リーゼント頭が主人公!? 昭和の香り漂うヤンキーBLの魅力

BL

更新日:2012/11/26

  10月26日に発売されたBLコミック『夜明けのブルース』(羽生山へび子/白泉社)は、タイトルと表紙を見てもわかるようにどこか懐かしい昭和の香りが漂っている。この作品の主人公はリーゼント頭のヤンキー・カッチー。彼にカツアゲされかけたスナックのマスターはなんとなくカッチーのことを気に入り、そのままバイトしないかと誘うのだ。そしてヤンキー萌えの開拓者とも呼ばれる作者の羽生山へび子は前作『僕の先輩』(大洋図書)でもカッチーとはまた違ったヤンキーを描いている。こちらは学校中から恐れられるほどケンカを繰り返していた先輩こと二宮三郎が、不良に絡まれていたところを助けたことで主人公の飴宮はじめに付きまとわれることに……。今どきリーゼントのヤンキーなんてあまり見ることもないだろうが、このヤンキーたちがなんとも魅力的なのだ。

 まず、1度決めたことは必ず最後まで貫き通すところ。カッチーは14歳の時の初恋の相手であり、初めての恋人だった男を殴ってしまった。そしてその半年後に相手の今彼からフルボッコにされたことで目が覚め、「今度誰かを好きになったらそいつを傷つける奴から俺も全力で守ろう」と心に誓って生きていたのだ。一生懸命相手を愛そうとしても、二股をかけられてフラれたりもする。それでも懲りずにまた愛そうとする純粋さも彼の魅力なのかもしれない。

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 また、二宮は両親に二宮のことを恋人だと紹介できなかったことを悔やみ、申し訳なく思っているはじめに対し「仮免とったらおまえんち行って俺が言う」と約束する。そしてその言葉通り、仮免取得後にはじめの家に行った際、玄関先で土下座して「はじめさんを俺にください」と言うのだ。彼女の家に挨拶に行くのでさえも緊張するだろうに、ましてや男の子の家に「息子さんをください」と言えるのはやっぱりすごい。

 そして、守りたいものがあるときに発揮する強さも彼らの魅力だろう。マスターが元彼と言い争いになって相手が暴れ出したときには、「なにしてくれとんじゃぁぁぁ」と掃除機を振り回して襲いかかる。しかし、「恋人に手ぇ上げるなんざ下衆の極み」と威勢良く相手を追い返したあとで「お…俺…よけいなことしたかな…」と急にオロオロしだす。好きな人のことを思うとついつい先に手が出てしまうのは彼らの特性なのかもしれないが、体が勝手に反応してしまうほど相手に思われているのかと思うとなんだか照れくさくなる。それに、無理して笑うマスターに対しては「あんたを傷つけるやつみんなぶん殴ってやっからさ」と言って強く抱きしめるのだ。それでも「本気で惚れてるだけじゃあダメなのか?」と悩み、「誰かを殴ってでも笑ってほしかっただけ」と願うようなまっすぐで不器用なカッチーは誰よりも男らしくてかっこいい。

 そして、「昔のことをなかったことにはさせない」と、悪さをしていた時代の知り合いに呼び出された二宮は、「てめーなんぞ殴る価値もねぇ」と言ってボコボコにされてしまうのだ。「てめーみてぇなのがフツーのヤツなみに幸せになれるとでも思ってんのか!?」と言われるが、まっとうな仕事について美味しいご飯を食べ、人に感謝されたり笑い合ったりすることの喜びを知った二宮が、幸せになれないはずがない。

 そんな優しさと力強さを併せ持った彼らこそ、間違いなく最強だろう。あなたもそんな昔ながらのヤンキーに萌えてみては?