絵本作家・ヨシタケシンスケ作品おすすめ7選&インタビューまとめ

文芸・カルチャー

2018/4/29

 見慣れているはずなのに、視点を変えてみたらなんだか変。そんなさりげない日常を独自の世界観で切り取ったエッセイや、奔放な妄想でぐいぐいストーリーが展開する絵本が人気のヨシタケシンスケさん。多数ある絵本たちの中でも連続して受賞するほどの人気絵本は、子どもだけでなく、お父さんお母さんたちにもファンが多い。そこで、ヨシタケ作品のそれぞれの魅力と、私たちを元気にしてくれる不思議な力をもった作品を生み出してきたヨシタケさんご本人のインタビューを一挙まとめてご紹介します。

ヨシタケシンスケ(よしたけ・しんすけ)
絵本作家、イラストレーター。1973年神奈川県生まれ。2013年に刊行した絵本デビュー作『りんごかもしれない』で第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、『りゆうがあります』で第8回同賞第1位、『もう ぬげない』で第9回同賞第1位の三冠に輝く。『このあとどうしちゃおう』で第51回新風賞など受賞作多数。著書に『なつみはなんにでもなれる』、子育てエッセイ『ヨチヨチ父―とまどう日々―』など多数。

■絵本作家・ヨシタケシンスケさんのアトリエ訪問 『りんごかもしれない』『もう ぬげない』の自由な発想はここから生まれた!

 絵本作家・ヨシタケシンスケさんが生まれ育った家に戻ってきたのは10年前。妻と2人の子どもたち、家族で暮らすその家の2階に仕事場はある。

ヨシタケさん「ここは仕事場というより部屋なので、好きなものばかり置いちゃって、まぁ、気が散りますね(笑)」

 そんな“部屋”からまた楽しさの異なる新しい2冊の作品が生まれた。

ヨシタケさん「読んだ人が、これ、どんな風に作ったんだろうとか、ついつい想像していただけたらいいなって。描いていることしか読み込めないものでは面白くない、自分で描いていても気になって仕方なくなる、そんな隙間の空いている話にしたかったんです……」

■ヨシタケシンスケの最新絵本!今度の絵本は、こねて、のばして……?

『こねてのばして』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)

『こねてのばして』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)は、男の子が、何やら白い生地のようなものをこねたりのばしたりする絵本。男の子の行動がどんどんエスカレートしていく。「パン生地か何かかな」と思ったのも束の間、顔を押し付けたり、一緒に踊ったり、くるまったり……「あれ、これ何なんだろう? パン生地じゃなかったの?」と、だんだん気になってくる。

 もしこれがパン生地だったら、大人たちは「食べ物で遊んではいけません!」と注意するだろう。しかし現実から切り離して見ると、率直な感想は「気持ちよさそう」。不思議と「これもあり」と思えてくる。そう考えると、子どもが見せる不可解な行動にもきっと理由があるのだと、それを一緒に楽しむこともできる気がする。常識に振り回される日常に疲れたら、この絵本を読んで、普段の思い込みを捨て去ってみてはいかがだろう?

■初めての赤ちゃん、そして育児―父親視点で見ると……? 思わず笑っちゃう、ヨシタケシンスケの育児エッセイ

『ヨチヨチ父 とまどう日々』(ヨシタケシンスケ/赤ちゃんとママ社)

 生まれたばかりの赤ちゃんにとって、この世の全てが初めて。生まれる前から我が子を感じている母親と違って、父親は、生まれてきて初めて“我が子”という生き物に触れることになる。『ヨチヨチ父 とまどう日々』(ヨシタケシンスケ/赤ちゃんとママ社)は、そんな新しい生活の変化に戸惑うパパを描いたイラストエッセイ。

 母親ならば、育児の悩みをママ友と共有できるのだろうが、シャイな父親は1人で悶々とするらしい。決して余裕があるわけではないようだ。

 夫の態度にイライラしたり、「もっと父親としての自覚を持ってよ!」と叫びたくなったりした時は、本書を読んでみるのもいいかもしれない。ぐっと距離が近くなり、ちゃんと家族の一員として夫が機能していく可能性も大いにある。まだ出産していない人、また男性でも、読んでおいて損はない一冊だ。

■「○○な本ってあるかしら?」ムチャぶりに応えてくれる“妄想書店”が大ヒット! 文庫犬にカバー変更器…? ヨシタケシンスケの妄想力がすごい!

『あるかしら書店』(ヨシタケシンスケ/ポプラ社)

 いつでもどこでも本を手に入れることのできる世になって久しいけれど、ついつい書店に足が向いてしまうのは、宝探しにも似た気持ちがあるからなのかもしれない。

“本の本、あります”という看板が掲げられた「あるかしら書店」を舞台にした一冊『あるかしら書店』(ポプラ社)は、そんな想いを持つ人々の願いや妄想を形にして叶えてくれる本だ。

 書棚を模した“もくじ”、 “ちょっとめずらしい本”、“本にまつわる名所”、“本のまつわる道具”、“本にまつわる仕事”“図書館・書店について”など、それぞれのカテゴリーには、不思議で可笑しな本たちがずらり。ヨシタケさんの題材はいつも日常にある、当たり前すぎて考えもしなかったこと。“なぜ自分は本を読むことが好きなのか”。そんな当たり前すぎて考えもしなかったことの答えが、この本からはやさしく立ちあがってくる。

■なんかつまんない、と思ったらまずはこの一冊を! MOE絵本屋さん大賞3冠 ヨシタケシンスケ最新作『つまんない つまんない』

『つまんない つまんない』(ヨシタケシンスケ/白泉社)

 ヨシタケシンスケさんのまなざしをとおすと、なんてことのない風景がぼんやり光り出す。『つまんない つまんない』(白泉社)も、そんな、暗闇にあかりをともすような絵本だ。

「うーん… なんかつまんない。」という子どものつぶやきから始まる本作。彼はもう、打てる手はすべて打った。おもちゃは手にとってみたし、たぶん部屋という部屋のドアはあけただろう。テレビも本も全部ためしたけどだめ。そういうときって、大人にもある。

 男の子は考える。つまんないのって誰のせい? そもそもつまんないってなんだ? そんなこと考えているうちに男の子は気づく。「つまんないこと」をいっぱい考えるのっておもしろい! ……この発見が、ヨシタケさんの魔法だ。日常に転がっている疑問やネガティブな感情を、宝物に変えてくれる。

「つまんない」と思ったときはまず、この本を手にとることをおすすめしたい。

■ヨシタケシンスケの最新絵本『このあと どうしちゃおう』は「死」がテーマ――頑固な大人の涙を誘う

『このあと どうしちゃおう』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)

“泣ける”と銘打たれているものは苦手、そんな頑固でひねくれ者の大人にこそ読んでほしい絵本『このあと どうしちゃおう』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)。

 物語はシンプルだ。死んだおじいちゃんの部屋からボクが見つけた「このあとどうしちゃおう」ノート。そこにはおじいちゃんが想像した、死んだあとのことが描かれていた。楽しそうな死後の世界に笑いながら、おじいちゃんは何を考えていたのだろうと思いを馳せる。そんなボクにお父さんは言う。「ほんとのところはおじいちゃんにしかわかんないよねェ」。そうなのだ。ああ、もっと話をしておけばよかった、と。

 そんな思いで綴られる本書はユーモアが満載だ。「いじわるなアイツはきっとこんなじごくにいく」で描かれる地獄の風景には吹き出してしまう。隣り合わせの“面白い”と“悲しい”を不謹慎とせず、一緒に抱きしることができれば、本書はきっと宝物になるだろう。

■『もう ぬげない』『りんごかもしれない』…膨らみ続けるオモシロ妄想も「まずは常識を知ることから」―ヨシタケシンスケ インタビュー前編

 ヨシタケシンスケさんの絵本『もう ぬげない』は、“服が頭に引っかかってぬげなくなった男の子”の絵とインパクト大のタイトルが、SNSでも大反響。「このまま脱げなくても生きていけるかな」と想像を膨らませるストーリーも絶妙だ。今回は作者のヨシタケシンスケさんに直撃インタビュー。『もう ぬげない』誕生秘話から裏話まで、ヨシタケさんの“頭の中”をのぞかせてもらいました!

 ヨシタケさん「僕はもともと、おもしろいものを見つけるとイラストに描いて残すという習慣があって、電車でもお店でも、人間観察というか常にキョロキョロ周りを見ているんです。ある時スターバックスで仕事をしていたら、僕の席の反対側に……」

■押しつけがましい絵本を拒絶していた子供時代 『もう ぬげない』ヨシタケシンスケの“伝え方” インタビュー後編

 ヨシタケシンスケさんの“ネガティブパワー”から生まれる日々のスケッチと、そこに込められた絵本への熱い思いについて。インタビューはさらにディープな世界に突入します!

ヨシタケさん「(前略)僕はネガティブな子供だったので『大人が言うみたいに夢ってなきゃいけないの?』『目的を持たないといけないの?』という疑問を常に持っていて。僕と同じように考える子供は今もたくさんいるわけで、そういう子にどう言えば伝わるか、絵本でどう表現すればいいのか。これは、大きなテーマですね……」

■自分ってどんな人? 『りんごかもしれない』の作者が描く大人も楽しめる発想絵本!『ぼくのニセモノをつくるには』

『ぼくのニセモノをつくるには』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)

 自分自身について深く考えることは少ない。しかし、定期的に自分を見つめるということはとても大事なこと。そこで読んでほしいのが、『ぼくのニセモノをつくるには』(ブロンズ新社)。ヨシタケシンスケの発想絵本第2弾だ。

 やりたくないことをやってもらうため、けんたくんは自分のニセモノを作ることにする。おてつだいロボは、けんたくんになりきるために、「あなたのこと、おしえてください」と言う。そこでロボットに説明しようと、自分について考えていく。

 考えていく中でけんたくんは、おばあちゃんからの言葉を思い出し、「ぼくは ひとりしかいない」と説明する。大人でもついつい他人と比較して落ち込んでしまうが、本当は人を比較することはできない。自分を認めてあげると、相手のことを深く思いやれるようになるだろう。悩んでいる人や大切な人と一緒に、こんな絵本を楽しんではいかがだろうか。

■あなたは、りんご1個でどれだけ妄想できる? りんご1個でシュールな妄想を繰り広げる絵本がおもしろい!『りんごかもしれない』

『りんごかもしれない』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)

 人は目にしたものを、経験からそれが何であるか考え認識する。しかし、普通の人には見えない“何か”を認識するこが、“想像力”だ。

 第6回MOE絵本屋さん大賞で第1位に輝いた『りんごかもしれない』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)のストーリーはこうだ。ある日主人公が学校から帰ると、テーブルの上にりんごがあった。普通なら「りんごだな」で終わってしまう。しかし、この子は「これはりんごじゃないのかもしれない」と考える。中にメカがつまっているかも、何かのたまごかも、など様々な可能性を考える。1つのりんごについてひたすら妄想する絵本である。

 毎日が単調、何か面白いことはないか、そんなことを考えている人には本書を読んでほしい。世界の秘密を探るような切り口がシュールで、視野が広がる。目の前にあるものが実は自分の認識している世界と違うかもしれないなんて、楽しすぎる!