『ONE PIECE』サンジのレシピ本も登場! 「マンガ飯」が大旋風

食・料理

2012/11/30

 マンガに登場する食べ物(マンガ飯)は、実にうまそうだ。食べ物が重要な料理マンガに登場する渾身のメイン料理なら言うに及ばず、ストーリーには直接関係しない料理あったとしても、なぜかそれは独特な存在感を放ち、読者はヨダレを流しながら空腹をこらえることになる。あしたのジョー』(ちばてつや:著、高森朝雄:原著/講談社)で減量明けのジョーが食べた小さなステーキ、『ドラえもん』(藤子・F・不二雄/小学館)の映画『のび太の日本誕生』で登場した大根を割ると出てくる暖かいスープなどなど。しかし、これらの食べ物は、しょせんはフィクションの世界。食べられるのは作中に登場する人物だけなのだ……。と、落胆している人に朗報である。このところ、マンガ飯の作り方を紹介するレシピ本が続々登場しているのだ。

 その筆頭は、やはり『マンガ食堂』(リトル・モア/梅本ゆうこ)。先にあげたジョーのステーキやドラえもんのスープをはじめ、『深夜食堂』(安倍夜郎/小学館)の牛すじ大根玉子入り、『ブラック・ジャック』(手塚治虫/講談社)でピノコが作った巨大な玉子焼きなど、まあどれもおいしそうに、そして本物そっくりに再現している。「こんなのムリっしょ」と思うようなものも見事に実物と同じ姿に作り上げる著者の熱意には感服するばかりだ。

 なかには『まんが道』に登場するチューダーも。これなんて、子供の頃に作品を読んだ時は、何よりもおいしい飲み物のように思えたものである。実際に飲んでみれば、ただの焼酎のサイダー割なので、想像の域を出る味ではない。しかし、作品の世界観に浸りながら味わえば、かつてイメージした通りの、世界一の飲み物になる……のだと思う(飲んでないからわかりません。すみません)。
 
 現在テレビドラマも好評放映中の『花のズボラ飯』も、マンガ飯実践を志すなら恰好の作品。実際に『花のズボラ飯 うんま~いレシピ―なぜ、ズボラ料理なのに泣くほどうまいのか』(久住昌之:監修、水沢悦子:イラスト/主婦の友社)というレシピ本が出版されている。鍋はだにこびりついたカレーを使ったドライカレーや、コンビニのおにぎりを使ったお茶漬けなど、同作品の定番料理がしっかりと紹介されている。まあ、意外と手間がかかるものが多いので「全然ズボラじゃないじゃん」というツッコミもしたくなるところであるが、それはご愛嬌(実際に同書でもまえがきでエクスキューズがある)。

 と、ここまで紹介して来たのは2冊のマンガ飯レシピ本。どれも料理素人にも使えるほどやさしく、かつ作品の世界観を崩さない素晴らしい2冊だ。が、惜しむらくは、料理マンガがベースになっているということ。『花のズボラ飯』はもちろん、『マンガ食堂』だって大半のメニューが料理マンガからの引用である。それはそれで、本当においしいものが出てくると期待できるので大変結構なのだが、もっとずっぽり作品の世界に浸かっているならば、本当にただの小道具レベルで登場するけれどなくてはならない料理を口にしてみたくなるのではなかろうか。

 というわけで、『ONE PIECE PIRATE RECIPES 海の一流料理人サンジの満腹ごはん』(SANJI/集英社)。もうおわかりでしょうが、あの名作『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)で麦わらの一味が誇る名コック・サンジによる海賊飯の作り方を教えてくれる1冊である。水水肉蒸しやハチ鳥の丸焼など、作中にしか存在しないフィクションの食材を使った料理だってバッチリレシピ化されているところは、ファンにはたまらないことだろう。

 実は私は『ONE PIECE』を読んだことがないのだが、聞くところによるとこの作品では料理がメインになることはほとんどないらしい(ですよね?)。にもかかわらず、口は悪いが腕は確かで女に弱いサンジの作る料理に多くの読者が興味津津なのだとか(ですよね?)。ルフィたちが毎日海の上で食べているサンジの料理をあなたも作って食べてみれば、きっと海賊王になれるはず!?

 ちなみに、個人的に同書を読んで嬉しかったのは、古くは『はじめ人間ギャートルズ』の頃(1970年代)から受け継がれてきたマンガ飯の最高峰「骨付き肉」もバッチリと再現されていたことだ。

 今年に入ってやたらとマンガ飯のレシピ本が出版されているので、「きっとブームなんでしょ」と思う人もいるかもしれないが、実はそれは間違い。ギャートルズ時代から、マンガ読者は骨付き肉に憧れて生きてきた。『ドラえもん』を読んでどら焼き好きになった人も数知れず。だから、マンガ飯ブームは今に始まったことではない。実際に再現にチャレンジしてきた人もたくさんいるはずだ。それがこれらの本を手にとって、レシピどおりに調理するだけで、憧れのマンガ飯が目の前に。いやいや、これってマンガファンにとって最高の夢が叶う瞬間……といったら大げさですかね?

文=鼠入昌史(Office Ti+)