いまだ“エヴァ初心者”に贈る、オススメのエヴァ解説書

マンガ

更新日:2012/11/30

11月17日に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』。公開初日から劇場はどこも大勢のファンで満員となり、たった10日間でその興行収入は30億円を突破する見込みだとか。そういえば友人が、「公開初日に3回しか観られなかった…」と残念そうに呟いていた。意味が解らない。同じ映画を公開初日に3回“も”観たのだ。言葉が出ないほどのハマりっぷりである。

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 もはや、日本中が熱狂していると言っても過言ではないエヴァシリーズ。しかし、その一方でいまだエヴァの魅力を理解できず、なかば置いてけぼり感を味わっている人もいるのではないだろうか。かくいう僕も、恥ずかしながら“エヴァ初心者”のひとり。さて、これを機に、エヴァについて少し勉強してみるとしよう。

 エヴァの原点でもあるTV版『新世紀エヴァンゲリオン』の舞台は、西暦2015年の日本。15年前に発生した大災害「セカンドインパクト」の影響で、地球の人口は半数まで減少し、さらに「使徒」と呼ばれる正体不明の脅威にさらされていた。その「使徒」に立ち向かうため、国連直属の特務機関ネルフは「エヴァンゲリオン」という汎用人型決戦兵器開発するが、搭乗パイロットに選ばれたのは、わずか14歳の少年少女だった――。というのが、おおまかなストーリー。14歳の少年少女が戦う姿というと、「万能なヒーロー像」を思い浮かべてしまうが、本作で描かれているのは、みんな悩みや葛藤を抱えた人物たち。僕らと同じ生身の人間がそこにいるのだ。彼らは戦いで傷つき、自身の存在意義を問い、暗い内面と向き合う。その姿に誰もが共感を覚え、これまでに観たことがないアニメとして、広く知られるようになったのだ。
 
 ここまでかいつまんで説明したが、想像以上にエヴァの世界は深く、それを理解するのは容易ではない。単純に時間もかかることだろう。そこで、初心者向けのエヴァ本をいくつか紹介しよう。

 まずは、漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』(貞本義行/角川書店)。TVシリーズを原作とするコミカライズ版で、基本的にアニメを踏襲したストーリーが展開されている。エヴァ初号機のパイロットとしてネルフに呼び寄せられたシンジの葛藤や、零号機のパイロットである綾波レイの抱える秘密、弐号機を操縦する惣流・アスカ・ラングレーの心の闇など、戦いを通じてそれらが明らかにされていくのだ。最新刊となる第13巻では、アスカを救うためにエヴァに乗り込み戦うシンジの姿が描かれている。しかし、そんなシンジたちをよそに、ネルフが秘密裏に進めていた「人類補完計画」が始動。エヴァ初号機はシンジもろとも、計画始動に必要な「生命の樹」の依り代にされてしまう――。周囲に振り回され、自身すらも見失いそうになるシンジの痛々しい姿は、読む者の心に訴えかけてくるものがあるのでは。まずは、こちらでエヴァの世界に足を踏み入れてみてほしい。
 
 また、さらなる興味が沸いてきた人は『エ/ヱヴァ考』(山川賢一/平凡社)を。本書では、TV版、1997年に公開された「旧劇場版」、そして2007年から公開されている「新劇場版」を比較し、その世界観に深くメスを入れている。シンジと父である碇ゲンドウとの対立構造やエヴァに搭乗する子どもたちの内面など、ただアニメを観ているだけでは読み取れないほどの深い考察が重ねられており、エヴァの世界を理解する助けとなるだろう。これを読めば、エヴァが単なるアニメの域を逸脱した特異な作品であることが分かるかもしれない。

 最後の総仕上げとして読みたいのが、『ヱヴァンゲリヲン都市伝説』(エヴァ分析特捜部/ダイアプレス)。エヴァシリーズの研究を続ける非公式組織「エヴァ分析特捜部」による独自の考察本である。のっけから「新劇場版と旧シリーズとはパラレルワールドの関係にあるのではなく、同一線上に存在するループ物語である」と、ファンの間でも議論が幾度も交わされている内容について論じており、思わず引き込まれてしまう内容だ。『新劇場版:Q』の公開に合わせて出版されているため、新旧の相違点からエヴァの世界に切り込んでいる部分が多いが、そもそもの謎である「使徒とは何者なのか」といった、初心者が抱くであろう疑問にも答えを用意してくれている。

 これらの書籍は、僕らのような初心者がエヴァデビューするのを助けてくれるはず。今後、ますますヒートアップするであろうエヴァブームに取り残されないよう、さっそく手に取ってみたいところだ。

文=磯田大介(OfficeTi+)