ラノベもしのぐ勢い!? 近頃の官能小説のタイトルがすごい

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/25

 「近頃の官能小説のタイトルがすごいらしい」とネットで話題になっている。その中心になった本が、『もし、ドラッガーを読んでも勝てないと悟った女子マネージャーが肉体を駆使したら…』(千匹屋某:著、ミヤスリサ、そらもとかん:イラスト/オークス)という官能もの。ベストセラーにもなった『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海/ダイヤモンド社)のパロディータイトルなのだが、こんなもので驚いているようではまだまだ甘い。

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 そう、最近の官能小説は、ライトノベルばりに萌え化が進んでいて、そのタイトルもすごいことになっているのである。

 たとえば、官能小説の老舗・フランス書院の「美少女文庫」レーベルはタイトルも驚くものが多い。『黒猫荘のペットな妹』(遠野 渚:著、みさくらなんこつ:イラスト/フランス書院)という作品があるが、『さくら荘のペットな彼女』(鴨志田一:著、溝口ケージ:イラスト/アスキーメディアワークス)のパロディーだろうか。また、『シュラバババ!! 生徒会長VS幼なじみ』(山口 陽:著、有末つかさ:イラスト/フランス書院)がインスパイアされたのは、『デュラララ!!』(成田良悟:著、ヤスダスズヒト:イラスト/アスキーメディアワークス)か、はたまた『しゅらばら!』(岸 杯也:著、プリンプリン:イラスト/メディアファクトリー)か……。 

 先に紹介した『もし、ドラッガーを読んでも勝てないと悟った女子マネージャーが肉体を駆使したら…』の「ヴァージン☆文庫」は、秀逸なタイトルの官能小説ばかりである。『魔法少女が友だちを助けるために、レトロゲームの怪人にヤられちゃう件』(綿貫 梓:著、ゆんちゃ:イラスト/オークス)なんて魔法少女とレトロゲームという一見、まったく関係なさそうなものをミックスさせつつネットスラングを織り交ぜ、なおかつエロ要素を残している。また、『妹と幼なじみと委員長が兄を巡って触手でキュッ!』(綿貫 梓:著、emily:イラスト/オークス)というタイトルの本もある。触手でキュッ! ……前半のハーレムっぷりを叩き壊すほど、異彩を放つ言葉だ。

 また、すごいタイトルの官能小説といえば「あとみっく文庫」も外せない。『正義のヒロインと悪の女幹部が生中継でポロリするようです』(酒井 仁:著、SAIPACo.:イラスト/キルタイムコミュニケーション)は、テレビで「ポロリ」を見てムラムラしていた世代にはダイレクトに響くタイトルだ。さらに『兄よりすぐれた妹などこの世に存在してはいけない』(山口昇一:著、天海雪及:イラスト/キルタイムコミュニケーション)というタイトルは、『北斗の拳』(原 哲夫、武論尊:著/集英社)に登場する主人公ケンシロウの兄、ジャギの名台詞「兄よりすぐれた弟など存在しねえ!!」を彷彿とさせる。マンガマニアにはたまらないのではないだろうか。ほかにも、『魔法少女ならぬ魔法中年が世界の平和を守る事になったようです』(酒井 仁:著、にの子:イラスト/キルタイムコミュニケーション)や『勇者よ、宿屋の店主になってしまうとは情けない』(倉田シンジ:著、へるるん:イラスト/キルタイムコミュニケーション)といった秀逸タイトルがたくさん。魔法中年? 勇者が宿屋の店主に……? エロよりも中身が気になって仕方がなくなる。

 ここまですごいタイトルばかりだとは、官能小説恐るべし。しかし、こういう長すぎるタイトルはまさに今ラノベで流行中だし、そのうえ萌え系イラストまでそえられているのである。こうなっては、もはや従来の官能小説の枠には収まらないだろう。そう、もうこれらにはアダルトノベル、略してアノベという名前をつけてもいいのではないだろうか。

 いつか、そう遠くない未来で、アノベがラノベの勢いを上回る日がくる、のかもしれない。