結局、習いごとは何をさせるのが正解? 5,000組を超える親子を見てきた「中学受験のプロ」に聞いてみた

暮らし

2019/6/7

『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(小川大介/KADOKAWA)

「わが子にどんな習いごとをさせるか」は、幼児期~小学校中学年くらいまでの子を持つ親たちの大きな関心事です。インターネットや雑誌の子育て情報を見れば、「英語は小さいうちから」「これからの時代はプログラミング」「体力づくりのためにスイミングを」などさまざまな情報があふれ、「うちの子には何をさせるべきだろうか」「うちは何もしていないけど、大丈夫…?」と、不安やあせりを感じる子育て世代も少なくありません。

 結局、習いごとの「正解」は何なのか、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)の著者である教育専門家の小川大介氏が、この問題について語っています。

スイミングや英語などの「ことがらそのもの」に価値があるわけではない

 小川氏は中学受験専門の個別指導塾を運営し、灘や東大寺、開成、筑駒といった難関中学に教え子を多数合格させてきた「中学受験のプロ」。個別指導塾で5,000組を超える親子と面談を重ね、家庭での育ち方について聞き取ってきた経験から、幼児期からの子どもの能力の伸ばし方についても造詣が深く、メディアを通じ子育て情報を広く発信しています。

 たくさんの子どもたちを見てきた小川氏は「万人に当てはまる『正解』はありません」と結論づけます。

 親はスイミングやピアノ、英語など「ことがらそのもの」に価値があると思いがちですが、いくら教育に良いものでも、これからの時代に必須だと言われていても、わが子が興味を示さず惰性で取り組んでいたら、得るものは多くありません。

 価値があるのは「習いごとで身につく能力」よりも「子どもが夢中になる体験」です。インターネットや雑誌で見た「教育によさそうな習いごと」を与えるのではなく、子どもが何に興味を持ち、どんなことに夢中になるのかをよく観察して、「わが子に合った習いごと」をさせるのが「正解」なのです。

「ボーッとしている時間」に習ったことが身につく

 さらに小川氏は、習いごとは「1点豪華主義」がおすすめだと言います。

 なぜなら、子どもは体験したことを自分のものにするまでに時間がかかるから。習いごとの時間だけでは、教わったことが身につかないのです。

 子どもは、リビングでゴロゴロしながら「今日の英語のレッスンで教えてもらった歌は面白かったな」と思い返したり、ぼんやりとテレビを見ながら「あっ、この泳ぎ方、今日習った!」と発見したりしながら、体験したことを身につけていきます。

 親から見ると「ボーッとしている状態」にしか見えないのですが、これが子どもなりの「学習」の仕方です。

 そのため、1日のうちに習いごとをいくつも掛け持ちさせたり、日替わりでさまざまな習いごとに通わせたりすると、頭の中がぐちゃぐちゃのまま次の予定に向かうことになります。忙しすぎると、習ったことを思い出しながらボーッとする時間がとれず、教わったことが身につかないのです。

 ボーッとしながら自由に考えを巡らすことのできる時間は、子どもにとってとても大切。子どもの時間の中にフリータイムが多ければ多いほどいいのです。習いごとは厳密に1つだけに絞る必要はありませんが、1つか2つ、本人の気持ちが乗るものだけにして、フリータイムをきちんと確保したほうが、得るものが大きいのです。

「習いごとをしない」ことにもメリットはある

 このような話をすると「うちは何もさせていない」とあせる親御さんもいるかもしれませんが、習いごとをしないことにもメリットはあります。親子が一緒に過ごす時間が増えるというメリットです。

 習いごとをしていると、最低でも週に2時間程度はとられてしまいますが、習いごとをしていなければ、その時間に一緒にテレビを見たり、おやつを食べたりできます。家庭で親子がのんびり過ごすのも、子どもにとっては十分に実りある時間です。

 実際、親が思う以上に、子どもは家の中で刺激を受けています。料理をしているときにフライパンで野菜を炒めると、ジューッと音がして、だんだん野菜の水分が抜けて小さくなっていきます。その様子を子どもに見せれば、いずれ物質の三態変化(固体・液体・気体)を習ったときに「あ、あの野菜だ!」とつながります。これだけでも、1回5,000円の実験教室と同じくらいの経験を得られるのです。ですから、習いごとをさせていないことを過度に心配する必要はありません。

 本書では、習いごとだけでなく「子どもの積極性を伸ばす方法」や「学ぶ意欲を育てる方法」、さらには「公立と私立、学校選びの基準」など、子育てで気になるトピックを多数取り上げています。