永野芽郁がイメージキャラクター! 読書の秋必読の「文春文庫 秋100ベストセレクション」厳選オススメ本7選

文芸・カルチャー

更新日:2021/9/14

(c)澁谷征司

 読書の秋。「どんな本を読もうかな」と悩んでいるなら、ぜひとも「2021 文春文庫 秋100ベストセレクション」を参考にしてみてほしい。「秋100ベストセレクション」は、毎年、読書の秋にあわせて開催される文藝春秋による文庫フェア。この秋に読むべき名作が厳選されているから、どの本を手に取っても極上の読書体験が楽しめるのだ。中でも今年の目玉作品のひとつは瀬尾まいこさんの本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』。10月23日に実写映画が公開予定で、主人公を演じた永野芽郁さんは「秋100ベストセレクション」のイメージキャラクターも担当しているのだ。『そして、バトンは渡された』をはじめとして、このフェアには、見逃せない作品がたくさん。その中でも特にオススメしたい7つの作品をご紹介しよう。

『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ/文藝春秋)

『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ/文藝春秋)

永野芽郁主演で映画化! 血縁以上の繋がりを描く感動作

 永野芽郁さん主演で実写映画化される『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ)は、血の繋がりよりも大切なものを気付かせてくれる温かな物語だ。主人公は、幼い頃に実の母親を亡くしてから、次々と親が代わるという境遇で育った17歳の女子高生・森宮優子。血の繋がらない親の間をリレーされ、17年間で4回も名字が変わった彼女には、3人の父親と、2人の母親がいる。だが、彼女はまったく不幸を感じていなかった。それは、いずれの親からも一身に愛を注がれ育ったためだ。血の繋がりは尊いが、大切に積み重ねてきた日々は時にそれを超える。いつも側にいてくれる身近な人にきっと感謝の気持ちがわいてくるこの作品は、映画化を契機に、これからますます注目を集めるに違いない。

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『沈黙のパレード』(東野 圭吾/文藝春秋)

『沈黙のパレード』(東野 圭吾/文藝春秋)

福山雅治主演「ガリレオ」シリーズが9年ぶりに映画化!

 累計1400万部突破の東野圭吾の大人気シリーズ「ガリレオ」。中でも『沈黙のパレード』は二転三転していく謎解きがクセになる至極のミステリーだ。福山雅治主演の「ガリレオ」シリーズ実写化作品の9年ぶりの新作として2022年に映画が公開されることも決定。今、大きな注目を集めている作品なのだ。「ガリレオ」シリーズで描かれる容疑者は、どの人物も愛と哀しみに満ちている。この作品もそれは同様。23年前の少女の殺人事件から始まるこの物語からは、あらゆる登場人物の悲哀が滲み出る。「ガリレオ」を実写化作品でしか知らないという人も多いかもしれないが、そんな人でも、きっとこの作品には心震わされる。映画公開前に、この話題作をぜひとも小説でも味わってみてほしい。『沈黙のパレード』を読む前にシリーズを総ざらい!


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『コンビニ人間』(村田 沙耶香/文藝春秋)

『コンビニ人間』(村田 沙耶香/文藝春秋)

36歳、18年間コンビニアルバイト…「普通」って何? 考えさせられる芥川賞受賞作

 36歳で未婚・処女。職歴はコンビニアルバイトのみで、18年間毎日同じ繰り返し。もし、そんな人がいるなら、世間の常識で考えたら、将来に不安を抱いて当然だろう。だが、『コンビニ人間』(村田沙耶香)の主人公・古倉恵子には、そんな危惧は一切ない。悩んでいるとしたら、おかしいと思えない自分を見る周囲の目が少々うっとうしいことくらいだ。この作品はさらっと読める一方で、内容は濃い。恵子という女性をどういう風に捉えるかは人それぞれだろうが、親近感を持って感情移入しても、まったく理解できないおかしな人として読んでも、心に何か刺さるものがある。普通とは一体何か。この本を読むと、改めて考えずにはいられないのだ。



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『イニシエーション・ラブ (文春文庫)』(乾 くるみ/文藝春秋)

『イニシエーション・ラブ (文春文庫)』(乾 くるみ/文藝春秋)

バブル最盛期の恋愛を描く『イニシエーション・ラブ』大どんでん返しの魅力

 松田翔太×前田敦子で実写映画化されたことでも知られる『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ)。文庫解説を担当した書評家の大矢博子さんは、この作品の魅力は、ミステリーとしても恋愛小説としても楽しめることにあると分析する。描かれるのは、バブル最盛期1986〜87年を生きるとある男女のごくありふれた恋愛模様。だが、スマホもメールもZoomもない時代の遠距離恋愛には、驚きの仕掛けが。物語が終わるほんの3ページ前あたりから急激に膨らむ違和感。思わず「えっ?」と声が出るエンディング。恋愛小説として感情移入できるからこそ、仕掛けがわかったとき、そこに見えるまったく別の絵に驚かされてしまう。この本に騙されないなんて不可能。何度も読み返さずにはいられなくなる驚愕の作品をぜひともあなたも体感してみてほしい。



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『飛ぶ孔雀』(山尾悠子/文藝春秋)

『飛ぶ孔雀』(山尾悠子/文藝春秋)

あなたの一生の読書傾向を左右する、圧倒的密度の幻想小説

 山尾悠子の『飛ぶ孔雀』はとんでもない小説だ。幻視の力に圧倒され、自分がいけない本を読んでいるのが理屈抜きで感じられるのだ。ストーリーを分かりやすく要約するのは困難。物語の舞台となるのは、石切り場の事故以来、火が燃えにくくなっている世界だ。年中咲いている桜、分裂した山、橋を渡って不思議な力を手に入れた少女、火を盗むために降りてくる孔雀、そして真夏に開かれる大茶会…。不条理な、それでいてどこか懐かしいイメージの断片が連なり、仄暗い世界をパズルのように形作ってゆく。この本の妖しい魅力は絶大。一生の読書傾向を左右しかねない危険性さえある。幻想小説好きなら、体験しない手はない一冊といえるだろう。



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『マスク スペイン風邪をめぐる小説集 (文春文庫)』(菊池 寛/文藝春秋)

『マスク スペイン風邪をめぐる小説集 (文春文庫)』(菊池 寛/文藝春秋)

コロナ禍の私たちと変わらない…菊池寛が、スペイン風邪流行下で感じていたこと

『マスク スペイン風邪をめぐる小説集』に収載されている掌編「マスク」は、文藝春秋創設者の菊池寛がスペイン風邪流行下の実体験をもとに描いた作品だ。ちょうど100年前に描かれた作品であるはずなのに、まるでコロナ禍の現代人を描いているかのような記述に驚かされてしまう。この物語の主人公は、うがいやマスクで感染予防を徹底し、新聞に出る死亡者数の増減に日々一喜一憂している。だが、いつ終わるか分からない感染症との戦いに、次第に緊張感は緩みがちに…。そんな姿は、コロナ禍の現代人にそっくり。人の心は変わらないということなのか。100年後も変わらない人間の心理を巧みに描き出した菊池寛の名作を、コロナ禍の今こそ、読んでみてほしい。


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『マチネの終わりに (文春文庫)』(平野 啓一郎/文藝春秋)

『マチネの終わりに (文春文庫)』(平野 啓一郎/文藝春秋)

たった3度出会っただけの人が運命を変える…アラフォー男女の大人のラブストーリー

 何度も会うことによって深めていく恋もあれば、少し会っただけでどうしようもないところまで落ちてしまう恋もある。芥川賞作家・平野啓一郎氏の『マチネの終わりに』は、出会ってすぐに惹かれあったアラフォー男女の大人のラブストーリー。福山雅治×石田ゆり子で映画化もされたことでも知られる名作だ。物語の中で、2人が出会うのは、たった3度。大人の2人にとって恋愛は人生のすべてとは言えない。そうであるはずなのに、たった3度出会っただけのはずの人が、人生を確かに変えていく。2人の男女の恋愛模様と生き様に、魂が震えるような思いがする。大人だからこその恋愛に、その切なさに、あなたも強く心揺さぶられるに違いない。



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 その他にも「2021 文春文庫 秋100ベストセレクション」には、珠玉の作品が勢ぞろい。その内容は心温まるものから切ない気分にさせられるもの、ドキドキさせられるものや考えさせられるものなどバラエティ豊かだ。普段から本を読む人も、あまり本を読まないという人も、きっと自分好みの作品に出会えるはず。さぁ、あなたも「秋100ベストセレクション」を参考に、読書の秋を満喫しよう! ページをめくる手を止めることができない——そんな気分の高揚をぜひあなたも味わってほしい。

文=アサトーミナミ

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