阿部サダヲさんが選んだ1冊は?「旅行誌を手に、どこに行こうか考える。それも旅の醍醐味の一つですよね」

あの人と本の話 and more

公開日:2022/5/12

阿部サダヲさん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、阿部サダヲさん。

(取材・文=倉田モトキ)

「昨年末まで川平慈英さんと舞台をしていまして。旅行に行くのにいいところはないかと尋ねたら、『竹富島です!』と即答されたんです。それで、どんなところなのか調べたくて、『ことりっぷ』を買いました」

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 もともと旅行が大好きだという阿部サダヲさん。コロナ禍が落ち着いたら行こうとずっと夢見ていたそうで、その計画はまだ果たせずにいる。

「“行ってないのかよ!“って怒られそうですね(笑)。でも、ページをパラパラめくるだけで気持ちが明るくなる。“どこに行こう“って考える時間も旅の醍醐味の一つですよね」

 いつも旅先での計画は立てない。でも、地理や基本的な情報は頭に入れたくて旅行誌を買うのだそうだ。ネットではなく書籍にこだわるのは持ち歩く楽しさがあるから。

「サイズが小さめだし、旅先で手にしていてもあまり恥ずかしくないシンプルなデザインがいいんですよね。これまで旅行に行った場所の『ことりっぷ』はたいてい持っています。竹富島に行ける日が早く来るといいですね。『その時は僕も一緒に行って案内しますよ!』って慈英さんに言われたんですが、それは丁重にお断りしました(笑)」

 旅の話をする阿部さんは穏やかでとても楽しそうだ。でももし、そんな人間が実は殺人鬼だったら――? 映画『死刑にいたる病』で演じたのは、猟奇的な連続殺人鬼。白石監督からのオファーに即答したという。

「殺人鬼の役ってなかなか経験できないから挑戦したいと思いました。でも、榛村は朝起きて顔を洗うような感覚で人を殺す男で。まったく共感も感情移入もできなかった(笑)。僕は普段、役に感情を引っ張られないほうなんですが、それでも撮影初日に高校生たちをいたぶるシーンを撮っている時は“すごいのが始まったな……“という気持ちになりました」

 罪を認めながらも、1件だけ冤罪を主張する榛村。それを証明するため、かつての顔なじみだった岡田健史演じる筧井雅也に調査を依頼する。

「岡田君とは面会シーンでずっと一緒でした。雅也はいろんな謎が明らかになるにつれて、そのたびに表情や自分の立場が変わっていく。榛村はいつも冷静で芝居が一定なので、岡田君にはすごく助けてもらいました。時には“榛村が雅也の心を操ってるのかも“と深読みしてもらえそうな場面もあって(笑)。白石監督によるいろんな映像の仕掛けもあるので、そうした映画ならではの演出も楽しんでいただけたらと思います」

あべ・さだを●1970年4月23日、千葉県生まれ。92年より松尾スズキ主宰の「大人計画」に参加。2019年放送の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK)では主演を務めた。5月27日より本多劇場ほかにて『ドライブイン カリフォルニア』(作・演出:松尾スズキ)に出演。

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映画『死刑にいたる病』

映画『死刑にいたる病』

原作:櫛木理宇『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫) 脚本:高田 亮 監督:白石和彌 出演:阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、中山美穂ほか 配給:クロックワークス 5月6日(金)より全国公開
●鬱屈した大学生活を送っていた筧井雅也のもとに一通の手紙が届く。差出人は世間を震撼させた連続殺人鬼の榛村大和。中学時代、榛村が営むパン屋に通っていた雅也はなかなか榛村と殺人鬼のイメージが結びつかなかったが……。
(c)2022映画「死刑にいたる病」製作委員会