建物、地形、事件…“東京の散歩本”が続々登場

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更新日:2012/12/3

 今、「東京散歩」が注目を集めている。といっても、その対象の多くは、新たなスポットやニュース性のある施設ではない。古くからあり歴史を感じさせる建築や、味わいのある商店街やお店が並ぶ場所、東京の成り立ちを垣間見ることのできる地理を巡るといった「再発見」をキーワードにしたもの。つまり、今までとは違った視点でセレクトされたスポットがまとめられているのだ。

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 11月13日に発売された、『東京建築 みる・あるく・かたる』(倉方俊輔、甲斐みのり:著、死後:イラスト、吉次史成:写真/京阪神エルマガジン社)は、街角にあるちょっとレトロな建物から、博物館や駅舎、商業ビルなどを巡るという東京散歩を紹介。エリアごとにテーマを設け、建築を解説しながら時代背景や土地の成り立ちなどにも言及した、親しみやすいお散歩ガイド本だ。

 歴史に残るような名建築を訪れるための散歩本はこれまでもあった。しかし本書では、商店街の喫茶店や食堂といった、著名建築家が手がけた作品以外も守備範囲。無名でも「味がある」「ユニーク」「なぜか気になる」建築など、今までとは違った価値観や趣向が見てとれる。東京に親しみのある人であれば「普段よく目にするけれど、そんなエピソードが!」と驚く建築もあるはずだ。

 一方、地形という面から東京散歩を楽しむことを主題にしたのが『東京凸凹地形案内 5mメッシュ・デジタル標高地形図で歩く』(今尾恵介/平凡社)。テレビ朝日の『タモリ倶楽部』への出演などでも知られる著者が紹介するのは、地形図をベースに東京の成り立ちを読み解くこと。開発や埋め立てなどで大きく変遷を遂げて来た、東京というある種特別な場所の姿が浮かび上がってくる。

 テーマとなるのは、建築や地形など目に見えるものではない。『大江戸「事件」歴史散歩』(大石 学/中経出版)は、東京の基礎が形作られたといえる江戸時代に起こった「事件」や「出来事」を時系列でピックアップ。当時の絵図を使い詳しく内容を解説したうえで、「現場」を写真と地図で解説。日常生活のなかに「江戸」を見いだす、時間を越えた旅が体験可能だ。

 どうしてこれほどまで、東京を紹介する本が増えたのか。ひとつ考えられるのは、日本の魅力を再評価するような観光スタイルや『ブラタモリ』(NHK)といった同系統のテレビ番組が人気。その流れを受け、“再発見・東京散歩本”が集めているのではないだろうか。

 東京の隠れた魅力を知ると、今まで何気なく眺めていた風景もきっと見方が変わってくるはず。しかも、これらの一連の散歩本は、小ネタ集としても活用できる。同僚や友人と近くを通りすがったとき、「この場所は◯◯なんだよね」といった感じで、会話を盛り上げてくれるだろう。

 知っているようで知らない東京の奥深さ。散歩本ともに歩いて実感してみてはいかが?