35歳屈強なボディビルダーが魔法少女になったなら…異端の魔法少女漫画まとめ

マンガ

更新日:2018/11/12

 少女が不思議な力で変身して問題を解決する、といういわゆる「魔法少女」ものは、50年以上前から人気のある分野です。世界的に高い人気を誇る『美少女戦士セーラームーン』も、ある意味ではこの系譜といえるでしょう。そんな長い歴史を持つジャンルであるからこそ、21世紀には新しいタイプの魔法少女がどんどん誕生しています。本稿ではそんな中でも特に異色の作品を紹介したいと思います。

■少女が変身するのは「イケメン」の魔法少女

 魔法少女というのは、少女が魔法などの不思議な力によって変身するわけです。ですので、変身した後の姿が、可愛らしい衣装を着たイケメンだったとしても、定義上は魔法少女で間違ってはいないといえるでしょう。

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 そんなシュールな魔法少女が活躍する作品が『魔法少女 俺』(毛魂一直線/ふゅーじょんぷろだくと)。変身する力を授けてくれる精霊が極道のような外見をしていたり、変身するための呪文は、好きな人への愛の告白など、骨格はシンプルな魔法少女ものでありながら、お約束が全て斜め上に設定されていることによって、ほのぼのギャグ漫画として成立しています。アニメ化もされたハイテンションで異色な魔法少女漫画、ぜひ1度ご覧になってみてください。

■憧れのヒーローの姿は魔法少女だった!

 ヒーローや怪人が一般的な世界で、ヒーローに憧れる男が手にした力は、「魔法少女に変身する」というものだった! というとギャグストーリーをイメージするかもしれません。確かにアラサーでガタイのいい男が、可愛らしい衣装を着た女の子に変わるということで巻き起こるさまざまなドタバタが話の中心ではありますが、それだけに留まらず、なぜ、少女の姿に変身してしまうのか? また、ヒーローの力の意味は? なぜ、戦う必要があるのか? といったシリアスなストーリーもきっちりと存在している『俺とヒーローと魔法少女』(九段そごう/フレックスコミックス・ほるぷ出版)は、コメディとしても、ヒーローものとしても読むことができるお得な作品です。

■容姿端麗、頭脳明晰、でも、その性格だけはヤバかった…

 可憐な女子高生が、人類の敵と戦うために魔法の力を授かるというのは、魔法少女物として王道のストーリーです。そんな王道らしさをあらわすように主人公は美しく、さらにお金持ちのお嬢様であり、なおかつ学業も優秀という高スペックでありながら、ニコチン中毒で下品、そして暴力的ヤンキーという、強烈なギャップが異彩を放つ『間違った子を魔法少女にしてしまった』(双龍/新潮社)。

 インパクトのある設定に目が行きがちですが、主人公はヤンキーで下品といっても、乙女な部分や、年相応の可愛らしい部分、素直な部分も多く持っており、可愛い魔法少女衣装で敵を容赦なく殴り倒すというギャップと、粗暴なヤンキーに見えて、実はピュアという2種類のギャップで読者を楽しませてくれます。

■魔法という「力」を手に入れたことで翻弄される少女たち

 魔法少女が力を与えられる理由は、何らかの外敵と戦うためというパターンが多いのですが、なぜ力を与えられたのかは、謎に包まれており、その力を使う方向性も基本的に定められておらず、共通するのは、魔法の力を与えられるのは、不幸な少女ということだけという作品が『魔法少女サイト』(佐藤健太郎/秋田書店)。

 不幸な少女が、魔法の力を与えられたらどうなるのか? 不幸な少女たちは力を手に入れることで、幸せを手に入れることができるのか? 魔法少女という可愛らしい響きとは異なり、常にダークなトーンで進んでいくだけでなく、不幸な少女がどんどん登場するために、読む人を選ぶ作品ではありますが、はまる人はどっぷりとはまること請け合いです。

■ボディビルダーが魔法少女に! イロモノだからこそできる大人向け魔法少女物語

 少女ではなく、35歳の屈強なボディビルダーが魔法少女に変身する『魔法少女プリティ☆ベル』(KAKERU/マッグガーデン)。思いつきで生まれたかのようなインパクトのある設定ですが、ボディビルダーが魔法少女になった理由は「小学生の女子を戦わせるわけにはいかない」という至極まっとうなもの。

 この発端からもわかるように、魔法少女という題材を、できるだけ現実に落とし込んで描写していくというのが本作品の特徴です。魔法という現実的ではない能力や、魔族や天使などといった存在を、現実社会の政治や戦略に組み込んでいくというのは、斬新な切り口といえるでしょう。また、性描写や暴力描写がかなり過激なために、まさに大人向けの魔法少女漫画といえるでしょう。

 本稿で紹介した作品は、全て魔法少女を題材としていますが、主人公が少女じゃないものは当たり前、さらにストーリーもファンタジーだけでなく、ギャグやコメディ、ホラー、アクションなどと幅広く展開されています。これだけさまざまな分野で表現されるということは、魔法少女という文化がすっかり根付いた証拠といえるでしょう。変化球が多いために、好みがあると思いますが、気になったものがあったら読んでみてくださいね。

文=龍音堂