「人妻と少女の同性愛」「燃えるような不倫関係」小説の美しいベッドシーンまとめ

文芸・カルチャー

2018/6/30

 小説に登場するベッドシーンは、グロテスクに性を炙り出したものから、爽やかな切り口でえぐみをまったく感じさせないものまで、実に多種多様だ。本稿ではそんな中から、素直に「美しい」と感じるベッドシーンを5つご紹介したい。

■蘭の花は、美しく官能的…まるで女性の身体のよう

『ため息の時間』(唯川恵/新潮社)は恋をせずにいられない男女のための短編集。「夜の匂」は、付き合いたての男女を描いている。

長いキスの後、井沢は右手で幹子の両手首を掴み、頭の上へと持ち上げた。それから脇の下に顔を突っ込み、舌を這わせた。かすかにあの蘭に似た甘酸っぱく、生々しい匂いがした。

 蘭という花の、美しさとグロさを併せ持った様を、女性と結びつける描写が印象的だ。この話は途中から彼女(幹子)の親友が介入してきて予想外の結末を迎えるので、ぜひそこもチェックしてほしい。

■燃えるような禁断の愛は、切なく、美しい

 互いに家庭を持つ身の男女の燃えるような不倫関係を描いた、渡辺淳一氏の『失楽園』(講談社)。不倫がばれて窮地に追いやられていく2人が交わるシーンだ。

軽い弾みとともに、男が真っ先にまさぐるのは女の唇だが、すぐ思い直したように、いましがた涙が滲んだ瞼(まぶた)をとらえ、そこから真上へ唇を重ねる。

 全体的にドロドロとした不倫の内容で、アブノーマルなプレイも登場するが、それぞれのベッドシーンの描写はとても繊細で美しい小説だ。

■あえぎ声とともにのけぞった私の目を太陽の光が射貫いて…

『さよなら、ニルヴァーナ』(窪美澄/文藝春秋)は少年犯罪の加害者、被害者の遺族、加害者を崇拝する少女、そして環の外から彼らを見つめる作家志望の女性の4人が絡み合う様子を描いた物語。以下は作家志望の女性のベッドシーン。

挿入したまま、男の親指が私の突起をやさしく撫でる。男が身体を屈め、ちゅうう、と音がするほど、乳頭を吸い上げた瞬間、あえぎ声とともにのけぞった私の目を太陽の光が射貫いて、目の前が真っ白になった。

 その内容はリアルなのにもかかわらず、いやな生々しさを感じさせず美しい。そんなベッドシーンを読みたいのならば窪美澄氏がおすすめだ。

■流した涙を飲みこみ合う。女同士の情緒的なベッドシーン

『卍』(谷崎潤一郎/新潮社)人妻が少女との同性愛に溺れていく様を描いた物語。以下は、ふたりが初めて肌を合わせる場面からの抜粋だ。

すると突然光子さんの方からも、「殺して、殺して、―――うちあんたに殺されたい、―――」と、物狂おしい声聞えて、それが熱い息と一緒に私の顔いかかりました。見ると光子さんの頬にも涙流れてるのんです。二人は腕と腕とを互の背中で組み合うて、どっちの涙やら分らん涙飲み込みました。

 女性同士のベッドシーンは、やはり一味違い、快楽と感動とが融合するような美しさが感じられる。

■最愛の人の汗の匂いは、とても懐かしい匂いがした

 ネット連載発の『ボクたちはみんな大人になれなかった』(燃え殻/新潮社)は、主人公のボクが、昔付き合っていた“最愛のブス”との思い出を回想しながら今を生きる物語。

暗闇の中で必死に彼女に手を伸ばす。いつも冗談ばかり言っている彼女が、求めてくる時にだけ見せる真剣な眼差しが好きだった。彼女の汗の匂いはとても懐かしい匂いがした。

 渋谷のラブホテルで最愛の彼女と過ごした、若かりし日々。東京の街で途方に暮れるふたりの若い男女が求め合う場面は、美しく、そして何よりも切ない。

 美しいベッドシーンを読むと、なんだか爽やかな後味が残る。私たちのDNAの最深部に刻み付けられた“性”という最大のテーマのひとつは、小説家の手にかかれば、こんなにも美しい姿となる。

文=K(稲)