プロの子守テクやかわいい子どもたちの姿に触れられるコミックエッセイ『3時間だけママを代わります!』作者・さいおなおさんインタビュー

マンガ

更新日:2022/6/15

 育児中、もうひとり大人がいれば……と思ったことはありませんか? そんな時に大きな助けとなるのがベビーシッターという存在です。『3時間だけママを代わります! 駆け出しベビーシッターの奮闘記』(オーバーラップ)の著者で、元保育園勤務の現役ベビーシッターである、さいおなおさんに、作品に込めた思いや制作エピソードを聞きました。


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――シッターに関する漫画を描こうと思ったきっかけを教えてください。

さいおなお(以下、さいお):シッターを始めたばかりの頃、すぐコロナ禍に入り依頼が激減してしまって。収入はないけど時間だけがたっぷりありました。昔から絵を描くのは好きだった事を思い出して、お金もかからないし……と思い立ち、余った時間を使ってベビーシッターの漫画を描き始めました。

――そこからすぐ書籍発行に至ったのは、 何かきっかけがあったのですか? また作品で伝えたいメッセージがありましたら教えてください。

さいお:オーバーラップのはちみつコミックエッセイ編集部さんがオンラインで持ち込みをやっていて、そこに応募したのがきっかけです。ベビーシッターという仕事はブラックボックスのようなものなので、依頼する親御さんも初めはとても不安だと思います。一人のシッターのことを知ることで、検討してみようと思える方が増えて欲しいな、と思っています。頼れる先が増えるのは、家庭にとってもやっぱり良いことだと思うのです。ありがたいことに編集部の方々が私の思いに共感してくれ、私もびっくりするくらいとんとん拍子に書籍化が決まりました。

3時間だけママを代わります! 駆け出しベビーシッターの奮闘記

――それはすごいスピード感ですね! 作品は、依頼先で起きた出来事や子どもたちの様子をベースにして、あくまでフィクションで作品にされたそうですが、作品に描いていない、印象的な体験などはありますか?

さいお:話せる範囲になりますが……。あるご家庭で、お伺いしてからずっとお母さまも一緒に近くにいたことです。そのお母さまとめちゃくちゃお喋りをしていました。もちろん「初めてのシッター依頼でどんな人なのか心配だから」「赤ちゃんが心を開くまで不安だから」などいろんな理由で側にいらっしゃった思うのですが、お母さんが席を外しても見守りカメラで見て頂くとか、方法はあるのです。お金を頂いてお子さんをお預かりしているので、自由に過ごしてもらいたいなと思っていたのですが、ずっと側で話すお母さまを見て、「もしかして、話し相手も欲しかったのかな……」と感じて、ちょっと切ない気持ちにもなりました。

――子育て中は、子どもと2人きりでどうしても閉鎖的になりがちになるので、シッターの存在をありがたく感じる親御さんも多そうですね。ではシッターの仕事のどんな所にやりがいを感じていますか?

さいお:定期的に伺っているご家庭であれば、漫画にも描いているように、ゲームの時間を守る、宿題をやる、物を片付けるといった習慣がつくように、シッターとして動く事もあります。一回のみのご依頼であれば、保護者の方の事情に合わせて柔軟に対応できるように、というところが考えていて楽しいです。帰り際、直接その場で「ありがとうございます」とお礼を言ってもらえることが多い仕事なので、さらにやって良かったな、とやりがいを感じていられるのかもしれません。

3時間だけママを代わります! 駆け出しベビーシッターの奮闘記

――作品を読むと、家の中で自由奔放で自然体な子ども達のお世話というのは、保育園とはまた違う難しさがあるのかなと感じました。なぜそんなに子どもの扱いがうまいのでしょうか?

さいお:なんででしょうね……(笑)。扱いがうまい、という自覚はありませんが、自分自身、幼少期はかなり我が強くて主張の激しい性格だったらしいです。だから、子どもの主義主張が理解できるのかもしれません。あ、私もあの頃に感じたことあるな、というポイントを見つけることは多いです。誰しも子どもの頃に抱いた感情を覚えていることはあると思います。それを思い起こしてみると、あの時「こうしてほしかった」という点が、子どもへの接し方に反映されるかもしれません。私は「こうしてほしかった」がいっぱいあるので(笑)、きっと自ずと出てしまうんだと思います。

3時間だけママを代わります! 駆け出しベビーシッターの奮闘記

――なるほど。親になるとどうしても大人の都合で子どもを動かそうとしてしまったり、子どもの気持ちをないがしろにしてしまったりする事があります。

さいお:ただ、プロでも、親でも、お友達でも、完璧に子どもの気持ちが分かる人はいないと思うのです。なので、例えば子どもに対して怒り過ぎてしまったりして後悔してしまったりという親御さんも多いと思うのですが……。親である自分に対して完璧さを求めすぎないことも大事かもしれません。子どもは優しいので、案外、大人のダメなところも受け入れてくれます。

――作品中では、在宅ワークでベビーシッターを利用するご家庭や、ワンオペで精神的に追い詰められているお母さんの話が出てきますね。色々な家庭を見てきたさいおさんは、子育て世代の方々にどんな事を感じますか?

さいお:一日中暇が無いな、と感じます。在宅ワークのお昼休みに様子を見に来てくれる方も多いのですが、普段はそこで自分のご飯を食べつつお子さんにご飯をあげたりしてるんだろうな……と。夜は家で終業して、そのまますぐお母さんに戻るので、自分のために使える時間はほとんど無いと思います。ワンオペのお母さんも、シッティング中は出掛けられる方もいますが、別室で仮眠を取ったり、好きなことをしたりして過ごされている方も多くいらっしゃいます。それを見ると、日々の些細なことでも好きにできないのだろうな、と感じてしまいます。もちろん子育て中に自由を求めすぎると、むしろ苦しくなってしまうのも分かるのですが、そういう小さな息抜きも必要なんだろうと感じました。少し疲れた時、自分の時間がほしい時など、心のバランスを保てるようにベビーシッターも利用して頂きたいなと感じます。

3時間だけママを代わります! 駆け出しベビーシッターの奮闘記

――シッター利用時の補助制度などもありますし、気になる方はシッターを試してもらいたいですよね。ところで、シッターの仕事と書籍の執筆作業をどうやって同時にこなしていたのでしょうか?

さいお:始めは慣れなくて頭の中がこんがらがってしまい、切り替えるのが大変でした。漫画を描こうとしてもすぐに集中できなくて……。あと、作業用のタブレットを持ち歩いて移動中の電車で描いていたり、依頼の合間にカフェに寄って描いていたりもしたので、タブレットのせいでリュックが重くて体力的にもちょっと大変なところがありました(笑)。これからも、徐々に自分のやりやすい方法を見つけていきたいなと思っています。

――やっぱり体力勝負な所が大きかったのですね。

さいお:疲れでメンタルが落ちてしまい、ダラダラしてしまう時間も長いことに気付きました。その時間ってやっぱりもったいないので、最近は体力作りのために運動を始めました。運動の他にも睡眠をきちんと整えるのはかなり大事だな、と痛感しています。

――シッター業務と平行しながらの執筆作業本当にお疲れ様でした! 最後に、応援してくださっている読者の皆様、そしてこれから作品を読まれる方に向けて、メッセージをお願いします。

さいお:現役ベビーシッターによるコミックエッセイは、まだあまりないんじゃないかなと思います。シッターがどんなふうに仕事をしているか興味のある方、子育ての参考にしたい方、これから子育てをする予定の方、身近にお子さんが生まれた方などなど、子どもに関わる皆さんにはピッタリの一冊になっています。役に立つ他にも、笑ったり、しんみりしたり、漫画として楽しめるように頑張って描きましたので、一度お手に取って頂けたら幸いです!

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