マンガ家が主人公の熱いマンガおすすめ5選。プロ漫画家の日常と妄想を覗き見してみない?

マンガ

更新日:2018/7/23

 マンガ家という職業には、いかにも“マンガ向き”なアツい設定がたくさんある。モノを作り上げることへの情熱、売れているマンガ家への憧れや嫉妬、いつ打ち切られるかわからない仕事上の恐怖。そんなマンガ家の世界を、実際に活躍している人気マンガ家たちが描いたら、でき上がる作品はおもしろいに決まっている。今回は、そんな傑作ぞろいの“マンガ家マンガ”の中から、バリエーションに富んだ5つの作品を紹介する。

■少年マンガ好きならまずは読むべし ジャンプの内幕を描く『バクマン。』

『バクマン。』(大場つぐみ:著、小畑健:イラスト/集英社)

 原作の大場つぐみと、作画の小畑健は、2003年に連載を開始した『DEATH NOTE』(集英社)以来、常に少年マンガの最前線を駆け抜ける最強コンビ。そんなふたりになぞらえるように、高校生2人が原作と作画でタッグを組み、「週刊少年ジャンプ」でアンケート1位&アニメ化を目指して奮闘するのが『バクマン。』(集英社)だ。アンケート至上主義などのジャンプ誌内部のリアルな漫画作りを描きつつ、主人公たちは、同世代の漫画家と切磋琢磨しながら成長していく。まさにジャンプ三大原則「友情・努力・勝利」を体現するマンガだといえよう。

■『バクマン。』のレビュー記事は【こちら】

advertisement

■少女マンガ家を夢見て美大受験に挑む『かくかくしかじか』

『かくかくしかじか』(東村アキコ/集英社)

 少女マンガ好きには、『かくかくしかじか』(東村アキコ/集英社)をおすすめしたい。『ママはテンパリスト』(集英社)『東京タラレバ娘』(講談社)『海月姫』(講談社)など、いくつもの人気作を発表してきた東村アキコ。彼女の作品を読んだことがある人ならば、「あとがき」や「タラレBar」に出てくる破天荒な「東村アキコ」自身のおもしろさを知っているはずだ。『かくかくしかじか』は、東村アキコがまだ林明子(高校3年生)だったころ、美大受験のために入った絵画教室で竹刀をもった「先生」に罵られるところから始まる自伝マンガ。あとがきそのままのテンションで突っ走る、笑いあり、涙ありの全5巻だ。

■『かくかくしかじか』の関連記事は【こちら】

■「隠し事」は「描く仕事」!? ギャグ漫画好きには『かくしごと』

『かくしごと』(久米田康治/講談社)

『さよなら絶望先生』(講談社)『じょしらく』(ヤス:作画/講談社)などで知られる久米田康治。いまでこそ時事ネタや言葉遊びのイメージが強いが、デビュー作の『行け!!南国アイスホッケー部』(小学館)や『かってに改蔵』(小学館)では下ネタを連発し、著者近影で裸を披露していたことも。『かくしごと』(講談社)の主人公・後藤可久士は、そんな若かりし頃の著者を思わせる、ちょっと下品な作品を描くマンガ家。でも、最愛の娘に、こんな恥ずかしいマンガを描いていると知られるわけにはいかない…! だから「描く仕事」を「隠し事」にしている、という後藤の奮闘を描くコメディマンガだ。久米田ファンならニヤリとする小ネタもちりばめられている。

■『かくしごと』のニュース記事は【こちら】

■国民的大ヒット作『海猿』の裏には何があった? 『Stand by me 描クえもん』

『Stand by me 描クえもん』(佐藤秀峰/リイド社)

『海猿』『ブラックジャックによろしく』で知られる佐藤秀峰。圧倒的な人気を誇る一方で、『漫画貧乏』(PHP研究所)などで苦しいマンガ家の実情を訴え、出版業界への問題提起を行ってきたことでも有名だ。ベストセラーとなった『漫画貧乏』の“マンガ版”ともいえるのが『Stand by me 描クえもん』(リイド社)。マンガ家を目指して貧乏生活を送る青年・満賀描男(まんが かくお)は、「未来から来た自分」と名乗る謎のおっさんに、「お前…漫画家目指すのやめろ」と言われてしまう。自分のことをよく知るおっさんの発言に戸惑いながらも、ついにデビューが決まり、作品はヒット街道を走り始めた。しかし、ふとテレビを見ると「自分が原作者だ」と名乗る人物がいて――。原稿料や契約書の問題など、古き慣習の残る出版業界に切り込む。

■『Stand by me 描クえもん』のニュース記事は【こちら】

■ピークを過ぎたマンガ家の苦悩――30代の心に響く『零落』

『零落』(浅野いにお/小学館)

『ソラニン』(小学館)や『おやすみプンプン』(小学館)などで若者から支持を得てきた浅野いにお。中年マンガ家のリアルを描く『零落』(小学館)には、同年代の作者が抱える思いが込められている。長期連載を終えた主人公・深澤は、風俗街に通いつめ、編集者である妻との関係も冷え切っていた。納得のいく次回作の構想はなかなか作れず、かつてのアシスタントからも馬鹿にされてしまう…。世間が求めている作品と、自分がおもしろいと信じる作品のズレに苦しみながら、深澤が最後にたどり着く境地とは。深夜に一気読みしたい1巻完結のマンガ。

■『零落』のレビュー記事は【こちら】

 どうだろう? 気になる作品はあっただろうか。ひとくちに“マンガ家マンガ”といっても、どんな人生を経てマンガ家になったのか、どんなマンガを描いていたのか、といったことで内容はさまざまだ。そんな“マンガ家マンガ”に共通する魅力は、作者が創作を通じて感じたこと、考えてきたことがダイレクトにマンガに描かれていることだ。この世で活躍しているマンガ家の数だけ、その人が駆け抜けてきた物語がある。

文=中川 凌