について熱く語っていましたが、ふだんは……。

角田 もっぱらレモンサワー党です。家で飲むときは、塩漬けした檸檬を常備しているので、それを入れて強炭酸ソーダで割って飲みます。以前はペットボトルで買っていたんですけど、毎日晩酌するものですから、ゴミの量がすごいことになって。恥ずかしいので、炭酸水メーカーを購入しました(笑)。赤兎馬は炭酸で割らず、まずロックにして檸檬を入れて飲んでみたんですけど、独特なフルーティーさと檸檬の相性がよくて、これは、進んでしまいます。

――気に入ってくださってよかったです。以前、対談等でおっしゃっていましたが、角田さんにとってお酒は、人と話すためのコミュニケーションツールにもなっているそうですね。

角田 私はものすごくビビりで、なおかつ常に緊張している人間なので、ふだんはおしゃべりするのがあんまり得意じゃないんですよ。飲まないとしゃべらないからつまらない、と友人にさえ言われてしまうくらい(笑)。だけどちょっと飲むだけで心の扉が開いて、口数も多くなるし、他者への興味も湧く。何より楽しい気持ちになれるんです。お酒という手段がなかったら、人と交流することがなかなかうまくできなくて、生きていくのがすごくつらかっただろうな、と思います。

――じゃあ、学生時代にお酒に出会って、これなら大丈夫だ、と?

角田 それが、そのことに気づいたのは40歳を過ぎてからなんです。それまでは、私はお酒が好きだからたくさん飲むんだと思っていたんですが、そうじゃない、好きというよりもっと切実な理由で飲んでいたんだ、と。

――飲みの場で人と話したことが小説に活かされることはありますか?

角田 ありますね。誰かと話すということは、異なる価値観に触れるということでもありますから。私には思いもよらない考えや過去を持った人が、さりげなく話したこと……本当に些細なことにはっとさせられて「それ、メモしていい?」って聞くこともあります。その人の話をそのまま書くことはしませんが、役に立つ・立たないにかかわらず、その場でメモすることはとても多いですね。

 最近の小説でいうと『タラント』に登場する玲という女の子は、子どものころに自分一人で新聞を作って持論を展開させていて、それがジャーナリストをめざす原点になっている、というエピソードがあるんですが、それは、夫が子どものころに新聞を作っていたという話が基になっているんです。「え、小学生でしょ?」と驚きましたが、友達と二人で作るのがすごく楽しかったという彼の話を聞いて、そんなふうにニュースに興味のある子どももいるんだなあ、と思ったことが、玲の設定に繋がっていきました。

――じゃあ、不意の出会いも訪れづらい今の状況は、いろんな意味で、さみしいですね。

角田 そうですね。こういう状況になっていなければ、自分が人と飲むことでどんな影響を受けていたのか、改めて気づかなかったかもしれません。家飲みも、楽しいですけどね。なじみの店でテイクアウトしたものを家のテーブルで広げても、おいしいし、同じ味のはずなのに、なにかが違うんですよ。たぶん私たちは料理の味だけでなく、お店の喧噪や壁に書いてあるお品書きなど、お店の雰囲気全部を味わっているんだと実感しました。

――対して、一人で家で飲む楽しみもあると思うのですが……。

角田 外で飲むより量は減りますけど、5時に終業して仕事場から家に帰ったとき飲むお酒はやっぱり格別ですよね。おいしいっていうのもあるけれど、クールダウンの効果もあるのだと思います。今日一日が終わった、今日も自分なりに頑張った。そんなふうにスイッチが切り替わるというか。仕事を終えて、お酒を飲みながら本を読んだり映画を観たりする時間は、やっぱり、ホッとします。

――最近は、どんな本を読んだり、映画をご覧になったりしたんですか?

角田 吉田修一さんの『ミス・サンシャイン』は、感情を激しく揺さぶられて、ラストで号泣しました。どちらかというと私は、そのとき飲んでいるアルコール類にむりやり食事や本・映画をあわせていくスタイルなので、上手なマリアージュが考えられないんですけど(笑)、『ミス・サンシャイン』は長崎出身の方たちのお話だから、同じ九州ということで、赤兎馬を飲みながら読むのにも向いていると思います。あとは、韓国の映画やドラマにすごくハマっているんですが、登場する人たちみんな、ものすごくお酒を飲むんですよ。

――韓国の焼酎を飲むシーンが多い、というのは聞いたことがあります。

角田 小さなグラスに入れて、みんなできゅっと飲むんですけど、何本も何本も空けていくシーンを観ながら飲むのも楽しいので、おすすめです。

――韓国映画・ドラマの魅力ってどんなところにありますか?

角田 一番は、セクシズムやジェンダーバイアス、ルッキズムといった、日本のドラマがまだまだスルーしがちな事象を、果敢にドラマに盛り込み、堂々と問題提起していくところでしょうか。観ていると、「ちゃんとせにゃ」と思わされる。「これ、違うんじゃない?」と感じたことは、ちゃんと自分なりに何が問題なのかを考えて、おそれず堂々と発信することは大事なのだ、と。政治的に不安定な時期が続いた国でもあるから、実際の事件・出来事を基にした映画が多いのも、興味深いです。最近観て印象的だったのは『偽りの隣人 ある諜報員の告白』や『弁護人』という作品かな。もっともっとたくさんあるんですけど、それはまた別の機会に(笑)。

――ありがとうございます。今日お話をうかがっていて、角田さんにとってお酒というのは、本や映画も含めて、世界と繋がる大切なツールなんだなと感じました。

角田 そうですね。減らそうと思ったことはあるけど、やめようと思ったことはないです。夫とも、お酒を飲んでいるときが、いちばんしゃべりますしね。赤兎馬を通じても、また新しい料理にチャレンジしてみるとか、新しい世界の扉を開けられたらいいなと思います。

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