アラサー世代が歓喜するリブートアニメはただのリメイクじゃない! 現代版に加えられた新しい魅力とは?

アニメ

公開日:2019/9/14

 最近、懐かしいアニメの“リブート”作品が増えている。リブートとは、その作品が持つコンセプトはそのままに、新解釈でストーリー等を再構築すること。今は特にアラサー世代をターゲットにしたものが多く、事実、その世代から多くの反響を集めている。ここで、アラサーならばきっと気になるリブート作品を3作品ピックアップ! 各作品の詳細はみなさんの記憶にお任せし、現代版に加えられた要素を中心に紹介していく。

■磨きがかかった社会風刺と、萌え要素満載のねこ娘 「ゲゲゲの鬼太郎」

『ゲゲゲの鬼太郎』(水木しげる/講談社)

 言わずと知れた妖怪漫画のパイオニア・水木しげるの『墓場の鬼太郎』を原作に、東映動画(現在の東映アニメーション)によって『ゲゲゲの鬼太郎』と改題され1968年にTVアニメの第1期がスタート。それから、1971年の第2期、1985年の第3期、1996年の第4期、2007年の第5期と続き、2018年4月から放送を開始した第6期のTVシリーズは、2019年9月現在も引き続き放送中だ。

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『ゲゲゲの鬼太郎』と言えば、妖怪を通して描かれる社会風刺が特徴としてあげられ、今期もその要素はしっかりと引き継がれている。

 例えば、第1話の冒頭には、渋谷のスクランブル交差点で自撮りをする若者が出てくる。動画配信者と思われる彼は、自撮り棒を片手に「これから渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で、信号無視したらどうなるかやってみるね~」と言って、赤信号を無視して交差点の真ん中で注目を浴びようとする。しかし突然彼は苦しみ始め、なんと大木に変化してしまう。これは「吸血木」という妖怪の仕業なのだが、現実でもネット上に迷惑な動画・画像を載せて注目を浴びようとする人は残念ながら存在する。こんな現実の社会問題を、第1話から描いているのだ。

 そして現代版として加えられたのは、いわゆる萌え要素だ。特に8頭身美少女のねこ娘にノックアウトされた人は数知れず、鬼太郎へのツンデレ属性も相まって、「今期のねこ娘、表情豊かでかわいすぎる」などと大絶賛されている。しかも物語の中で幼児化までするというサービス(?)ぶり。アラフィフ、アラフォーにもおなじみの作品のため、この変わりように違和感を覚える人はいるかもしれないが、アラサー世代に大ウケであることは間違いないだろう。

■原作通りの結末を迎える完全新作!「フルーツバスケット」

『愛蔵版 フルーツバスケット』(高屋奈月/白泉社)

 白泉社のコミック雑誌『花とゆめ』で、1998~2006年に連載された『フルーツバスケット』。累計発行部数は3000万部を超え、「もっとも売れている少女マンガ」としてギネス世界記録にも認定されている。

 2001年にアニメ化されたが、当時は原作が完結していなかったことで結末はアニメオリジナルだった。しかしこの4月からスタートした2019年版は、すでに原作が完結しているため、2001年版とは異なる原作通りの展開となる。2019年版の制作にあたって原作者で総監修を務める高屋奈月氏は、スタッフに「すべて新しいメンバーで作ってほしい」という要望を出していることから、新コンテンツとして世に送り出すという作り手の熱意に溢れた作品なのである。

 とはいえ、主役の女子高校生・本田透(ほんだとおる)と、異性に抱きつかれると動物に変化してしまう草摩一族との心温まる交流を描いた物語の本筋と、アゴクイや壁ドンといった胸キュンイベントがてんこ盛りなのは2019年版でも変わらない。当時のドキドキした気持ちを思い出しつつ、アニメとしての新たな結末を見届けよう。

■新たなストーリーで紡ぐ劇場版3部作! 「交響詩篇エウレカセブン」

「交響詩篇エウレカセブン」(BONES:原作、片岡人生、近藤一馬:漫画/角川書店)

 2005~2006年にTV放映された『交響詩篇エウレカセブン』は、斬新な設定と映像に加え、それらとの親和性を考慮して音楽にテクノミュージックを採用するという、当時かなり先進的な試みで作られた作品として話題を呼んだ。そしてTV版の映像をベースに、新解釈で描き出す劇場版全3部作が2017年からスタート。2017年に第1部の『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』、2018年に第2部『ANEMONE 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』が公開され、今年2019年に第3部『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション3』が公開予定だ。

 前述の通り音楽に大きな特徴を持つ本作だが、その点は劇場版にも引き継がれている。第1部の音楽はドイツのテクノユニットであるHardfloorが挿入曲を提供し、さらにTVシリーズで挿入曲を担当したHIROSHI WATANABEも参加。第2部では、TVシリーズで使われていた曲「Tiger Track」のリマスタリングをHIROSHI WATANABEが担当している。公開後、観客からは「見てきました。音楽とメカアクションが最高」「Hardfloorという選択のセンスも好き」といった音楽を絶賛する声も目立っている。LFOというロボットがサーフィンするように空中を飛び回る動きとテクノミュージックが絶妙なハーモニーを奏で、劇場版ではより磨き上げられた爽快感を味わうことができるのだ。

“新解釈”という形でリブートし、TVシリーズとは異なる展開を見せる劇場版『交響詩篇エウレカセブン』は、文字通りの懐かしさと新しさを体験できる作品だ。第3部上映を前に、劇場版2作はもちろん、TVシリーズも復習しておくことをおすすめする。

 以上、アラサー世代に思い入れの強い人が多いであろう3作品を取り上げてみたが、ほかにも懐かしい名作が多くリブートしているのでチェックしてみてほしい。作品自体にさらなる魅力をプラスするリブートアニメ。大人になった今だからこそ気づく、新たな輝きが見つかるはずだ。

文=木島祥尭