『あさイチ』でも話題に! ミニチュア写真家・田中達也が「装画」を手掛けた、見惚れてしまう本

文芸・カルチャー

更新日:2021/10/8

『MINIATURE LIFE at HOME ミニチュアライフ アットホーム』
(田中達也/水曜社)

 NHKの情報番組『あさイチ』に出演(10月1日放送)し、話題になったミニチュア写真家・田中達也さんをご存じだろうか。Instagramのフォロワー数は320万人超。2011年から毎日SNS上で発表しているアート「MINIATURE CALENDAR」では、日用品とジオラマ用人形を組み合わせたユーモアあふれる世界を生み出している。ブロッコリーの小さな木陰に憩う一家。連結したコッペパン電車に乗り込む旅行客。プールに見立てられた青いマスクを泳ぐ水泳選手…。ミニチュアの視点でみると、日用品は全く別のモノに見えてくる。2017年のNHKの連続テレビ小説『ひよっこ』のタイトルバックを担当した他、田中達也さんは、書籍の装画も多く手がけている。そこで、田中達也さんが装画を担当した書籍を紹介! 遊び心あふれた装画を見ていると、ついつい本の中身も気になってきてしまうに違いない。

『残り全部バケーション (集英社文庫)』(伊坂 幸太郎/集英社)

『残り全部バケーション (集英社文庫)』(伊坂 幸太郎/集英社)

 日常から一歩ズレた世界を面白おかしく温かく描き出す作家といえば、伊坂幸太郎氏をおいて他にいないだろう。伊坂氏による『残り全部バケーション』(集英社)は、裏社会の下請け稼業に携わる2人の男の友情を中心とした物語。離婚する中年夫婦と娘、父親から虐待を受けている小学生男子、車に閉じ込められている女性、小学校時代の友人について語る映画監督…。連作短編の形式をとりながらも、伊坂ワールドも全開。非日常の場面設定に思わず、笑えてきてしまうこと間違いなしの一冊! 伊坂幸太郎氏の世界観と、田中達也さんの装画は相性バツグンだ。
詳細を読む

『熱帯』(森見 登美彦/文藝春秋)

『熱帯』(森見 登美彦/文藝春秋)

 まず、世界の真理レベルの話として、森見小説はおもしろい。次に「誰も結末にたどり着けない謎だらけの奇書」という設定に心惹かれぬ本読みはいない(はず)。ゆえに、森見登美彦氏が「誰も結末にたどり着けない謎だらけの奇書」をめぐる冒険を描いた物語に食指が動かぬ読書人はいないだろう。「さあ、みなさん、奮って読みましょう!」……で、終わらせたいほど、『熱帯』(文藝春秋)を説明するのは難しい。なぜならこの1冊は、「森見登美彦のすべて」が込められていると思しき、とんでもない大作だからだ。そんな本作の世界をひきたたせる田中達也さんの装画はなんと美しいことか。
詳細を読む

advertisement

『ただいま神様当番』(青山 美智子/宝島社)

『ただいま神様当番』(青山 美智子/宝島社)

 田中達也さんによる色鮮やかな装画――『ただいま神様当番』(青山美智子/宝島社)は、「私、ついていないかも!」「絶対神様に見放されている!」と思った時におすすめの一冊。ちょっぴり笑えて、じんわり心が温かくなるこのエンタメ小説は幸せの見つけ方を教えてくれる作品なのだ。主人公はごく普通のOL。だが、ある日突然、彼女の左手には神様が宿ってしまう。神様は、自由奔放。それも夢を叶えてくれるわけではない。しかし、実は神様が口にする願いはその人自身が蓋をしてきた想い。登場人物たちは神様という存在を通して、これまで形にならなかった感情と向き合い、どこかに置き忘れてきた“自分の叫び”を知るのだ。いいことばかりではない人生をどう変えるかは、自分次第。そう訴えかける本作は、生き方に迷った時に手に取りたい人生指南本だ。
詳細を読む

『木曜日にはココアを (宝島社文庫)』(青山 美智子/宝島社)

『木曜日にはココアを (宝島社文庫)』(青山 美智子/宝島社)

 私はいつも何のために、あるいは誰のために毎日頑張っているんだろう…。そう思い悩み、立ち止まった時は、『木曜日にはココアを』(青山美智子/宝島社)を読んでみてほしい。この作品は、2021年本屋大賞2位を受賞し話題となった『お探し物は図書室まで』の青山美智子さんのデビュー作。今にもココアの甘い香りが漂ってきそうな田中達也さんの装画と同様、この物語からも優しい香りが薫ってくる。1杯のココアから始まる全12編のあらゆるエピソード。曲がりくねった道を懸命に歩もうとする12人の何気ない言動に触れることで、読み手自身の日頃の頑張りも報われたような気持ちになるのだ。
詳細を読む

『月曜日の抹茶カフェ』(青山美智子/宝島社)

『月曜日の抹茶カフェ』(青山美智子/宝島社)

 川沿いの桜並木のそばにたたずむ喫茶店マーブル・カフェを舞台とした『木曜日にはココアを』。『月曜日の抹茶カフェ』(宝島社)は、その続編に当たる青山美智子さんの最新作だ。マーブル・カフェの定休日にあたる月曜日、京都の茶問屋のひとり息子が開くカフェが舞台。……かと思いきや、第1話にしてその抹茶カフェは一回きりの限定イベントであることが明かされる。その“一回きり”というところにこそ、本作の肝はあるのだ。田中達也氏の装画同様、この作品からは抹茶を嗜んだ時のような温かさがある。傷つき迷いながらも変化していく主人公たちの心に、偶然のめぐりあわせで“すとん”とその言葉が落ちる瞬間。その奇跡のような瞬間は、誰のもとにも訪れるのだということを、青山さんは教えてくれる。
詳細を読む

 田中達也さんの作品を見ていると、いつの間にか童心に帰ってしまう。思いがけない発想にクスッと笑わされたり、驚かされたり。そして、毎日作品を継続して生み出し続けることに感嘆せずにはいられない。10周年記念作品集『MINIATURE LIFE at HOME』が好評発売中である他、2021年11月26日(金)~12月13日(月)期間には、広島のそごうで展覧会「MINIATURE LIFE展2 ~田中達也 見立ての世界~」も開催予定だという田中達也さん。あなたも洒落っ気たっぷりの田中達也さんのアートをぜひとも体感してみてほしい。彼の作品は、これからもたくさんの人々を楽しませ続けてくれるに違いないだろう。

文=アサトーミナミ

あわせて読みたい