直接脳髄に恐怖が届く… 現実を侵食するような悪夢のホラー漫画おすすめ4(死)選

マンガ

更新日:2018/9/3

 夏の定番といえば、ホラー漫画や怖い話。ホラー漫画に没頭することで暑さを忘れ、背筋がゾッとするのを活かすならば、残暑厳しい今こそ、ホラー漫画がオススメです。窓を開けて、外から聞こえてくる虫の声をBGMにしながら、ゆっくりじっくりと読んでみてください。怖いけれども止まらない、読むことがやめられない…。夢中になって読んでいるうちに、さっきまで虫の声だと思っていたものが、実は違うものだったことに気づくかもしれません…。

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■ネットで話題の「おちょなんさん」を越える恐怖。怪電波が届ける正体不明の「おぐしさま」とは?

『後遺症ラジオ』(中山昌亮/講談社)

 独特な造形が超コワいと、ネットで一躍話題となった「おちょなんさん」を生み出したショートホラーの名手が描くのが『後遺症ラジオ』(中山昌亮/講談社)。日常生活の中に潜む理不尽な恐怖、突如襲いかかる怪異をテーマに、生理的嫌悪感を刺激するような絵柄で表現したこの作品は、1話の中だけでも怖い話が満載。一見すると関係ないような各話が、実は「おぐしさま」という正体不明の存在を軸に繋がっていくという伏線も張られています。

 人は“理由のない恐怖”のほうが理由のある恐怖よりも怖く感じるもの。でも、おぐしさまという、原因がわかったところで、本作の恐怖は薄れていくのでしょうか? 否、むしろ、どんどんと理不尽と恐怖の渦に巻き込まれていき、現実が揺らぐ…。そんな極上の恐怖体験を味わうことができることでしょう。

■平凡な家族を襲う凶悪な霊、立ち向かうのはひとりの老婆!

『サユリ』(押切蓮介/幻冬舎コミックス)

 ホラーというジャンルにつきものとも呼べる存在、老人。不吉な予言をしたり、呪いをもたらしたりする役割として定番となっていますが、『サユリ』(押切蓮介/幻冬舎コミックス)では、たやすく人を惨殺する凶悪な霊に対して、ひとりの老婆が立ち向かいます。

 映画化もされ大ヒットした『呪怨』を彷彿とさせるような陰惨で残酷な霊が、どこにでもいるような平凡な家族を、ズタズタに引き裂いていき、もう後がない! というときに立ち上がったのは、なんと認知症の老婆でした。恐怖に塗りつぶされていた世界が、老婆の生命力と力強さによって描き換えられていく様子は痛快である一方、理不尽な霊へ復讐するために老婆が選んだ方法は、それもまたホラーなものです。果たして、霊と老婆の戦いの結末は? ぜひ、ご自身の目で確かめてみてください。

■幼なじみの美少女幽霊と巡る、バリエーション溢れるホラー世界

『死人の声をきくがよい』(ひよどり祥子/秋田書店)

 ホラー漫画は、恐怖を追求するという性質上、主人公が命を落としたり絶望的な状況に陥ったりということが多く、どうしてもある程度テイストが固定されてしまいがち。そんな中にあって、主人公や舞台を変えずに、「世にも奇妙な物語」もさながらの、豊富なバリエーションの恐怖を提供してくれるのが『死人の声をきくがよい』(ひよどり祥子/秋田書店)。

 幼なじみの美少女幽霊に取り憑かれた主人公が、口のきけない霊に助けられながら、さまざまな恐怖に直面していきます。どこか80年代臭を漂わせる懐かしいテイストと、霊や呪いから、宇宙人、UMA、殺人鬼、都市伝説まで、さまざまな分野の恐怖を、高いレベルで味わわせてくれるストーリーが見事に融合し、読み出したら止まらない正統派ホラーとなっています。

■絵から伝わってくるなんともいえない不快感、実話だからこそ伝わる恐怖

『白異本』(外薗昌也:原作、高港基資:作画/日本文芸社)

 実話怪談を元にした異本シリーズの最終作である『白異本』(外薗昌也:原作、高港基資:作画/日本文芸社)。本作には、ホラー漫画家・原作者として活躍する外薗氏が収集した怪談を元にしたオムニバス漫画が収録されており、日常や現実が歪んで壊れていく様子を、漫画ならではの表現力によって、なんともイヤ~な感じで描写してくれます。表紙に描かれた顔だけでも手に取るのを躊躇する人がいるというのも納得できます。その絵には、単なる恐怖だけでなく「私たちが立っているこの世界が本当に確かなものなのか?」という不安をもたらすような力が秘められています。この漫画を読んでいる間、あなたの現実はきっと揺らぎ続けることでしょう。

 絵柄や描かれた題材のまったく異なる4つの作品を紹介しました。どれもが怖いけれども、不思議と読むのをやめられなくなるような、魔的ともいえる魅力が秘められているものばかりです。気がつくと夢中になってしまう作品は、夏だけでなく、秋の夜長を堪能するのにもオススメです。ただし、中には、著者が実際に不可解な体験をしたといういわくつきの作品も含まれていますので、しっかりと心の準備をしてから、読み始めてくださいね…。

文=龍音堂