シスターフッドを感じられる! 女あるじとメイドの関係性が魅力的な漫画3選

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更新日:2021/12/6

女あるじとメイドの関係性が魅力的な漫画3選

 2021年8月20日に、長田佳奈『うちのちいさな女中さん』(コアミックス)の第1巻が発売された。昭和初期を舞台に、翻訳家の女性・蓮見令子と蓮見家で働く14歳の少女・野中はなの日常を描いた物語。Twitterでも「時代考証がしっかりしていて生活シーンの描写が丁寧」と話題を呼んでいる。本作は、「月刊コミックゼノン」(コアミックス)で連載中だ。

 本作のように、「雇い主」である女あるじと「雇われる側」である存在の関係性を描いた漫画は、他にもある。本記事では『うちのちいさな女中さん』の見どころのほか、女あるじとメイドの関係性が魅力的な漫画を、2作品紹介する。

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昭和初期の文化の描き方が丁寧で魅力的!

うちのちいさな女中さん
『うちのちいさな女中さん』(長田佳奈/コアミックス)

 第二次世界大戦前まで、「女中」と言われる職業があった。「家計を助けるため」や「口減らし」のためなどというイメージが抱かれがちだが、実は嫁入り前の礼儀作法を学び、修業するための教育の場として、認められていたという。また、戦後には国が雇用して、占領軍家庭での仕事に従事していた歴史もあるのだそう。

 長田佳奈『うちのちいさな女中さん』で描かれているのは、翻訳家で女あるじの蓮見令子と、彼女のもとで働く少女・はなの、ほんわかとした日常だ。本作では、昭和初期の生活のリアルな描写が見どころのひとつとなっている。

 例えば、瓦斯コンロ(ガスコンロ)の当時の使い方。七輪しか使ったことがないはなに、令子が丁寧に教えるシーンがある。

うちのちいさな女中さん
©長田佳奈/コアミックス

うちのちいさな女中さん
©長田佳奈/コアミックス

 火の後始末が不要なところに驚くはなの表情が可愛らしい。また、夜遅くまで仕事をしている令子にお茶をすぐに出すことができ、はなも気に入ったようだ。

うちのちいさな女中さん
©長田佳奈/コアミックス

 着物を分解して新しく仕立て直すシーンも圧巻だ。丁寧な説明のあと、黙々とはなが作業を進める。和服の洗濯方法のひとつである「洗張り」が美しい。

うちのちいさな女中さん
©長田佳奈/コアミックス

 

 コミックスでは、各話の最後で「昭和豆コラム」と題して当時の文化や生活が解説されている。

 丁寧な暮らしぶりに心が癒やされる。ただ、本作の見どころはもうひとつあると考える。それが女あるじとはなの関係性だ。

令子さんとはなちゃんのシスターフッド

 最近注目されている「シスターフッド」という言葉は、女性同士の連帯や絆のことを指す。本作でも、このシスターフッドの関係性が見られる。

 最初は、はなの真面目さもありお互いにぎこちないコミュニケーションであったが、自然と距離を縮めていく。

 コミックス第1巻の最後では、はなの真面目さを可愛らしく思う令子の様子が描かれている。

うちのちいさな女中さん
©長田佳奈/コアミックス

うちのちいさな女中さん
©長田佳奈/コアミックス

 今後描かれるだろう昭和の文化、そして二人の関係性がどのように変化していくのかが楽しみである。

異国を舞台に、女あるじとメイドを描いた作品

シャーリー
『シャーリー』(森薫/KADOKAWA)

 シスターフッドを感じさせてくれる作品は他にもある。女あるじとメイドの漫画の金字塔である森薫『シャーリー』(KADOKAWA)は外せないだろう。

―あらすじー
 カフェーを営む28歳のベネット・クランリーが住み込みメイドを募集すると、13歳のシャーリー・メディスンと名乗る少女が応募してきた。その若さに当初困惑していたベネットだが、シャーリーを雇うことに。シャーリーのメイド生活を描いた珠玉の作品。

 この作品でもやはり、文化や生活が丁寧に描かれる。そして、ベネットとシャーリーのシスターフッドな関係性にも注目。

 例えば、叔母に望まない結婚を勧められたベネット。叔母からのお小言に黙って耐えていたベネットだが、それを聞いていたシャーリーがベネットを侮辱する言葉に怒って反論するシーンがある。その時は、その行為をベネットにたしなめられたシャーリーだったが、その夜にベネットから「ありがとう」と感謝され、安堵で涙を流す。お互いを理解し、思いやる二人の関係性が素敵だ。

シャドーハウス
『シャドーハウス』(ソウマトウ/集英社)

 また、最近テレビアニメ化もしたソウマトウ『シャドーハウス』(集英社)も、女あるじとメイドの関係性が魅力的な一作だ。

―あらすじー
 貴族のまねごとをしている顔のない「シャドー一族」と、彼らに仕え、顔の役割を担う「生き人形」。シャドー一族の娘のひとりであるケイト・シャドーとその生き人形・エミリコの日常が描かれる。ほのぼのとした雰囲気で始まる作品であるが、徐々に不穏な雰囲気に。ケイトとエミリコがシャドー一族と生き人形の秘密を暴いていく物語だ。

 絵本のような可愛らしい絵柄と、ミステリアスな雰囲気が魅力的な本作。最初は、顔の見えないケイトとどのように接したらいいか戸惑うエミリコだったが、徐々に打ち解けていく。次第にエミリコに心を許していくケイトが可愛らしい。そして、ふたりが協力しながらシャドー家に立ち向かっていく様子は、上で紹介した2作にはないシスターフッドな関係性だ。

 暮らしや関係性など、視点を変えて作品を楽しんでみてはいかがだろうか。

文=村治けい

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