もはや国民歌!? ラノベ界でも人気のアニソンが愛される理由

マンガ

更新日:2012/11/29

 音楽CD不況が続くなか、数少ない元気なジャンルは、言うまでもなくAKB、そしてもうひとつがアニソンといわれる。なかにはアニソンをバカにする人もいるかもしれないが、小さい頃から慣れ親しみ、カラオケに行けばアニソンしばり、とオタクにとってアニソンは切っても切れない関係だ。最近はアニソンを題材にしたラノベまで登場しているのである。

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 9月に発売された『アニソンの神様』(大泉 貴:著、のん:イラスト/宝島社)は、アニソンが好きすぎて、日本でアニソンバンドを作るためにドイツから留学までしてしまった女子高生・エヴァ・ワグナーが主人公。そして、11月9日に発売された『五線譜なんて飾りですっ!』(一色銀河:著、wingheart :イラスト/アスキー・メディアワークス)にも、アニソンしか演奏しないトランペットの天才・秋築律夢が登場。どちらもアニソンに魅了された女の子が主人公で、そんな彼女たちに周りのみんなも引っ張られていくのだ。彼女たちがそこまでアニソンにこだわる理由はなんなのか? アニソンの魅力を探ってみよう。

 まず、アニソンの魅力といって最初に思い浮かべるのは、曲のイメージを膨らませやすいということ。アニソンはそのアニメのために作られたと言っても過言ではないため、曲とアニメのイメージはぴったりと重なる。そのアニソンを聞くだけで、どんなアニメなのか、どういった物語が広がっていくのか想像できるのだ。

 だから、『アニソンの神様』の主人公・エヴァのように、遠い海を越えたドイツでも惹きつけられる人がいたのだろう。彼女が幼い頃に日本語版で見たアニメは、言葉も内容も難しくてあまりよくわからなかった。でも「話の始まりを彩る高揚感あふれるメロディ」に心をときめかせ、「話の余韻を響かせるエンディング」に心打たれたのだ。

 また、『五線譜なんて飾りですっ!』の律夢の演奏には人の心を揺さぶる不思議な力があるのに、アニソン以外はまともに演奏することもできない。クラシックになるとどんなに原曲をエンドレスで聞かせても、歌の内容を説明してもまったくイメージをふくらませることができなかった。しかし、アニソンならニコニコ動画にあるような動画でもイメージを膨らませることができるのだ。やはり、それだけアニメを意識して作られたものだからこそイメージも膨らませやすいのだろう。

 また、アニソンという枠だけでは語れないバリエーションの多さも魅力のひとつだろう。アニソンの中には、ジャズっぽいものやラップを取り入れたもの、ロック調のものから演歌のようなものまでさまざまなものがある。その多様性のおかげで、アニソンに興味をもったキャラもいるのだ。『アニソンの神様』に登場する入谷弦人は、すごくギターが上手いのに「やりたい音楽なんてなにもない」と言っていた。しかし、どうしても彼をバンドメンバーにしたいエヴァは、彼に『らき☆すた』のOP曲『もってけ! セーラーふく』を聞かせるのだ。この曲は、「どのジャンルにも当てはまらない、いままでに誰も聴いたことのない曲」というオーダーから生み出されたそう。アニソンは、なんでもありの自由なジャンル。だからこそ、アニソンの中だったら弦人のやりたい音楽もきっと見つけられるはずだとエヴァに言われ、弦人はアニソンバンドに入ることを決めるのだ。

 そしてもうひとつは、やはり演奏のしやすさ。吹奏楽部が舞台の『五線譜なんて飾りですっ!』でも、律夢らが入学して最初に演奏したのは『ルパン三世』のテーマだった。実際の吹奏楽部で演奏される曲にもジブリシリーズなどのおなじみのアニソンがたくさんあるように、みんなが慣れ親しんで一度は耳にしたことがあるものなら耳コピもしやすい。そして、観客も一緒になって楽しめるのもいろんな場所で演奏され、親しまれてきた所以だろう。

 みなさんも、アニソンを聞いただけで「あ、この曲あのアニメの主題歌だ」とピンときたり、そのアニメを思い出して懐かしくなることもあるのでは? 人々の記憶と心にいつまでも残り続けるアニソンは、もはや国民歌なのかもしれない。